PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
Canon PowerShot SX70 HS / SHOOTING REPORT
「PowerShot SX70 HS」は、21mm-1365mm相当、倍率にして65倍を誇る超高倍率光学ズームレンズを搭載したコンパクトカメラです。2018年の発売以来、今なおラインアップされている現行モデルで、レンズ一体型の高倍率機が数を減らしている現状では貴重な存在ですね。ただ、絶対的画質より小型で高倍率による使い勝手を最優先する場面は今も、そしてこれからもあります。本機は電池メモリーカード込みで610gと、クラス最軽量とも言えそうなコンパクトさを実現しており、実際手に持ってみると数字よりもはるかに軽く感じます。小さいとはいえ、やはり1300mmを超える超望遠ということが頭にあると、400gくらいに感じたほどです。グリップやバランスも相当良く考えられているのでしょう。収納時の全長も116.6mmと全幅よりも短くなるのですが、まさに王道スポーツカーのような比率で、とにかく扱いやすいのですね。どうぞご覧ください。
( Photography & Text : TAK )
飛行機のように巨大な被写体を望遠端で追うのは容易ではありませんが、練習するうちに何とか収められるようになるものです。400-600mm程度でもっと前方で撮影しても同じサイズで捉えられますが、1200-1300mmくらいでなければこの建造物を同じように背景にすることはできないでしょう。より大型のセンサーを搭載したレンズ交換式カメラでもテレコンバーター併用なら実現できる焦点距離ですが、機材の大型化というデメリットもついてきます。本機が必要とする空間はバッグのちょっとした空きスペースです。画質もキレッキレとまではいかないものの、十分ではないでしょうか。センサーサイズこそ多くのスマートフォンと同じですが、スマートフォンでこの倍率はまず不可能です。5段分の手ブレ補正も効いていますね。
同じく望遠端です。朝の柔らかい陽光で捉えていますが、これだけの倍率でもしっかりと光を拾ってくれました。クレーンのディテールも十分に再現されています。見慣れた光景もその一部を拡大しながら前後の距離感を圧縮することで、全く違った光景のように見えてくるところが面白いですね。
斜光がパターンを照らすシーン。あとは画角さえ整えば写真が成立する条件でした。それを21-1365mm相当から選べるのですから、これ以上のカメラはないと感じました。ここでは240mm相当あたりにズームアウトしていますが、それでも立派な望遠域ですよね。こういうカメラはスナップでこそ力を発揮すると思います。単焦点ではまず狙わない、というより狙えない世界です。
広角端は何と21mm相当です。24mmあたりが相場なので別世界に感じますが、むしろスナップの王道域なので色んな場面で重宝すると思います。濃厚な色合い、そして力強い線も嬉しいですね。
広角端のままググッと寄って、背景とのバランスで構図を決めました。実はまだ寄れます。メーカーによるとその距離は「0cm~50cm」。つまり、レンズ先端があたるほどに近づけるということです。もはや昆虫のようではありませんか。
昆虫の視点で特に何を狙うわけでもなく撮ってみました。これだけ綺麗に写ってくれれば何の不満もございません。125mm相当です。
再び望遠端。昆虫も逃げずに素敵なポーズを決めてくれます。笑ってしまうほど何でも撮れてしまうカメラです。
足を使わずともこういう構図がサッと撮れる、、、いやあ楽すぎて不安になるほどです(笑)。単焦点を使い込んで様々な焦点距離が体に染み付いてからこういうカメラを手にすると、鬼に金棒でしょうね。
主にAFの動きや認識を検証するために、動画も撮影してみました。この倍率で動き物にここまで喰らいつければ十分でしょう。認識力にも優れ、主役以外の被写体に持っていかれることが少ないのも印象的です。そもそもここまでの超望遠で動画が撮れるという時点で、このカメラを手に入れる価値はあるでしょうね。なお、ズームが作動している間は音声入力レベルが小さくなるようです(プラグインパワーの小型外部マイクを使用しても同様でした)。
まさにカメラ界の十徳ナイフ
小さくて多用途、まさにアーミーナイフのようなカメラです。超がつく広角から望遠まで、あらゆる撮影をこんなに小さなボディで実現しているのですから、もはや無敵と評してもよいでしょう。画質もこのスペックでこれ以上何を求めるべきかわからなくなるほどに十分ですし、AFも静止画動画を問わず優秀です。撮影モードも一通り揃っていますし、マニュアルフォーカスだってできます。一芸に秀でていながらも、ちゃんと押さえるべきは押さえた堅実なカメラに仕立てるあたりが流石だと思います。メインカメラとしても十分お使いいただけますし、より大型のセンサーを搭載したカメラをお持ちの方のスーパーサブにもなります。単焦点付きのカメラがメインなら、ある意味他の単焦点を複数持ち歩くよりも有効な選択肢になるかもしれません。彼方をロマンチックに望むもよし、足元のミクロに覗いてみるもよし。世界は、このカメラをバッグに忍ばせた瞬間からグンと広がります。日常と非日常を1本で軽〜く結ぶPowerShot SX70 HS。ご自慢のコレクションに是非お加えください。
- SX70HSを持っていない人:「何のカメラで撮ったの?」
SX70HSを持っている人:「レンジファインダー」
持っていない人:「なるほどね」
持っている人:(ふっふっふ) - 異なるレイヤーで繰り広げられる人生が同じ時間軸で進行する瞬間を止める。写真の楽しさを実感できるカメラです。
( 2024.08.20 )
こういうカメラを使いこなして、高級機を振りかざす周囲をギャフンと言わせてやりましょうよ。今後もこのカテゴリーが生き残ることを強く望みます。
想像以上に電池は持ちましたが、予備があればさらに安心です。