PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

Nikon D810 / SHOOTING REPORT

ニコンのデジタル一眼レフは、D600あたりから大きく変わってきたという印象があります。まず画にかなりガンマが当たるようになってきたこと。単にガンマを当てただけならシャドーは潰れてしまうのですが、ハイライトからシャドーまで階調の連なりもよいのです。結果としてポジフィルムのような見栄えのする画になったという印象です。その後登場したフラッグシップであるD4sでは、その変化に加えて圧倒的にヌケがよくなったと感じました。そのような流れの中で、D810の登場です。今回は完全にローパスレスとなり、ここ最近の変化もあわせてどのような進化を遂げたのかワクワクしながら持ち出しました。結論を申し上げると、モデルライフの関係もあるとは思いますが、ここ最近の同社のモデルチェンジで最もインパクトがありました。作例を交えてご紹介したいと思います。

( Photography & Text : K )

一枚目を覗き込んで、劇的な変化を感じる

まずボディを手にしてファインダーのクリアさに驚きました。数限りないほどデジタル一眼のファインダーを覗いてきましたが、最上級の部類に入るファインダーだと感じます。久しぶりにファインダーを覗いて感心しました。これはもう是非店頭でお手に持って確かめていただきたいのです。素晴らしいファインダーです。そして、空シャッターを切ってみると実に静か。いかにもフリクションを徹底的に低減させた精密さを感じさせます。最近のモデルチェンジの具合を鑑みればデキが悪いはずがない。これは期待ができそうだと撮影に出かけました。一枚目を本体液晶で見ると、もうあからさまに画が違うわけですね。前作と比べれば、次元の違うシャープさを感じさせます。しかし、なによりも色が、階調が、コントラストが、、、何もかもが変わってしまいました。まさに「劇的」という表現がピッタリ。D600登場の際のレポートも筆者が担当しましたが、その際に感じた画の進化がD810にも押し寄せてきたのです。ページ一番上のカットは、シャドーに沈みゆく像を、見たまま、あるがままに写るように露出を決定して撮影しました。光量も乏しく、画素数を考えれば手ブレを抑えるため、さすがに感度も二段プッシュせざるを得ません。開放から十分なシャープさを持つレンズですが、カメラ本体の解像力が無ければ像の輪郭を明瞭に描くことはできず、何だかよくわからない写りになってしまいます。なにより階調再現がプアだと難しいシーンでしょう。上のカットは画の締まりと階調の連なりを見たくて撮影してみました。黒は黒としてキチンと締まり、照らされた壁面の階調はなだらかに連なっています。筆者はD800ユーザでもあります。少しクセのあるカメラで、同じような画を作るには現場で現像処理まで含めた総合的なコントロールのもとで撮影を行う必要を感じますが、D810はJPG撮りっぱなしでOKといった印象です。

こちらは階調はもとより、画のキレを見たくて撮ってみました。手すりのシャープさは次元が上がったことをまざまざと感じさせられました。質感の再現も素晴らしいの一言です。カメラの出た目からマイナス3段半程度の露出補正、かなり切り詰めた露出です。また、S/N(シグナル/ノイズ)というよりも、ノイズのコントロール具合を見たくて、最低感度で十分撮影できましたが、あえてISO800です。階調が段々になったりモッサリせずに、これだけ艶を感じさせつつもヌケてくれればありがたいですね。

高感度側で紐の触感が再現できるかと撮影してみました。高密度なセンサーで、決してS/Nについて有利ではないと思います。そして塗りつぶせばよいというものでもなく、落としどころのむずかしさは想像に難くないのですが、いかがでしょうか。ISO800あたりのカットで…と思うかもしれません。このクラスのカメラには大口径レンズをマウントするケースも多いと思います。また手ブレ限界を見極めつつ、その場で選択可能なできる限り低い感度で撮影されることでしょう。さらには暗いところは暗く、明るいところは明るく、露出をコントロールされると思います。すると真っ暗なシーンや暗いところを明るく写すという特別な目的ならともかく、このあたりの感度での撮影が一番多くなるのではないでしょうか。あくまで個人的な意見ですが、特別な目的の撮影でない限りノイズはあって構いません。しかし、写したものの質感をリアルにキャプチャしてくれないと困ります。年々ノイズ処理は各社進化しているように感じますが、本機も大変練り込まれた印象です。

もう一段感度を上げて、ISO1600で撮影。このヌケとキレは、この程度の感度だと全く問題無いように感じます。しかし、ローパスレス独特のシャープさは像の分離も明瞭で、やっぱり気持ちいいですね。背景のノブの輪郭を出したかったので一段絞ってますが、それでもこの分離の良さです。

すっぽ抜けたのではなく、あえて窓枠にピントを置きました。シャープな画を結ぶカメラでないと、人物にピントを置くと思います。


波に立体感を与える解像力

妙な見出しかもしれませんが、波の紋様をシャープに捉えられても、立体感を与えるとなるとなかなか難しいものです。超高画素でありつつ1ピクセル単位のシャープさ、そして豊かな階調と、これらがセットで揃わないと厳しいでしょう。上のカットは波の立体感もさることながら、一皮も二皮も剝いたようなヌケの良さを感じますね。

200mmテレ端での撮影。さすがに一つ上のカットのように4-5mの距離ではありませんから、波に猛烈な立体感というわけではありません。それでも波の様子は十分に見てとれます。それにしてもシャープかつ子細に写り込んでいます。

岬の斜面をテレ端で。距離にして30m程度でしょうか。ほぼ岩の斜面に逞しく這う草。その葉一つ一つを見事に解像しています。カメラボディの持つ解像力も凄まじいものがありますが、レンズのほうがよく追いつくものだと感じ入ります。8X10(エイトバイテン)でもここまで写るかなあと感心しきり。ピントは画面左下、絞りはF8ですから、右上は被写界深度からは厳密には外れるでしょう。このサイズでもなんとなくその様子が見てとれますが、原寸で見ればハッキリと外れているのがわかります。かなりシャープだと感じる画でも、この程度は区別が付かなかったりするものですから大したものです。そうそう、これまでのニコンのデジタル一眼レフは緑色の再現にクセがありましたが(黄色に転びがちで、浅い色乗り)、いったいどうしたの??というほど、見た通りに写るようになりました。これは嬉しいですね。

ちょっと嫌なシーンです。光はかなりフラットで、像の分離が悪いカメラだとレンズを向けたくないシーンですね。どんなもんだろうと試しに撮ってみましたが、シャープさとヌケの良さで全く問題なしです。

ピントはお母さんと子供。絞り開放です。余談ですが、距離にして50m近くあるでしょう。よくもまあピントが合うものです。日頃MFのカメラばかり使っていると、AFの偉大さを痛感します。シャープさというものは、ピントを置いた部分だけに目が行くものですが、フォーカスを外れた部分も個人的には大事だと思っています。背景の草が「もやもやもや〜」となってしまうと気持ち悪いんですよね。根源的な解像力そしてシャープさを感じます。


本当にヌケがよくなりました。美しいですね。

今までなら菜の花がモゾモゾと写ってしまい、ちょっと敬遠したくなる被写体。色味は随分変わった印象ですが、厳密に言うとヌケのよさと濃度が上がっただけで、ニコンらしい色です。爽やかさが出るように1/3段だけ出た目より空け気味の露出です。後述しますが、AEの制御もかなり変わったようです。ともかく露出補正の頻度が減りました(特にアンダー側)。

本当に深みのある色が出るようになりましたね。ちなみに記憶色フィルム的なモードによる色再現ではありません。鉱物の成分が流れ込む沼なので、元々このような色合いです。そして筆者が見たままの色再現です。

こちらはISO3200で。いかがでしょうか。それにしても素晴らしい写りのレンズです。おすすめです。個人的にはII型よりもI型の方が周辺落ちが激しく面白いのでより好みなのですが。

D4Sでも感じたことですが、アンバー側の色再現も本当に安定しました。


何もかもが進化したフルモデルチェンジ

「D810」なんてネーミングからすると、D800のマイナーチェンジ版なのかな?といった印象を受けますが、D4Sのそれ同様、まるっきり別物になった印象です。D4Sはヘビーデューティーなシーンでの利用を見越したボディ性能を有し、ローパスフィルターを搭載しモアレを極力軽減(有無関係無く出る時には出ますが)、データハンドリングと実質的に必要な画像サイズを見越した画素数に、超高感度までを対応と、あからさまにプロフェッショナル向けの雰囲気です。D810は、D4Sのような「枠」または「縛り」がありません。となると、詰め込めるだけ詰め込んでリリースしてきたなとニヤニヤしてしまいます。D4Sユーザの筆者が「オイオイ」と感じる下克上を思わせる画です。ニコンというメーカーに保守的なイメージをお持ちの方は間違っていますよ(※)。どうやらモデル・ヒエラルキーというより完全に目的別と割り切っている模様です。となると、一般的にはD810を購入すれば幸せになれそうです。そして多くのプロの方もD810を手にする姿も想像できます。前述のとおり、ボディの進化も著しいのです。何より素晴らしい見えのファインダー、キレがありつつも静かなシャッター。大きく変わったなと感じたのは、これまでややオーバー目に振れることが多かったAEですが、アンダー側に露出補正をする回数が格段に減りました。このあたりの制御を大幅に変えてきた理由をちょっと聞いてみたいですね。何もかもが著しく進化した、もう一つ違うラインのフラッグシップ、それがD810という印象でした。ここまで写ると、あとは撮り手の力と情熱ですね。そんな風に言えてしまうカメラです。
※あくまで個人的な見解です。

( 2014.07.16 )

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見た目はそのままに大きくモデルチェンジ。D800/D800Eをお使いの方々にこそ、D810の進化を感じ取っていただきたい。完成度をさらに高めたボディ、きっとご満足いただけるでしょう。

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とりあえずの1本というには十分過ぎるほど活躍してくれる、標準ズームレンズとのセットはこちら。手ブレにシビアなカメラですから、常用レンズこそ手ブレ補正付きをおすすめします。。

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縦位置撮影が多い方だけでなく、カメラをできるだけ安定させたい方にもおすすめのグリップ。大口径レンズを付けたときの重量バランスもよくなります。ボディと同じマグネシウム製。

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このクラスのカメラをお持ちの方には必須ですよね。スペアバッテリー、ないと焦ります。お忘れなく。

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ニコンの新しい時代の標準レンズ。D810はその美しい描写を最大限引き出せるボディですよね。大きめのレンズですが、ボディとのバランスも良好です。

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