御朱印をめぐる旅 Vol.8
長野県長野市 善光寺
七年に一度の御開帳と聞いて、信州善光寺をめざしました。七年に一度。この機会を逃せば七年後まで見られないと思うと、一体何が御開帳されるのかを知らずとも訪れる動機になるものです。考えが及ばなかったのは、同じように思う人が沢山いるということ。事態の深刻さは駐車場への大渋滞を見てはじめて気が付きました。まさか仏像がこれほどまでに人々を集めるコンテンツだとは・・・。これは、千四百年以上前にこの国に渡ってきた仏像をめぐる、現代の物語です。(写真・文:Serow)
駐車場から北参道を通ってきたので、いきなり本堂に来てしまいました。正面から見て左右対称・威風堂々たる善光寺の本堂は、いつ見ても圧巻ですね。現在のものは1707年に再建された江戸時代中期を代表する仏教建築で、国宝に指定されています。今回の御開帳は集中を避けるために一ヶ月延長されているのですが、それでもこの人出。休日でなければ来れない人が多いということでしょう。
御開帳期間中、本堂の前にそそり立つ回向柱。結び付けられた綱は本堂に伸び、公開されている前立本尊阿弥陀如来の右手中指につながっています。この柱に触れることで阿弥陀如来と縁を結ぶことができるとされ、七年に一度の機会のために人々が訪れるのです。
さあ前立本尊に会いに行きましょう。お参り自体は参拝券不要ですが、なるべく近づいてお姿を拝むためにチケットを購入します。お戒壇巡りという「暗闇の通路を歩いて、本尊の下の位置にある錠前に触れる」というイベントとセットです。なんだかワクワクしてきました。
● 絶対秘仏と前立本尊
善光寺の御本尊である一光三尊阿弥陀如来像は、552年に百済からやってきた日本最古の仏像と言われています。海外のカルチャーであるがゆえに、当時は難癖をつけられて捨てられてしまったのですが、およそ50年後に救い出したのが本田善光。その名をとって善光寺が創建されると、やがて御本尊は厨子の中に納められて秘仏化し、誰も見ることができないものとなります。七年に一度公開されるのは御本尊と同じ姿とされる前立本尊で、御本尊そのものではありません。
さあ二時間待ちの行列です。仏像を拝むためにこれだけの人が並ぶということに驚きました。阿弥陀さまへの信仰心かと言われても、正直そんな感じはしません。それでも何らかの祈り、思いがあって、私たちはここに集まり、手を合わせるのです。江戸時代から善光寺参りはブームだったらしいのですが、何百年も前からこんな感じだったのでしょうか。
本堂をぐるりと回って、参拝の列はようやく本堂に入ります。ここから先の写真はありません。興味をお持ちになったら、ぜひ現地を訪れていただきたいと思います。お顔を拝見するなら、七年後ということになりますが。
お参りを終えてみると、御朱印をいただくにも長蛇の列ができていました。待ち時間はこれも二時間ほど。さすがに時間が取れなかったので、待ち時間の短い紙札でいただくことにします。夏のような日差しの下で順番を待っていると、後ろに並ぶ人の「地獄だね」というボヤキが聞こえて、思わずニヤリ。阿弥陀如来は極楽浄土の教主なのですが。
● 願うということ
ブッダの教えは(誤解を恐れずに言えば)自己変革メソッド。人生を楽にしてくれる理論が詳細に説かれているのですが、それは実践するものであって神頼みではありません。ところが人間は弱いもので、努力できる人は限られていたのでしょう。やがて誰にでもわかる、簡単な教えが広まっていきます。阿弥陀信仰もそのひとつ。阿弥陀如来は救済を誓った仏といわれ、念仏を唱えていれば救われるというシンプルさがヒットしました。しかしこれは「適切な食事と運動」ではなく「サプリ」で痩せたいというような話なのではないか。回向柱に触れるだけというのは流石に安直ではないか。そんな疑問もあったのですが・・・(〆に続く)
仲見世通りに降りてみると、まだまだ参拝客が続きます。近辺の蕎麦屋も大行列。七年に一度の御開帳は、長野の町にこれだけの人を集めるイベントでありました。千年に亘る集客力、唸るほかありません。
七年に一度の御開帳。多くの人が並び、手を合わせていく姿を見て、認識を改めました。この場所を訪れるのも何かを願うのもひとつの行動で、やろうと思わなければできることではありません。すなわち一念発起。変化の起点にエッセンスを集中すれば、それは「願い」であります。ご利益があるとか功徳があるとか、きっかけは何でもいいのです。痩せたいとか彼女が欲しいとかお金持ちになりたいとか、願いは何でもいいのです。手を合わせ、願いを頭で唱えるとき、それを聞いているのは私たち自身なのですから。
今回の機材
Nikon F3
Voigtlander NOKTON 58mm F1.4 SL
Kodak 400TX
むかし買ったフィルムが残っていたので、久々に使ってみました。自宅でスキャンする精度の問題もあって、現代のデジタルカメラに慣れた目にはユルユルの写り。でもそれがまた良いのですね。道楽のような値段になってしまいましたが、楽しめるうちに楽しんでおきたいと思います。
( 2022.06.30 )
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写っているものとはバージョンが異なりますが、Nikon Fマウントをお使いなら楽しい1本です。たまにはまた使ってみませんか?
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いやー、痺れる価格になってきました。1カットも無駄にせず、気合を入れてシャッターを切っていきましょう。
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善光寺の歴史に関心があれば、このあたりを是非。
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仏像の力を感じたなら、次は彫ってみましょう。
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