PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
SIGMA 28-45mm F1.8 DG DN | Art
開放値F1.8通しの大口径標準ズームレンズ「SIGMA 28-45mm F1.8 DG DN | Art」を紹介します。ソニーEマウント用に続き今回はLマウント用レビューになります。シグマによれば、35mm判フルサイズ用標準ズームレンズで、開放値F1.8通しを実現したのは世界で初めてとのこと。新しいコンセプトのズームレンズを提供し続けているシグマらしい一本ではないでしょうか。サイズは直径87.8mm、全長151.4mm、質量は960gと存在感のある大きさですが、インナーズーム機構の採用、最短撮影距離(30cm)がズーム全域で変わらないなど、操作性を考慮した機能が搭載され、取り回しの良さが配慮されています。Artラインにラインアップされる本レンズ、写りはズーム全域で単焦点レンズに匹敵するとのこと。どんな写りを見せるか、オール開放でじっくりと撮影してきました。
( Photography & Text : A.inden )
まずはテレ端での描写。ピントピークの写りは繊細で、造花の質感までリアルに再現されています。柔らかい光ですが、適度なコントラストがあり花びら一枚一枚の立体感が素晴らしいです。ウインドウ越しでもガラスへの写り込みがほぼ感じられないのは、メリハリのついた描写の効果があるとは思いますが、ボケ量の大きさも一役買っているのではないでしょうか。
スポットのように差し込んでくる光。シャドーはぐっと落ち込むと思っていましたが、画面周辺までしっかりと階調が残っています。レンズを通ってくる光を画面の隅々まで届けることで、センサーの性能を余すところなく引き出している印象です。微量な光もしっかりとらえる、さすがArtラインですね。
ワイド端の描写です。キリッとシャープなピントピークの描写、そこを中心に前後はなだらかにボケていく柔らかいボケ味。焦点距離28mmとは思えないほど優しい写りに好感が持てました。色の再現も自然で、ネオンサインの人工的な色から太陽が沈んだ後の深いブルーの色まで、見た目通りの印象に再現されています。
背景のレコードジャケットはタイトルがしっかり読めるほどシャープに。前ボケは柔らかく自然なボケです。この素直なボケであれば前ボケを積極的に活かした画作りができそうです。
- ワイド端でほぼ最短撮影距離。ピントピークはカリカリとしたシャープさではなく自然な感じに描かれている印象です。ピント面前後の柔らかいボケと相まって優しい雰囲気の描写ではないでしょうか。広角でクローズアップ撮影をすると不自然なパースを感じることが多いですが、ここまでボケ量が大きくなるとそんな心配は杞憂ですね。
- こちらの作例は同じ位置からテレ端で撮影。最大撮影倍率になります。
大きな窓と背景のビル、真っ直ぐ差し込む光と影。直線が印象的なシーンを、パースをできるだけ抑えるためカメラを水平垂直に構えて撮影。歪曲収差はしっかりと抑えられています。
AFは狙ったところにスムーズに合焦します。AFにはリニアモーター HLA(High-response Linear Actuator)を採用し、優れた駆動精度と高速を実現とのこと。また動作音も静かで動画も安心して撮影できそうです。
日没後一瞬現れる深いブルーの世界を、オレンジ色のナトリウム灯の写り込みをアクセントにして撮影。水の写り込みを勘案してカメラ位置を決め、ズーミングでシンプルな画面構成にしてみました。カメラ位置を変えずにフレーミングできるのはズームレンズのメリットの一つです。
F1.8が見せる描写が、単焦点レンズ愛を変えるか。
撮影したカットを見て一番印象に残ったのが、ヌケの良い描写。大口径になり微細な光までセンサーに伝わることで、約6100万画素センサーの性能を余すところなく引き出しているからではないでしょうか。開放から見せるこのクリアな写りはとても魅力的ですが、本レンズの一番の見どころはF1.8が見せるボケ。開放値が小さくなることでボケ量が大きくなるのはもちろんですが、ボケ味(ボケ方)をどうコントロールしているのか気になりました。本レンズのボケ味の特徴は自然さ。派手さはないですが、ピントピークを中心にほんのりと柔らかさを残した前後のボケが、しっとりとした空気感を演出しているように感じたからです。また、普段から35mmの単焦点レンズを愛用している方には、35mmを中心とした1.6倍のズーム倍率もおすすめのポイント。使い慣れた目線(焦点距離)をほんの少し変えることで見える世界は変わってくるもの。全ズーム域で単焦点に匹敵する写りを実現した本レンズであれば、安心してその違いを楽しむことができるはず。単焦点レンズ信者の方に是非お勧めしたい一本です。
( 2024.08.30 )
まるで単焦点のような写りの標準ズーム。
いつでもどこでも持ち歩く標準ズームにはレンズキャップがわりに最高のフィルターを。