PHOTO YODOBASHI

隔年開催最後のフォトキナ取材を終えて

1950年に初めて開催されたフォトキナ。以来68年間におよんで、2年に一度開催されてきました。隔年開催ということもあり、2年ごとのカメラシーンを占う世界最大の見本市として君臨してきました。みなさんお聞き及びの通り、来年からは毎年開催となり、早くも約半年後の5月には「フォトキナ2019」が開催されます。はじめて筆者がフォトキナを訪れたのは2012年。Nikon D600やSONY RX1などのカメラが色濃く印象に残った年でした。この節目に乗じて、少々取材後記と称して雑感を綴ってみたいと思います。

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「カメラ・レンズの写り」について

ニコンブースに飾られていたNikon Z7で撮影されたカットのプリント。これを見て驚きました。ここまで伸ばせば、フィルムならば、もはや粒子そのものが見えます!

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少し前のハイエンドデジタルでも、大伸ばしの場合(それにしてもこれは特大)、鑑賞距離に応じた処理を行ってプリントを行います。具体的にはシャープネスの処理が中心となります。これをみると、さほど極端なことは行っていないと思うのです。少し前とは2012年あたり。それ以前になると、粒子ならぬピクセルが見えていました(笑)

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もうすこし寄ってみましょう。解像度が足りない場合、シャープネスもかけられる限度があります。解像度が上がっても、シャープネスをかけると画が途端にガチガチになった時代もありました。そしてご覧のとおりです。もちろんこれだけの大伸ばしなので、プリントの際にそれ相応にシャープネスの処理は行うでしょう。不思議なもので、ここに至って、おかしな話ですがフィルムプリントの粒子を感じるような錯覚を覚えます。ここに2012年からの6年間の進歩を感じます。※変なことを書いてる自覚はありますよ

2012年当時といえば、いまよりもさらに「フルサイズ願望」的なものが、マーケットに渦巻いていました。まず「器」が満たされる必要があった頃です。そして2018年、たとえるなら器より中身といった感じに。キャプチャを行う根源的な性能はかなりのレベルとなり、むしろそこから生まれるパワーをいかにしてデリバリーするか、そんなところに来ているように感じます。ここでは超高画素のNikon Z7を用いての話ではありますが、たとえばAPS-Cあたり、マイクロフォーサーズ、1インチ、コンパクト、どのジャンルも同様に感じます。

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ターゲットへと向かっていくプロダクト群

この6年間で変わってきたことと言えば、製品群が整理集約され、かつ、ターゲットを絞り込んだ製品が目立ってきたと感じます。Nikon P1000などは、手のひらサイズとまではいかないにしても、ズームレバーを操作すれば一気に3000mmの別世界へ連れ出してくれます。GR IIIは、メーカー自身が作り上げた世界観をより深く突き進んでいます。全体ボリュームが整理集約されると少し寂しさを感じる気がしますが、多種多様な目的に対してプロダクトが深化し、それが多数存在する様は実に豊かなことだと感じます。

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未だ見ぬ潮流にいち早くこぎ出していたのはSIGMAかもしれません。当時多種多様なレンズラインアップを持ち、何を提供すべきか、そして求められているのかを再定義。3つのコンセプトラインを敷いてレンズの刷新を精力的に行ってきました。この起点になったのが2012年のフォトキナでの新コンセプト発表であり、今回の2018年に至っては、ほぼ大半のレンズを3つのコンセプトラインに載せ、刷新が完了した雰囲気です。

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融合から生まれる新しい楽しみ

HUAWEIがLEICAブースの隣に陣取り、P20 Proで撮影されたカットを多数展示していました。スマートフォンとカメラの垣根が霞み、いわば究極的にコンパクトで多機能なカメラと捉えられる仕上がりになっています。DJIのドローンは、その優れた安心の制御技術と、高度なジンバル制御を達成し、鳥の目という新たな視座をスチルの世界にも持ち込んでくれました。また2012年あたりから映像とスチルの垣根もさらになくなってきた印象です。興味を持てば、すぐさま試すことが出来るプロダクトが並んでいます。

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そして純血のデジタル時代へ突入。ここからが面白い!

キヤノン・ニコン・パナソニックが35mmフルサイズセンサーを搭載するミラーレスカメラを投入。キヤノン・ニコンについては、これまでの一眼レフにセンサーを搭載し、メーカーとして考えられることのおおよそをやり遂げたということなのでしょう。それを超えた世界を求めて、新たなシステムを構築しようとしています。パナソニックはマイクロフォーサーズでミラーレス市場を同フォーラムで切り開いてきた先駆者でありつつ、このシステム以上のニーズに応えるべく、35mmフルサイズの世界へ。なんと申し上げてよいか、2012年あたりに感じた興奮を覚えます。あの当時は「器」が雨後の竹の子のように生まれていたわけですが、2018年はちょっと様相が違います。ギヤが変わるといえば適当なのでしょうか。メーカー各社、目的を絞り込んで突き進む印象です。そして我々ユーザーは、目的に応じて深化したプロダクトをジャンルを問わず手にすることができます。いよいよ、ここからが面白いのかなと思います。どんな世界でも手段と目的が短絡化されれば、そこで際立つのは「なにをやりたいのか」ということです。何かやりたいことがある。そこに製品が、それも深く良質な製品が存在する。自分の取り組んでいることの隣には違う世界が広がっていて、足を踏み入れてみれば、やはりそこにも深く良質な製品があり、その世界に没入することを加速させてくれる。これはなかなかエキサイティングなことで、デジタルの世界は本当に成熟してきたなと感じる次第です。写真を撮りたいなと感じる。そして製品を見つめる。どのジャンルの製品も、深く深く新しい世界へ誘ってくれると思います。そんなことを感じた2018年のフォトキナでした。毎年開催となる2019年も、ぜひ訪れてみたいと思っています。

( 2018.09.30 )