LEICA C-LUX | SHOOTING REPORT
ライカから1インチイメージセンサーをもつコンパクトカメラが新たに発売されました。LEICA C-LUXは小型で軽量化されたボディに、高性能なレンズ「DCバリオ・エルマーf3.3-6.4/8.8-132mm ASPH.(35mm判換算で24~360mm相当)」を搭載。この光学15倍ズームで、日常のスナップ、旅先での様々なシーンを高品質な写真に収めることができます。開放の絞り値はそこまで明るくありませんが、1インチのセンサーにより、ボケの表現も自在ですし、十分な階調も得ることができます。コンパクトなボディで360mmの超望遠を使うには手ブレが心配になりますが、光学式5軸補正、最高ISO 25600まで上げることのできる高感度性能で、360mmも安心して使用することができるでしょう。
機能の面は、2000万画素の画像を、RAWまたはJPEGで記録。視野率100%の0.21型、233万ドットの高精細な電子ビューファインダー(EVF)、タッチ式の約124万ドットの3.0型TFT液晶モニターを搭載。このタッチ式の液晶モニターで、スマートフォンの操作に慣れた方も違和感なく撮影に集中することができるのではないでしょうか。もちろん撮影後直ぐにSNSにアップできるように、Leica C-LUX App (iOS版/Android版)をスマートフォンにダウンロードすることで、Bluetoothで常時接続をしながらWi-Fiで簡単に画像及び動画を送信することができます。
操作・撮影スピードにかなりの改善がなされたようですが、この辺り、二人のレビュアーからの実際の感想を待つことにしましょう。
HIGH SUMMER
撮影が楽しくなるカメラ、特に標準〜望遠域での写りが素晴らしい。
写真を撮りに出るには少々暑すぎる日々が続いている東京ではありましたが、新たに登場しました「LEICA C-LUX」を手に身近な日常を切り取ってみました。同じ1型センサーを搭載するSONY RX100 Mark VIやCanon PowerShot G7 X Mark IIなどのライバル機と比べてもひと回り大きなボディ。携行性こそやや不利ではあるものの、撮影するときにはその余裕あるボディサイズを活かしてしっかりとホールドしやすく、より撮影時を意識したスタイルにまとめられているように感じます。せっかくの自慢できるカメラですから、ポケットや鞄にしまうよりも首や肩から提げて使うのがいいのでしょうね。軍艦部や背面に配されたダイヤル・ボタン等の操作性も窮屈さを感じず、タッチパネルでのAFポイント選択やレンズ基部の大きなダイヤルなど、快適な操作性が実に秀逸。
このカメラの最大のポイントである35mm判換算24-360mm相当の光学15倍ズームレンズは、2000万画素を超える1型センサーの力を十分に発揮できる高い光学性能を感じました。特に標準〜望遠域(50〜250mm相当)での描写は、たいへん素晴らしく、ピント面のキレや緻密ながらも力強い描写、立体感を巧みに演出する前後のボケ味など、画面の隅々まで気持ちのよい写りが印象的でした。こういう写りをしてくれるカメラを手にすると写真を撮るのがとても楽しくなります。ただ、大型のセンサーを採用しながらこれだけの高倍率ズームを載せていますから、開放F値はやや厳しいところがあります。たとえばテレ端での開放はF6.4、しかも最小絞りはズーム全域でF8と絞りの選択肢が狭く感じましたが、ISO 1600ぐらいなら躊躇なく使える高感度性能を(ISO AUTOで)積極的に使い、被写体とのワーキングディスタンスを上手に取れば表現の幅が狭まることはないでしょう。(Naz)
盛夏の思ひで
美人ライカと旅をする
旅にカメラは付きもの。しかし、あれも撮りたい、これも撮りたいと欲張れば、レンズもワイドからちょっと望遠も欲しくなり、なんだかんだ言い出して、気がつけば結構な機材をカバンの中に詰め込んでしまっています。旅を楽しむのか、写真を撮りに行くのか分からなくなっている事もありますよね。やはり旅は、散策したり、その土地ならではの料理を楽しんだり、家族や友人と一緒ならなおのこと、先ず旅そのものを楽しむのがいいでしょう。その上で、そばにカメラがあれば楽しさが増すと言う事です。いい光景に出会えばシャッターを落とす。それが本来の旅の楽しみ方かも知れません。
LEICA C-LUXは24-360mm相当(35mm判換算)の焦点距離をカバーし、ファインダーを覗いてズーミングしてみれば、極端な話「これ以上の画角は撮らなくていいよ」と思えるくらい。まさにこれ一台あればすべてを写してくれます。高倍率ゆえに、F値こそさほど明るくありませんが、効きのいい手振れ補正と高感度性能のおかげで、朝薄暗い時間から夕暮れまであらゆるシーンを捉えてくれました。
とにかく暑い今年の夏。陽射しも一段と強く太陽が覆い被さってくるかのようです。しかしながら、夕暮れにもなれば人々も活動的に現れてきました。陽も傾いたいい頃合いに、LEICA C-LUXを片手に散策するのも気持ちのいいものです。EVFファインダーを覗きながら、フォーカスポイントは背面液晶を右指でタッチすれば、合焦も速く、軽快にシャッターを落とす事が出来ます。望遠側でもタッチAFは軽快さを失わず、スッスッと合わせてくれます。とにかく軽快で、逆に旅を楽しむより撮影に没頭してしまいそうです(笑)。
画質に関して言えば、テレ端付近では解像度としてやや甘さは感じるものの、ボケ量もしっかりあり、360mm相当ともなれば一段と世界も変わってきます。このカメラを使って思うのは、ズーム付きコンパクトは、F値優先でズーム倍率を抑えた標準ズーム機よりも、多少F値は犠牲にしても高倍率ズーム機の方が使い出があると実感します。一台で済ます事が出来るのはもちろんですが、サブ機として持ち歩くといった場合でも、メイン機にはお気に入りの単焦点レンズを一本付けて、高倍率ズームのLEICA C-LUXはバックの中に忍ばせておくという組み合わせにもいいですね。
それよりもLEICA C-LUXの最大の魅力は、やはりこのデザインではないでしょうか。シャープでスマートなラインに、絶妙なカラーリング。シャンパンゴールドとクリームホワイトの2トーンカラーをカメラに落とし込んでくるあたり、LEICAならではだと思います。そのシャンパンゴールドの質感もとても良く、グリップの肌触りもまた絶妙です。カメラは、よく写れば良いだけのものではありません。常にもって歩きたくなるお気に入りのデザインでなければいけないと思います。「次の旅も、このカメラと歩きたい。」そう思わせる一台です。(T.T)
1型というコンパクトカメラとしては大きなセンサーサイズを上手に活かし、すっきりとしつつもトーンの豊富な画を上手に描いてくれます。特にハイライトのトーンの美しさとしっかりと潰れずに粘るシャドウ部はクラス以上のものを感じます。コンパクトカメラでこれだけ写れば文句なんてひとつも出てきません。カーテンのレースや金属の表現も質感を上手に再現してくれています。
遠くの被写体をぐっと引き寄せられるだけでなく、テレ端(132mm=フルサイズ換算360mm相当)ともなると圧縮効果もかなりのボリュームが得られます。強力な手ブレ補正により、超望遠域でも安心して手持ち撮影が行えます。描写性能が素晴らしい標準〜中望遠域に比べると、レンズの解像力はやや弱まる印象ですが、真夏の夕方の湿度のある雰囲気をうまく表現してくれていると思います。
金沢は主計町にある、中の橋を渡っていると正面から子猫が歩いて来ました。カメラを向けると、スッと川に飛び込むように姿を消しました。あれっと思い、川の方を見ると、しっかり端ギリギリを歩いています。すかさずタッチAFでピントを合わせてシャッターを切りました。陽も落ちかけオートにしていたISOも1000。素早い子猫を瞬間捉えるとは中々の実力です。
テレ端360mm相当で、ほのかな灯りの行灯を捉えてみました。奥に見える提灯のボケなど、あたたかい色合いに雰囲気もいいですね。
こちらもテレ端、遙か先に見える漁船ですが、さすが360mm相当。被写体をぐっと引き寄せてくれました。夕暮れの時間帯で波しぶきも相まってやや霞んではいますが、しっかりディテールを描いてくれています。
ワイド端でぐっと寄ってみました。錆びた鍵の質感もよく写し出していますし、奥に向かってボケていく表現もいいですね。
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ライカは1台で完成している。
LEICA C-LUX の描写に関しては、作例を見ていただければお分かりだと思います。日常のスナップで使うズームの中間域は繊細でライカらしい雰囲気のある描写、1インチセンサーらしいボケ味、特に後ろボケの美しさは素直に綺麗だなと感心させられます。テレ端での描写が若干甘いと感じられるカットもありましたが、それは遠景に限ったことで、近影から中影にかけては甘さは感じられません。光学15倍ズーム、テレ端360mm相当(35mm判換算)とかなり欲張った設定で多少は無理をしているのかなと感じますが、遠くのものをぐっと引き寄せたい欲望を叶えてくれる頼もしいやつですね。
そして、これが一番大事なのですが、1インチセンサーを十分に生かした描写にライカらしい味付けが感じられることです。冷たいものは冷たく、湿度があるものはしっとりと周りに存在する空気感をまとわせる描写。被写体の質感を感じさせる最低限のコントラストで、ものがものとしてサラッと写っている。そんなさりげなさが撮り手を魅了するのではないでしょうか。これは、撮影することから離れてしまうことかもしれませんが、手にしっとりと馴染むデザインと質感は、機種が変わっても変わることがありません。一度ライカを手にすると、新しい機種の写真を見ただけでも指先の感覚が、金属の質感、レザーの感触、物としての重さを感じさせてくれます。もし、その感覚を実際に感じてみたいと思われる方は、一度手にとってみることをお勧めします。ただ一瞬でライカの虜になっても、それは自己責任ということで、よろしくお願いいたします。
LEICA C-LUXは、価格的にライカ入門編のような位置付けと感じられる方がいらっしゃるかと思いますが、ライカをこれまで使ってきた経験から感じることは、ライカに入門編はなく一機種一機種が、ライカのこれまでの系譜が一本の木のように描かれている「ライカツリー」の中で個性を放つ存在として生み出されているなということです。ライカは1台で完成している。いつでも歩けるコンパクトさに、光学15倍ズーム、1インチセンサーを搭載するLEICA C-LUXもその一台だと感じました。
( 2018.08.03 )