カメラは旅の相棒。旅に出るとを決めたなら、「どの機材を持っていこうか」とあれこれ悩むのも楽しみのひとつです。そうして出かけた旅先で、欲張りすぎた機材の重みを肩に感じ、もっと絞ればよかったと省みるのも毎度のこと。写真好き・カメラ好きの方なら、同じような経験もあるでしょう。いっそ機材を整理すればいい・・・なんてことができたら苦労はしません。
さて今回ばかりはそんな煩悩を捨て、いくつかの身軽で軽快なショートトリップを楽しむことにしました。機材は潔くGRひとつ。交換レンズも必要ないので、機材がこれ以上増えることはありません。時計を腕に巻き、財布とハンカチ、読みかけの文庫本を小さなバッグに詰めたなら、あとは目指す方向を決めるだけです。
( 写真・文 : Naz )
移り行く景色を眺めながら、弁当を食べる。汽車の旅というのもいいものです。昼間から飲み始めてお腹も膨れ、うとうととしていればいつしかそこは目的地。ふらりと下車した駅のホームでバッグからカメラを取り出し、気の向くままに歩き始めます。その町を知るにも、写真を撮るにも、自分の足で歩くのが一番です。
海と空の境目が曖昧になったモノトーンの世界にほのかに浮かぶ被写体。深い霧に包まれた海岸では、見えたはずの遠くの景色を目にすることはできません。ガッカリするよりも、そんな写真が撮れるチャンスだとワクワクしましょう。写真って、本当にいい趣味だと思います。
GR Digitalシリーズを使い込んできたためか、GRを手にしたはじめの頃は小さな差異が気になることもありました。GRDに外観や操作性は似ていても、中身はもう別のカメラです。熟成を重ねてきたGRDに比べると荒削りに感じる部分がないわけではありません。その一方で、大きく変わることで手に入れてきたものに目を向けると、GRが得たものが大きいことにも気づきはじめます。
旅先ではいつもと違う光景に少なからず感動し、記録に留めたい時間に向けてシャッターを切るもの。傑作を撮ろうなんて思って構えていたら、旅そのものを楽しむことはできません。旅を味わいながら心のうごくままにシャッターを切る。そんな使い方のなかでGRのフィーリングはごく自然で違和感がなく、時にはカメラという存在を忘れさせるほど控えめに、写真を撮るよき相棒となってくれました。視覚から伝わった情報がGRを手にした指先までそのまま伝わり、シャッターを押させるような一体感。まるで呼吸をするように眼前の光景を写し取ってゆくことができるのです。被写体と撮影者との間で黒子に徹するような存在。なるほどこれも、ひとつのカメラの在り方ではないでしょうか。
小さなショルダーバッグに最小限の荷物を詰めて、ポケットにはGR。日常から離れ、身軽になって行く短い旅。北へ、西へ。そして近くの海へ。これからもそんな旅が続いてゆきそうです。
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