Kodak PIXPRO SP360 | SHOOTING REPORT
アクションカムのカテゴリに新たなプレイヤーが登場しました。Kodakブランドを冠したPIXPRO SP360は、超ワイドな214度という画角をそのままグルリと360度捉える円周魚眼レンズを搭載。レンズ面よりも少し後方まで、人間で言えば首を上下左右に少し振るくらいの広い範囲までの視野角を持つ映像は、いままでのアクションカムとは一線を画しています。ボディカラーに採用された深みのある黄色と直方体のボディは、かつてのコダックのフィルムパッケージを彷彿とさせる心憎いルックス。手にしただけで嬉しくなる機体を片手に、いろいろな場所に出かけてみました。
( 撮影 : Taka, 4beats / 文:4beats )
まずは素直に、単純に「楽しい」という感想をお伝えします。自分の目で見ている以上の情報が予想以上の迫力を伴ったムービーとして記録される、それが思いのほか楽しいのです。このカメラを編集部内で一番いじくり倒していたスタッフは、レビュー撮影の最中に一台購入したほど気に入ったくらいですから。
ご覧いただいたように円周魚眼のサークルをそのまま捉える撮影スタイルを基本とし、撮影時の設定や、撮影後に専用ソフトを用いることで半球状の「ドーム」や帯を輪っかにしたような「リング」、2分割や4分割等々いつくかの展開モードを楽むことができます。またタイムラプスやエンドレス録画、動体検知録画といった撮影方法も選べるので、様々な用途にも対応可能です。作例では身に着けたり地面に置いたり、車やラジコンカーに載せてみたりと様々なシーンでの撮影にトライしてみました。公園にあるトンネルに置いてみたら、入り口と出口が一画面に収まる不思議な画に。胸にぶら下げて登山のシーンを収めたら、自分の手足まで写るので日頃の運動不足がまざまざと記録される羽目に。。。ラストのシーンは画素数848×480・120fpsの高速モードでラジコンカーが雪に飛び込む瞬間を撮影したもの。いろいろと楽しめましたが、まだまだです。本機の可能性は計り知れません。
オプションのSP360フルアクセサリーセットは、ハウジングからベルト、マウンターなど各種パーツが揃えられているので、目的に応じて様々な撮影に対応可能です。自転車などに使えるバーマウントはもちろん吸盤やクリップなどもあり、思いもよらぬ設置方法を見つけられそうですよね。そして今回、映像にもあったように意外な伏兵として大活躍したのが最近流行の"自撮り棒"。これはKodakのアクセサリーキットとも別の商品なのですが、まさに鬼に金棒と言いましょうか、SP360との相性が良すぎて純正品があっても良いのでは?と思ったほどです。油断をすると自分の手や顔が写ってしまう本機の広い画角に対処するためにカメラを身体から離したり、逆に画角を活かして趣向を凝らしたアングルを構えたり。かなり使い勝手の良い相棒になりました。
ムービー体験が新たな領域へ。
アクションカムといえば対角180度弱のワイドレンズを搭載し、フルHD(最近では4K)の画質、16:9のフォーマットで記録するのが一般的です。そして頭部や胸、自転車やスノーボード等々さまざまな箇所に装着することで、ハンディタイプのカメラでは不可能だった目線から臨場感溢れる映像を捉えてくれます。ところがカメラの小ささと画角の広さからアングルに対してルーズになりがちで、肝心なシーンが上手く収まっていなかったという失敗が意外と多くあるもの。それに対しSP360ならばそんな残念なことはめったに起こりません。なぜなら214×360度という超広角・円周魚眼のレンズが、カメラを取り巻く世界をゴッソリ丸呑みしてくれるからです。そしてもちろん、このカメラはそういった"失敗しない"ための使い方だけに収まるようなカメラではありません。もっと能動的にこの魚眼レンズを活用しようと思わせてくれるポテンシャルを秘めているのです。撮影欲が揺さぶられて止まないとても潜在力の高いカメラなのです。
先ほどハウジングを含めたアクセサリーキットをご紹介しましたが、実は本体だけでもIPX5相当の防滴・IP6X相当の防塵・2mまでの耐落下・マイナス10度までの耐低温性能を備えています。そして側面には三脚穴も。つまり、ハウジングを使うことなく様々な撮影に臨めるのです。このことはアクションカムとしてはとても大きなアドバンテージとなります。操作性を損なうことなく、マイクを遮られることもなくむき出しで使えるのです。さらにWi-FiやNFCにも対応しておりスマホとの連携もスムーズで、本体だけでは少々面倒な操作はアプリがしっかりとカバーしてくれます。このハード・ソフト両面から得られるフットワークの軽さは、何気ないようで実のところなかなかに得がたいものなのです。
一見した限りでは、SP360はアクションカムというフィールドからは少しはみ出しているような印象をお持ちになるかも知れません。ですが、いずれはこちらが本流になる可能性を十分に秘めています。アクションカムと円周魚眼レンズとの組み合わせはそう感じさせるほどに新鮮で、撮影にワクワクする毎日を与えてくれたのです。ためらうことはありません。是非使ってみてください。そこには思いも寄らない新しく刺激的な映像体験が待ち受けています。
( 2014.12.26 )