これひとつで事足りる!? 1600万画素・大型センサー搭載の標準ズームユニット。

GXRというカメラシステムは本当に面白いもので、たとえが古くて恐縮ですが、まるでゲームのカセットを差し込むように七変化するカメラシステム。そのコンセプトは、レンズユニットとセンサーを一体に固定化し設計することで、全てを最適化、結果として高画質が手に入るといったところが基本にあるのだと思います。しかし、他社製マウントである「ライカMマウントユニット」なんてものも発表。センサーのローパスフィルターを取り払い、非常にシャープな画を実現するといったエポックな取り組みは見受けられるものの、それにしてもレンズ無しのレンズ交換式ユニット、しかも交換レンズは他社製という思い切った製品でした。この度実写レビューでお届けする、この「RICOH LENS A16 24-85mm F3.5-5.5」は、センサーサイズはAPS-Cサイズですが、同様の焦点域を持つユニット「RICOH LENS S10 24-72mm F2.5-4.4 VC」という一般的なコンパクトデジタルカメラのセンサーを搭載したユニットが既に存在し、その上でのリリースとなります。しかし、GXRというカメラシステムは、あらゆるニーズに、あらゆる形で応えていく。そんなカメラシステムであり、コンセプトなのだろうなと、ユニットを手にしてあらためて感じるのでした。いま、望まれているユニット(あったらいいな)を提供していく。そのプラットフォーム「GXR」を、まんまと乗せられて (?) 手にしておくのは、なかなか楽しいかもしれませんね。

「RICOH LENS A16 24-85mm F3.5-5.5」は、シリーズその他のユニットに比べ画素数が増え、約1620万画素に。ユニット名の「A16」はこれに由来します。24-85mmという最も使いでのある、いわゆる"標準ズーム"に、実用上不足の無い十分な画素数のAPS-Cサイズのセンサーが搭載されます。そして最初のテイクをコンピュータの画面上で見ると、どうやらローパスフィルターが取り払われているようです。きわめてシャープな像を結ぶのです。リコーのオフィシャルサイトを見ても明確にはローパスフィルターに対する記述がありませんが、これほどの明瞭なシャープさはローパスフィルター搭載機では経験が無く、恐らく省略されているものと思われます。一見、地味なスペックに感じられるレンズも、画面隅々までキッチリ像を結ぶ高性能なもので、「GR」と名を冠してもよいのではないかと感じる高品位な写り。「開放F値がF2.8ぐらいだったら・・・」と思わなくも無いのですが、あまりスペックを追求して肝心の写りに無理が生じて、たとえば周辺の描写が甘くなったりするよりはよいと思います。まして、サイズが大きくなってしまえば、せっかくのコンパクトさが台無しです。恐らく、スペックと描写、そしてサイズと、ギリギリのラインなのでしょう。なにせレンズはともかく、この小さなユニットにシャッターまで搭載しているのですから。

さて、前置きが長くなりましたが、本来の解像力を損なうローパスフィルターを取り払うことで得られるメリットは、そのまま本来の解像力で像が記録されるということです。肉眼で景色を見つめてください。人が見る光景はきわめてシャープです。「シャープさ」はリアリティ溢れる描写の重要なファクターの一つに数えられると言えます。このあたりは作例とともに後述いたしますので、ぜひその模様をお確かめください。そしてこのユニットは、もうひとつエポックな特長を持ちます。ローパスフィルター・レスのカメラは、シグマの一眼レフ、ライカM型デジタル、フジフイルムのX-Pro1などがありますが、APS-Cサイズの大型センサーを搭載しつつ、日常使用で重宝する高品位なズームレンズを搭載して、これだけコンパクトにまとまったシステムは、いまのところこの「GXR」+「RICOH LENS A16 24-85mm F3.5-5.5」のみです。きわめてシャープな画は、その解像力だけに注目しがちですが、画に立体感をもたらします。そして「RICOH LENS S10 24-72mm F2.5-4.4 VC」よりも大きなセンサーは、画に余裕をもたらし、直接的には高感度などにも当然強くなります。つまり、「GXR」+「RICOH LENS A16 24-85mm F3.5-5.5」は、もっとも使いでのある焦点域で、コンパクトで画質に一切の妥協無し。普段撮りに超高画質を実現してくれる組み合わせと言えるでしょう。

 

何度か塗り直されていると感じられる、ペイントの”盛られ具合”が分かります。解像力が無いと、この雰囲気はキャプチャできないのですね。センサー自体がシャープだと、意地悪にもレンズの粗も正確に(?)写り込みます。このレンズは適度なコントラストが感じられつつも、階調も損なわれていません。だから、ペイント独特のヌメりも感じられるのだと思われます。

 

このページ用に960pxへ縮小するにもソフトのセッティングをいつもと変えなければ、画が逆にギスギスしてしまうほどのシャープさ。しかし、シャープさは「正義」と書いちゃってもよいでしょうか!? 中央分離帯のパイロンが一つ一つきちんと分離し、車両の立体感はもとより、なにより車両の塗装面のリアルさは素晴らしいと感じます。リコーのデジタルカメラ全てに共通することですが、色味はナチュラル傾向といえるでしょう。後処理で各方面へ雰囲気を振ることができる、好ましい仕上がりだと感じます。

 

なめらかな階調表現は大型センサー・高画素の為せる技でしょう。グラスの透明感は見事です。余談ですが、この「透明感」にもシャープさというものは重要なのです。いくら階調がなめらかでも、像がユルいと透明感は演出できません。なだらかに連なる階調があり、エッジラインがキチっとシャープに立つことで、実は成り立つものなのです。駅や街角のポスター等で、たとえばメタル調のものの画を見かけたら、ためしによく観察してみてください(ビールのPRなどがわかりやすいかもしれません)。シルバーといってもいろんな色が断続的に連なり、ハイライトの光がズバっとシャープに入っていることでメタルっぽく見えるのです。グラスの透明感とはちょっと違いますが、理屈は同じようなものですね。なだらかな階調に、あいまいなエッジラインでは、メリハリが無く、くすんで見えてしまうのです。

 

上の作例のコメントにつながりますが、金属の描写は見事というほかありません。ボケ具合も素直であると思います。

 

撮影カメラマンの自己満足的カット。枯葉ひとひら、なかなか撮るのが難しい被写体です。つまり、解像力が無いと難しいといえますし、それ以前に画面内でこのひとひらへ、見る人の視線を引き込むのには構図力が問われます。レビューを書いている私が撮影したカットでは無く、気持ちがわかるなあ、といった余談でした。流れる水の様子、そして枯葉の写りの対比をご覧いただければ幸いです。

 

ズームレンズは多少なりとも歪曲収差を避けて通れません。もっとも歪曲の少ない焦点域がありますので、ズーミングしつつ、足も使って撮影したいところですが、昨今はソフト側で歪曲補正ができたりします。よい時代になりました。

 

かなり光量の少ない場面ですが、高感度でもノイズが少なく良好な印象です。また、このユニットをご覧になって「大きいな!」と感じられる方に。このアピアランスが、実はこのシャッター速度でも画を止めてくれるのです。非常にホールドしやすいため、手ブレ補正機構なしでも1/35なんてシャッターが切れるのです。

 

気にならずにはいられない、新世代のGXR。

はじめはユニットの大きさに驚きましたが、撮影してみると重量のバランスもよく、しっかりホールディングができて気持ちよく使うことができました。使ってみればその大きさは気になるものではなく、デジタル一眼レフと比べればやはり小さなパッケージです。そして、この画質を非常にリーズナブルに、コンパクトに手にすることができます。使いでのある焦点域であり、コンパクトなことも手伝って普段使いにもぴったりですが、その画質は一般的なものではなく、超高画質となります。もちろん普段使い以外にも活躍してくれますが、扱いやすいサイズや焦点域はどんなシーンでも撮影をアシストしてくれるでしょう。一級品の画質を持つカメラを常に携帯できるということは、このうえなく有り難いことですね。

今回APS-Cサイズのズームユニットが揃ったことで、基本的にはこのユニットで被写体と対峙し、単焦点のその他のユニットで攻め込む、なんてことが可能となりました。もちろん、一般的なコンパクトデジタルカメラと同じセンサーを積む、コンパクトデジタルならではの佳さを追求したユニットも健在。あらゆるニーズにユニットを切り替えて対応していく。そのためのラインナップに一本筋が通った印象です。その起点というか、軸にこのユニットは外せない1つだと感じます。どんなときでも画質はとびきりなものを。そう望む人へおすすめのユニットです。

 

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既にGXRボディをお持ちの方なら、このユニットだけでOK。ユニット毎にカメラの性格がコロリと変わるのがGXRならではの面白さです。

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GXRボディごとはじめてお買い求めの方はキットがお得。一眼レフに比べれば十分コンパクトで、大概のものに対応できるパッケージが手に入ります。

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