PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

SONY RX100 / SHOOTING REPORT

1インチのセンサーを搭載したDSC-RX100。画質とコンパクトさをトレードオフにせず、納得の画を叩き出してくれる"最適解"としてパッケージングしてきたのではないでしょうか。古くはAPS-Cサイズに近いセンサーを搭載したレンズ固定式のCybershot R1なんて機種がラインアップされていました。大きなセンサーにレンズを最適化・固定化することで高画質を追求。当時かなり説得力のある画を叩きだしていました。そんなSONYがリリースするカメラですから、APS-Cサイズではなく1インチというアプローチに興味津々。さらに説明不要のレンズの雄であるカール・ツァイスを搭載し、他のコンパクトデジタルとは一線を画す意欲的に(?)無駄を廃したシンプルな意匠。さて、どんな画をみせてくれるのか、ごゆっくり作例をご覧ください。

( Photography & Text : K )

色の盛りと緻密な描写。織りなす重厚感に魅せられる

1インチのCMOSセンサーは、一般的なコンパクトデジタルカメラ比で約3倍〜4倍に相当します。「コンパクトで高画質」といえば、他機種からのインスピレーションで、APS-Cサイズのセンサーを思い浮かべる方が多いと思います。1インチはAPS-Cサイズの約3割程度なわけで、正直なところ「どうなの??」と思ってしまいますよね。しかし試写してみると「う〜ん」と唸ってしまいました。なんというか、まるで"写真"のように精巧かつ綿密に描き込まれた油絵のような印象。変な表現ですが、そんな重厚感です。大変繊細かつシャープな線、厚く盛られた色。レンズ固定式なので、画を構成するレンズやセンサーの能力を切り出して推し量ることはできないのですが、つくづくデジタルカメラとはパッケージングだなあと、あらためて感じさせられます。NEXで見た画のクリアさ、そしてツァイスらしい重厚感のある画を間違いなく感じるのです。これはなかなか撮り甲斐のある、そして骨のあるカメラです。

ランプの傘、拡げられた本、テーブルクロス。手触りが思い浮かぶ素晴らしい再現。露出の"出た目"が2EVぐらいオーバー目だったので、マイナス2段で撮影。かなり切り詰めた露出であるにも関わらず、シャドーに沈むソファそして床が見えてくるような印象です。そうかそうか、ポジフィルムなんかはシャドーがドンと落ちるけれど、あれで違和感が無いのは「見えないけれど”見える”」そんなリアリティからかと、このカメラにあらためて気づかされました。

窓から差し込む、柔らかくおぼつかない光の中で佇む机。その光沢、ガラスの質感、そして立体感と、液晶モニター上でも感心していましたが、PCのモニターでさらに感心。サイズとしては本当に「コンパクトデジタルカメラ」ですから、なんとも痛快なカメラです。

こんな画はデジタルカメラで撮るのはなかなか難しいと個人的には感じています。どちらかというとフイルムにマッチする画で、デジタルだと少し眠い画になってしまうのですね。やってやれないことは無いのですが、現場でナーバスに後処理行程まで考えて検討する必要があります。何カットか露出をバラして撮影しましたが、その中の1カットがハマってくれました。決してダイナミックレンジが広大である、、というわけではなさそうです。どちらかといえば、大変佳くチューニングされた印象です。これはNEXシリーズでも感じたことで、SONYはこのあたりの作り込みが凄く上手い!といった印象です。


解像力の高さ、何より緻密さに目を見張る

なんと細かな線を描くのでしょうか。しかも鋭く硬い刃先で刻み込んだような力強さ。もちろん等倍で見たときにローパスレス機の画を見るようなキレでは無いのですが(それでも十分なキレですが)、画を縮小したときの塩梅の佳さは一体どういうことだろう??と不思議です。たとえれば、おろしたてのペン先だと思うのです。ペンも使い込んでくると線の輪郭が曖昧になってきます。おろしたては、ペン先の細い万年筆とまではいきませんが、それなりにエッジの立った線だと思うのです。ローパスレス機のような等倍でのわかりやすいシャープさとは違いますが、曖昧さの少ないエッジ。これがご覧の画を実現してくれるのだと思います。

目が痛い…しかし心地よいシャープさ。何と表現してよいのかわかりませんが、見切りのよい画です。わかんないですよね、、線がスパっと切れて、その線とそれ以外が明確に分離する、そんなシャープさです。結果として近くが近くに、そして遠くが遠くに感じられます。つまり立体感に繋がるのだと感じます。

解像力、そしてそのキレは、こんな画でも威力を発揮します。センサーサイズはそんなに広大なサイズではなく、テレ端の開放値も決して明るいわけではありません。したがってボケの大きさは自ずと決まってしまいます。ボケとの対比で立体感を感じるのではなく、これは解像力とそのキレで感じるのです。路面電車の中での撮影ですが、レバーを握るその手・手袋、そしてグリップの質感、それらが本当に佳く再現されています。

前述のとおり、テレ端・開放でも大きなボケは期待できません。にも関わらず、画のなかできちんと遠近を感じられます。全てが画一的に写ってしまいそうな画ですが、さすがさすがと感心しました。


高画質を「超コンパクト化」 ポケットにツァイスの標準ズームを

古くからのカメラファン(筆者も含めて)は、「ツァイスなんて名前だけ載ってるんじゃないの?」なんて口走りそうなぐらい、このブランドネームには説得力のあるものですよね。しかし、本当にポケットに"ツァイスのレンズが" ポケットに入ってしまいます。これをSONYさんが読まれたら怒られるかなあ、、しかしツァイスのパブリックイメージはそんなところでしょう。付け足すわけでは毛頭ありませんが、レンズだけでは画は出てこないわけで、レンズそしてセンサー&映像エンジン、何より明確にどんな画を叩き出すのか、その設計思想が無ければ、佳い画にはならないと思うのです。いつでもどこでも、ポケットに妥協の無い画を叩き出すカメラを。こんな有り難いカメラは無いかもしれませんね。使い勝手もまさにコンパクトデジタルといった印象で、このカメラより大きなセンサーを搭載する、いわゆるコンパクトで高画質なカメラより1枚上手な使い勝手という印象です。AFもキビキビ動いて精度も抜群、ワイド端に限りますがコンパクトデジタル並に寄ることもできます。「ちょっと佳いのが欲しいなあ」という方にうってつけのカメラだと思います。

「画を諦めて写真に行ったクチでして…」「写真は写真で凄いですよ」なんて会話を。ちょっと撮らせてくださいね、と撮影させて頂いたのですが、コンパクトデジタルの美点はシャッター音の小ささ。これが結構有り難いのです。

なんで池の中にお金を放り込むんですかね。毎度不思議です。このカメラ、アンダー気味に撮ると最高です。

どれどれ、濃厚に色が載るんだろうかと職業病的カット。思った通りでした。

結構寄れて助かります。コンパクトデジタルはこれが本当に便利です。面白いもので、一度これを体験してしまうと、カメラが小さいと寄れて当たり前と思うのですから、勝手なものです。

シャドーから浮き上がる画が佳くて。そんな画ばっかり現場で撮るもので、このページを作成するのが大変でした。しかし本当に佳いのです。手に入れられたら、ぜひ色々試してみてください。

手ブレ補正機構も実によく効く印象。かなり止まります。しかし、夜明けのショーウインドウはなかなかホラーです。

いかがでしたでしょうか。このカメラより大きなセンサーに比べると、若干ダイナミックレンジが狭い印象はありますが実用上問題無いでしょう。ボディの使い勝手は良好で、レンズ鏡胴の付け根にリングがあり、このリングに色々な機能を割り当てられます。このあたりも便利ですよね。撮影中は露出補正を割り当てていましたが、欲を言えばクリック感が欲しいかなあと思います。カメラの操作系を煮詰めるのは本当に難しいことで、どのカメラも「一生懸命考えられてるなあ」と感じることばかり。しかし、何のための操作で、そのためにどんな動作をさせるべきなのかが大事。リングに割り当てられることは便利ですが、たとえば露出補正でもリングを回すという行為にクリック感が伴えば、液晶画面で補正値を確認せずとも察しがつくわけです。散々ツァイスに対するパブリックイメージを並べておいてという話ですが、ここはたとえばリングに電気的(電磁的?)かつ能動的にクリック感を作るなんてことを、SONYだからこそやって欲しいですね。価格を考えれば無理なのは百も承知なのですが。「おおお…」と唸らされてきたSONY世代?の無い物ねだりでした。でも、無い物ねだりをしてしまうほどに、画に本気にさせられるカメラなのです。

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「ハイハイ」と言われそうなのですが、撮って書いて、結局自分も買うということが本当に、往々に。手は二つしか無いのですが。。。

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バッテリーは凄く佳く持つ印象ですが、備えあれば憂い無し。せっかくコンパクトなのですからチャージャーは家に置いて。

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