PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

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ソニーEマウント完全レビューブック
巻頭口絵 プロダクションノート

Vol.4 ロシアより再び愛を込めて(by K)

フォトヨドバシ・ムック第3弾「ソニーEマウントレンズ 完全レビューブック」が無事校了し、これが読まれるころには書店に並んでいる筈。いやあ感慨深い。フォトヨドバシが始まったのは7年前。ショッピングサイトで機材のレビューを行うというのは当時まだ珍しく、ゆえに普通のメディアとも一線を画すわけで、スタート当初は一体何をどうしたらいいやら。レビュー用機材の調達方法すら分からず、すべてが手探り状態。懐かしいな〜。そんなこんなで3冊目。フォトヨドバシ編集の「ソニーEマウントレンズ 完全レビューブック」(しつこい)、ぜひ皆さまお手元にお納めください。

不肖「K」、今回巻頭口絵の撮影を担当させていただきました。

「サンクトペテルブルク行ってきてくれる?」
「え、それってレニングラード?」
「そう、レニングラード」
「飛行機ツポレフかな〜」

巻頭を担当することは前から知らされていたものの、まさかそんなリクエストだとは思わず、まったく画が浮かびません。冬のロシアはソ連と呼ばれていた時代に一度渡ったことがありますが、朝は11時ぐらいまで何やら暗いし、根性無しのお陽さんは3時にはお帰りに。なんだこの日照時間の短さは。それにまったく英語が通じない国だったような・・・いや、趣味ならよいのです。むしろ何も分からないぐらいが楽しい。しかし仕事となると、慣れない場所、しかも限られた日程での撮影ほど不安なことは無い。まあツアー会社のWEBでも見てみましょうか。え? 第三国経由の安いエアチケットと安宿を手配して、あとはひたすら撮り歩くんじゃないのかって? ロシアなんていう勝手の分からない、また査証が必要な国となると、ツアー会社の添乗員同行ツアーがベストです。自分でやると面倒な査証申請も代行してくれるし、代表的なロケーションを効率よくタイスケにまとめ上げてくれるわけで、これを利用しない手はありません。それにツアーの方がプランが練り込まれていてコストも全然安いですから、知らない国に撮影に行くのならたとえ趣味の撮影でも添乗員同行ツアーがおすすめですよ。

ツアーは、サンクトペテルブルクとモスクワ間の飛行機を除いて全行程バス移動。もちろん見どころのハイライトだけを効率よく回る観光ツアーですから、行程と撮り手の欲求はどうしたって乖離します。あともうちょっとここで撮りたい、あそこの路地に入りたい。。団体行動な挙げ句、タイトなスケジュールですからそんな自由は殆ど効きません。でも、それでよいのです。たとえたっぷり時間があり、周りを一切気にしなくていい単独の撮影行だったとしても、写真なんてものはシャッターを切る前から"撮れているもん"だと思います。むしろ限られたチャンスを生かしながらタイトに撮る方が結果がよかったり。最初の2日間ぐらいは焦ります。海外での撮影は何度も経験していますが、私の場合、身体が慣れてくるのはだいたい4日目あたり。移動で消耗した体力が回復され、時差で狂った体内時計が順応し、現地の空気や街の流れがなんとなく読めて来るのがその辺りなんですね。そんなことから2日目ぐらいまではロクな写真が撮れず、猛烈に機嫌が悪い(笑) 。

今回の巻頭撮影に際しては、お題が一つありました。ロシアのクリスマスを撮ってきて欲しいと。それにはまず、夜間に街中に出張るというツアーの行程がマッチしなければ撮れません。お題をこなすまでは悶々とします。確か3日目だかに最初のチャンスが訪れました。サンクトペテルブルクです。しかし街中にクリスマス臭が殆どしません。あのお菓子の家みたいなのや派手なイルミネーションはいずこ?と目を皿にのようにしてバスの車窓にへばりつきますが、ない! やはりロシアでクリスマスなんてものはなくて、みんな家でボルシチ食べてんのか??(偏見) ポツリポツリ見かけるのですが、おそらくムックの元締めを担当した編集員がイメージしているのはこんなんじゃなく、もっとお菓子の家なはずだ。たまらず添乗員さんに訊いてみました。すると驚きの回答が。「ここでは派手なクリスマスは2年に一度で、今年は違いますよ」と。なんだそれ、、頼む、毎年やってくれ。まぁこのあと訪れたモスクワでは普通にありましたが。

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ちょっとこわいロシアのクリスマスお菓子。これはスマートフォンで撮ったものだが、顔認識しまくり。

ツアーのよいところは、毎回の食事の際に遠慮無くお酒が飲めること。ロシアといえばウォッカでしょう〜と、毎回ショットグラスを2、3杯空けてはテーブルを叩きます。ロシアの冬は地図を見ただけでも寒そうですよね。そのとおり、とっても寒いです。ウォッカでも飲んでないとやってられません。バスの中で添乗員さんがロシア人の平均寿命の話をしていましたが、男性の平均寿命が耳を疑うような若さ。それってウォッカの飲み過ぎなんでは? 因果関係はわかりませんが、添乗員さんもロシア人は酒を飲み過ぎだと笑ってました。

サンクトペテルブルグとモスクワ、本当にロシアのハイライトを回るごく一般的なツアーですが、実はモスクワを訪れるのを楽しみにしていました。ソ連時代に訪れた時と今、どれぐらい違うかなあと。変わったといえば変わりましたが、変わらないなあとも感じました。クレムリンの中を見れば、時間の流れがそのまま壮大に積み重なって見えます。これはあらゆるものが新しく作り変えられてしまった今の日本では、京都あたりでしか感じられないことです。ファインダーを覗くと、昔の姿が色濃く残る国を本当に羨ましく感じます。国際政治的には極めて大きな影響力を持つ超大国ですが、我々の日常生活レベルで見れば、ロシアはあまり馴染みのない国でしょう。目新しいものを見ることが写真の魅力のひとつとすれば、撮り手にとってこの国は面白い。ファインダーの向こうにはヨーロッパでもなければアジアでもない景色が広がる。とにかく撮っていて新鮮。ロシアは広いですから、中央や極東の街なども訪れてみたいところです。

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夜更けにふと目が覚めて窓の外を覗いてみたら、自分の中にある「ロシアらしい」光景が広がっていて、しばらく見入ってしまった。

本誌の方で書きたいことは書いてしまったのでとりとめの無い内容になってしまいましたが、今回の撮影であらためてスナップ撮影は楽しいと感じました。つい最近、編集部でこんな話をしました。なぜ、明けても暮れても写真を撮ってきたんだろうと。例えば楽器だと毎日弾いていれば、それなりに上達の手応えを感じる。しかし写真となると、目に見えて上手くなるのを感じるわけでもないし、何故なんだろうねと。そのときの話を今日までぼんやり思っていたのですが、ひとつ答えらしきものが見え隠れするのは、なにか成果を得るために撮るわけじゃないのだろうな、と。いや、ロシア撮影後記みたいなものを書いてと言われ、いまこれを書いているわけですが、日々過ごすうちにロシアに行ったことなど、もうすっかり忘れているわけです。つい半年足らず前の話なんですが。。そういえばどんな写真を撮ったかな?と見返すわけですが、撮ったカットを見るとそのときの光景が脳裏にバッと広がり、耳が痛い冷たい空気に、暗く落ちる空。

上手く言えないのですが、写真を撮るということは、路面に残るタイヤマークみたいなものかなと。もちろんマークを残すのは生きている自分で、日々転がり走っているわけです。路面に残ったタイヤマークを見れば、どのようにスロットルを開けたかが如実にわかります。なんて、モータースポーツに興味がない人にはまったく意味不明な例え話でした。つまるところ写真はそのときの自己の記録であり記憶なのでしょう、単純に、何処まで行っても。入れ込んだ時期があり、離れる時期があったとしても、一枚も撮らないとまではならない気がします。そう考えると、あらためて写真てのは面白いなと思う今日この頃です。

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もちろんごく一部。どちらかと言えばムダ弾は撃たない方だが、一事が万事思うに任せない今回のロケでは、さすがにたくさん撮った。しかし文中にも書いた通り、その方が撮影に集中するし、モノに出来た時の喜びも大きい。

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( 2018.05.30 )

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