PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
TAMRON 90mm F/2.8 Di III MACRO VXD Model F072
[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ
タムロンから、長年「タムキュー」の愛称で親しまれてきた90mmマクロレンズのミラーレス版「TAMRON 90mm F/2.8 Di III MACRO VXD Model F072」が登場しました。タムロンの90mmマクロと言えば、美しいボケとピント面の緻密さを併せ持った名レンズ。そのミラーレス版を待ち望まれていた方も多いのでは。レンズ構成は12群15枚で、そのうちの4枚が異常低分散レンズ。また球面レンズのみの構成で、タムロン初となる12枚羽根の円形絞りを採用するなどボケ味に対する徹底ぶりがうかがえます。AFの制御には、不規則に動き回る被写体にも対応できるリニアモーターフォーカス機構VXDを搭載。尚且つスペックから想像されるサイズよりコンパクトな設計と、まさしく満を持して登場といった印象です。Zマウント用の質量は640g、長さは約12.9cm。最大径は約7.9cmで、特に質量に関してはホールド時に軽さを感じました。等倍でマクロ撮影ができるのが最大の魅力ではありますが、90mmは人物撮影や物撮りはもちろん風景や街のスナップにも面白い焦点距離。画質と併せて、そのあたりもお伝えできればと思います。
( Photography & Text : TA )
ぐっと撮影最短距離まで寄ってみる。それだけでなかなか面白い写真になります。ファインダーを通して改めて花を見つめていると肉眼では見えていなかった世界が繰り広げられており、改めて等倍マクロの面白さを感じました。また自然が織りなすものの美しさを改めて感じます。
ピントピークは鋭く、ボケはトロットロです。諸収差を丁寧に取り払ったようなレンズで、柔らかさとキレの良さが同居します。花弁のカットはクリックで画像の右上部を拡大表示します。肉眼では見えなかった産毛のような細部までキャプチャーされています。
せせらぎの上を揺蕩う葉を、カメラを抱えた両腕を伸ばした状態でAFで撮影。マクロ域の撮影は基本的にMFでの撮影が確実かつ早いと思いますが、今回のようにファインダーを覗けない時や動きのある被写体など、MF撮影が難しければAFと瞬時に切り替えがきくのが素敵。マクロ域でも高速かつ精度の高いAFが使えるのは心強く、撮影の自由度があがります。
橋桁がぎゅっと圧縮され、また解像感たっぷりというのも相まって迫力のある画を叩き出します。正直なところこれは想定外でした。ボケの美しさばかりに目が行きがちですが、ミラーレス版になって「解像力」も格段に進化しています。
タムロン史上最高レベルの高速・高精度なAF駆動と謳われるだけあって、動体撮影もストレスフリーです。静かにスッスッと合焦します。それにしても瞬時に捉えたとは思えない緻密でキレのある描写です。被写体それぞれの質感がありありと伝わってきますし、被写体を浮き立たせる力も際立っています。
ヌケの良さ、ピント面の立体的な描写、前後のボケ。いずれも文句のつけようがありません。発色も豊かで流石はタムロンといったところ。やり過ぎにならない加減の良さもポイントです。
想像はしていましたが・・・遠景を捉えても凄まじい解像性能です。1枚1枚の葉が判別できるというレベルを越えて、その表情までもが描かれています。隅々まで立体的に感じるのは線と色の緻密なキャプチャによるものでしょう。少し引いて撮ったカットも載せておきます。画面下部の畑とのコントラストを見ても、200mmクラスの望遠レンズをマウントさせている感覚になります。
良いですね。ボケが柔らかい。いろんなものにレンズを向けたくなります。
突き抜けた描写力とユーザーフレンドリーな使い勝手が魅力の新型タムキュー
いかがでしたか?非の打ちどころのない現代のレンズそのもの。それも上々の部類で、思わず「良い・・・。」と呟いてしまうレンズでした。とろけるような魅惑のボケ味は継承され、こと「解像力」においては格段に進化した印象です。フルサイズで5000万画素を超える機種が出始めたのが2015年頃。現在は6000万画素以上を載せた機種も増えていますので、現代の、そしてこれからの高精細画像時代のニーズに即してといったところでしょう。また突き抜けた描写力を誇るレンズにありがちな、いわゆる取っ付き辛さはありません。手持ちでリラックスした撮影が可能です。質量は640gと軽量ですし、手のひらへの収まりも良い。信頼できるAFを備えていることもその一助になっていると思います。本格的なマクロ撮影が楽しめるのはもちろんですが、高解像な画を活かして風景撮影、柔らかなボケを活かして人物撮影など出番の多い1本となりそう。柔らかさとキレの良さが同居する写りで、AFの精度も高い「新タムキュー」。存分にお楽しみください。
フィルターワークを快適にする新型窓付きフードが装備されています。適度にトルクがあってピントの微調整がしやすい仕様のフォーカスリング、そしてAFの合焦範囲を制限するフォーカスリミッタースイッチを搭載と、使い勝手も良好です。
( 2024.12.13 )
本格的なマクロ撮影はもちろん、風景撮影や人物撮影、物撮りにと何かと出番の多くなりそうな「新タムキュー」。手持ちでリラックスした撮影も可能です。
フードを外した運用が多くなると思われます。保護フィルターをお忘れなく。