Nikon AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率  
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ

ニコンのレンズではじめて、PF（Phase Fresnel：位相フレネル）レンズを搭載した、FXフォーマットデジタル一眼レフカメラ対応のサンヨンが出ました。PFレンズとは、カメラレンズに使用される屈折レンズにPF素子を組み合わせたもの。一般的な凸レンズを通過した光の色（波長）は、レンズ面に近い方から青・緑・赤の順で結像するので色のズレが生じます。これがいわゆる色収差となります。一方のPF素子を通過した光は、それとは逆の、赤・緑・青の順に結像。ということで凸レンズとPF素子を組み合わせると、各々の色ズレが打ち消し合うことになります。よって本レンズで使用しているPFレンズ自体、色収差の補正が完結しているレンズなのです。冒頭から長い話になってしまいスミマセン！しかしこのPFレンズの存在は、色収差を補正するために必要であった特殊硝材やレンズのサイズを、大幅に減らすことに一役、いや二役？も買っているのです。ロングセラーの「AI AF-S Nikkor 300mm f/4D IF-ED」と比べると、全長約75mm短縮、重さ約545g軽減という大幅な小型・軽量化が実現。全長147.5mm、重さ約755gというサイズ感はまさにイノベーション。いつでもカバンの中に忍ばせておける単焦点300mmなんて、これほど頼もしい存在はないでしょう。はたまた周囲から浮くことなく？！ストリートスナップまでシャシャッとこなせるのですから、望遠撮影の楽しみがさらに広がること請け合い。描写は、絞り開放からきりっとシャープな像を結びます。ボケの方は、どうやら距離や明るさによっては独特のクセが出るようで、もちろん絞り込めばびしっと決まるわけですが。今回は思い切って、全カット絞り開放での作例をずらっと並べてみました。カメラボディはローパスフィルター効果が抑制されているD800E。光学特性がカットされにくく、レンズの特性もストレートに出やすいといえる条件です。さあ、とくとご覧くださいませ。

( Photography : Z II / Text : KIMURAX )

ひときわ映えるボードのピンク色に負けず、スッと浮かびあがってくる濡れたウエットスーツ姿。ボードで弾ける海水の1粒1粒の立体感、そして柔らかく隆起する波の塊のボリューム感までもがきちんと伝わってきます。拡大して見ても解像感たっぷりの描写は、さすが単焦点300mmの写りといわんばかり。しかしよく開放からキレるものです。通常の手ブレ補正（VRモード）に加え、SPORTモードも備えておりスイッチ操作で切り替え可能。動きのめまぐるしい被写体の撮影や、流し撮りにも重宝します。

ナノクリスタルコートを施しているということで、逆光ぎみのシチュエーションでレリーズ。期待通りの、しっかりクリアーな描写ですね。画面左下のアウトフォーカスエリアでは、太陽を反射した点光源の玉ボケに口径食が見られますが、絞り開放ではマウント径からいっても致し方ないでしょう。それにしても白々とした朝の空気が画全面に行き渡っており、見ているだけで清々しい気持ちにさせてくれる写り。望遠ならではの圧縮効果も効いていますね。

なかなか自然なボケ味と立体感。なんてことは無い被写体ですが様になっている。描写力で存在感もぐっとアップするものですね。

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細かく見ていくと、距離によってはボケがうるさくなることもあるようですが、まずまずといったところでしょう。それよりもひときわ目を引くのが、フォーカスした髪の毛1本1本から、衣服の質感までもがきっちりと伝わってくる描写。肉眼では追いきれないようなレベルまで、相当緻密に捉えていることがわかります。

等倍で見ても花弁の輪郭までしっかりとトレース。色のにじみもありません。画面周辺の玉ボケが口径食で崩れてはいますが、画全体の雰囲気の中では違和感なく存在していると個人的には感じるのですが。なんといっても、きちんと見せたい主役がどれだけ引き立つように収められるのか、そこが大事だと思うのです。

サンヨンがここまで小さく軽くなったおかげで、振り回し放題です（笑）。手ブレ補正もビシビシ効くので、街撮りスナップもバシバシ決まります。

エイっとかなりの気合を入れなくとも、被写体を追い続けられるのは楽しいものです。AFの精度も高いので、ついついのめり込んでしまうという有様。色乗りもいいですね。

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明け方の砂浜で、潮風にゆらめく靄（もや）。絞り開放ながらも、なかなか巧く表現してくれました。そのヴェール越しにフォーカスした朝陽にほんのり染まる波打ち際。はかなくも妖艶な雰囲気が出ています。さすがは単焦点。画質面ではズームレンズよりも安定した描写をみせてくれるので使い出があります。いざという時にも確かな描写力で、眼前の光景をスパッと切り取ってくれる300mmを身軽に持ち出せることは、とにもかくにもありがたいことです。荷物は極力コンパクトに、でも画質には妥協したくないというという人には、かなり気になる存在。新しいサンヨンなら、ものにできるシーンがグンと広がるはず。期待が膨らみます。

( 2015.02.25 )