Hasselblad XCD 2,5/90V
「XCD 2,5/90V」は、35mmフルサイズ換算で71mm相当の画角をカバーする中望遠レンズです。重量は551gと「XCD 3,2/90」から68gの軽量化が図られているにもかかわらず、F値はさらに明るくなっています。使ってみてまず感じるのは切れ味の良さ。開放から距離を問わずピントが鋭く立ち上がり、ボケは距離感を伝え若干の「グルグル」も伴いつつ、比較的ドラスティックに増していく印象です。どちらかと言えば「現代的な描写」方向に振っているのかなと思いますが、扱いやすさを担保しつつ心に訴えるクラシックな要素も残したレンズと言えるでしょうか。モデル名末尾に「V」がつく新シリーズは他にも「XCD 2,5/38V」や「XCD 2,5/55V」がありますが、特に柔らかさも持ち併せた38Vと比べると開放でのピントはシャープに感じます。ご覧ください。
( Photography & Text : TAK )
遠距離もなんのその。高精細センサーの表現力を全解放する切れ味です。降り積もった雪や細かな木々の様子まで判別できる解像性能で、ヌケの良さも相当なレベルだと思われます。周辺は落ちますが、それが良いんですよ。
こちらも恐ろしいほどにシャープですが、シャッター速度にもご注目ください。1/4000秒はラインアップ中最高速です。そのこともあってか、作動は38Vなどより硬質でカチッという節度のある響きがあり、やっぱりハッセルブラッドっていいなあと思える音です。動きを止められるのはフィールドはもちろんのこと、スタジオでも重宝しますよね。
寄ってみました。菰（こも）の編み目を爪で確かめたくなるほどのリアリティです。もはや肉眼を超えた解像性能にも思えるのですが、目が痛いほどのガサガサな切れ方ではなく、1億画素全てが丁寧に仕事をして実現した、誇張不要のシャープネスです。過剰なまでの反射光も御し切っていますね。いやはや、色んなレンズを見てきましたが、これは流石というほかありません。
前後ともにスムーズなボケ味で、距離感の違いもリアルに伝わってきます。「グルグル」の片鱗は若干認められますが、「レンズらしさ」という価値観で見ればむしろこれくらいがちょうど良いように感じます。
素直で、とろけるようなボケです。当然のことながら、コントラストや発色も言うことなし。ボディの画力を最大限に引き出してくれます。
中距離での分離力も高く、ピントがスッと立ち上がります。大口径中望遠ならではの愉しみですね。
スクエアフォーマットです。大きなボケをコントロールすれば、主役の演出も自由自在。うるさくならない前ボケとシャープなピントは、あらゆる場面で表現の幅をもたらしてくれます。
全幅の信頼を置ける中望遠
抜群のキレと美しいボケで、視線誘導も思いのまま。表現にメリハリを与えてくれる素晴らしいレンズです。シチュエーションを問わず開放から描写性能が安定しているので、実に使いやすくお仕事も相当捗るものと思われます。薄味だというわけでは決してありません。こんな表現もどうかと思いますが、ほんっとにキレイに写ります。どこをとってもハッセルブラッドの審美眼に適ったクオリティーで、クリエイティビティーをフル過給してくれること請け合いです。リニアステッピングモーター採用のAFもキビキビと気持ちよく合焦してくれますし、ボディの位相差AFと組み合わせれば中判デジタルだということを忘れるほど、スムーズに撮影できます。スタジオで、フィールドで、とにかく頼れる1本。よろしくご検討ください。
( 2024.03.19 )
