FUJIFILM X100F, Photo by Serow

御朱印をめぐる旅 Vol.6
埼玉県さいたま市
氷川神社

桜がひらく一週間は、この国に暮らす人なら誰もが心躍る季節です。花や虫たちのように、私たちもぼちぼち動き出す時かもしれません。今回めざすのは埼玉県さいたま市大宮にある氷川神社。東北新幹線の停車するターミナル駅として多くの人が行き交う大宮ですが、そもそもこの神社があるからこそ「大宮」という名で呼ばれているわけで、関東随一の由緒ある土地であります。参拝がてら街を歩いて、その歴史を辿る一日としましょう。(写真・文:Serow)

● 武蔵国一の宮
氷川神社は8世紀頃、聖武天皇の時代に武蔵国(主に現在の東京埼玉)一の宮に定められたとされています。その創立は第5代孝昭天皇の時代、なんと2400年以上の昔だというのですから驚きですが、神話の時代の話ゆえにどこまで本当かはわかりません。とはいえ、少なくとも飛鳥時代には権威ある社として存在していたのでしょう。東国では、鎌倉や江戸よりも旧くに栄えたエリアだと想像されます。

 

FUJIFILM X100F, Photo by Serow

きちんと参道を通るなら「さいたま新都心駅」が最寄りです。駅の出口はヨドバシカメラを目指せばOK。うっかりメモリーカードを忘れても、デジタルカメラを忘れても安心ですね。さて駅前の交通量の多い道路が江戸時代の五街道のひとつ、中山道なかせんどう。日本橋から秩父、群馬、長野を通って京都に向かう街道です。日本橋までの宿場町は残すところ浦和・蕨・板橋ということで、大宮まで来れば「日本橋はあと少し」という感じだったのでしょう。

 

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駅から中山道を北上すると、程なくして一の鳥居が目に入ってきます。ここをくぐれば氷川神社の表参道。住宅街の中にふと聖域が現れるのが不思議な感じですが、川魚のお店や団子屋など、宿場町を感じさせるものもちらほら見つかります。

 

FUJIFILM X100F, Photo by Serow

街の喧騒から少し離れて、2kmに及ぶ参道は地域住民の散歩道になっていました。お詣りに向かう人もあれば、犬を散歩する人もあり、ジョギングする人もあり、立ち話している人もあり。都市の真ん中にこうした空間があるのは良いですね。

 

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参道沿いには洒落たお店もちらほらと。かつての茶屋は、今はコーヒーショップです。

 

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参道の脇に小学校。こんな場所なら子供もすくすく育つでしょう。

 

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二の鳥居の近くに行列のできている煎餅屋さんがありました。このあたりでは一番古いお店になるのだとか。お土産にいくつか頂戴しましたがここに写っている「鬼棒」、さっくりとした棒状のおかきで絶品です。スマートフォンでは見つからない名店は歩いて見つけるしかありません。

 

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たっぷり歩いて、三の鳥居。まばらだった参道もいつの間にか人が増えてきました。とりたててエンターテインメントというわけでもない神社仏閣に人が集まるのはなぜだろうと、自分のことを差し置いて考えてしまいます。私たちはこうしたことを二千年も続けてきたのでしょうね。

● 氷川神社は出雲系?
神社にどんな神様が祀られているのか、気にかけてみると面白いことに気が付きます。氷川神社の御祭神は須佐男スサノオ命・稲田姫イナダヒメ命・大己貴オオナムチ命。日本神話のストーリー上、はじめスサノオは天を追放される荒くれ者ですが、出雲に降り立つとヤマタノオロチを退治してイナダヒメを妻とする英雄になります。その子孫がオオナムチ(オオクニヌシ)。なんやかんやあって天を治めるアマテラスに地上を治めるオオナムチが国を譲る、という形になるのですが、要するにこれはヤマト王権の日本列島支配を正当化するお話です。この地に昔から出雲の神を祀る社があるということは、はたして何を意味するのでしょう。

 

FUJIFILM X100F, Photo by Serow

昔に比べて敷地は小さくなったということですが、それでも境内は3万坪。神社があることで木々が残り、人々の憩いの場となるのなら、それだけでも意義があると言えましょう。神社を遊び場にして育った時代が懐かしいものです。

 

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神池、白鳥の池、ひょうたん池、蛇の池など、水の豊かな境内です。かつて大宮から川口に至る広大な範囲に「見沼」という沼があり、その名残りであるのだとか。見沼について調べてみると話は縄文時代の海岸線にまで辿り着きます。貝塚もあり、紀元前より人々がこの地に住んでいたのは間違いないことのようです。

 

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さすがに由緒ある神社、歴史を感じさせるものが幾重にも重なって、関心を刺激される一日となりました。たとえば1868年には明治天皇が氷川神社に行幸されたとのことで、総勢540名に及ぶ大行列の様子が絵巻に残っています。150年以上前の出来事が今なお語り継がれているというインパクト。現人神としての天皇が大宮を訪れるとき、街道沿いには人が押し寄せたといいます。当時それがどんな意味を持っていたのかは想像もできませんが、寺社仏閣をきっかけとして歴史を辿り、新しい視点が得られるのは面白いですね。教科書では語られないストーリーが、どの土地にも眠っているのですから。

 

今回の機材

FUJIFILM X100F

現行よりひとつ前のモデルですが、独特の柔らかな写りが気に入って使い続けています。お散歩スナップに最適なコンパクトさと、単焦点レンズならではの軽快さ。レンズ固定式もいいですね。

( 2022.04.21 )




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フォルムがシャープになり、画もぐっとモダンになった5世代目。フィルムシミュレーションも増えて、買い増ししたくなります。

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こちらはブラック。潔い出で立ちが魅力です。

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その名前は武蔵国が由来なのですね。神社境内には戦艦武蔵の碑があるのですが、氷川神社とのつながりは現地でお確かめください。

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伊勢と出雲という視点で見ると、このような見え方もあるのかと気付かされます。マニアックな本なので、本当に興味のある方へ。

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