富士フイルム プレスカンファレンス

さて最初のリポートは、フォトキナ2016の開幕前日、9月19日の夕方(現地時間)に行われた、富士フイルムのプレスカンファレンスの模様からお届けしましょう。このプレスカンファレンスでは、かねてから噂されていた中判デジタルカメラの発表がありました。その名も「GFX」。


いったいどんなスペックなのか?はやる気持ちを抑えて、まずはカンファレンス会場の様子から。やはり注目度はかなり高く、立ち見がたくさん出るほど。翌日から見られるブース展示と同じものをプレゼン会場の壇上に設置し、それだけでも富士フイルムの気合いが感じられます。プレゼン終了後は実機(まだ触れることは出来ませんでした)の周りに人だかりができていました。富士フイルム曰く、「GFXはGame Changing(これまでの勢力図を変える)なシステム」。その気概が伝わるプレゼンだったと思います。


ではそのプレゼンを簡単に。フィルムや印画紙などのアナログ感材や暗室用品から始まり、現在のデジタルカメラにまでつながる富士フイルムの歴史を紹介した後、有名な写真家、W. Eugene Smith氏の「世界は35mm判カメラに収まりきらない」という言葉を紹介しました。これはカメラメーカーらしい、なかなか洒落た、そして知的な演出です。つまり「世界はフルサイズに収まりきらない」というわけ。そこから35mm以外のフォーマットもカバーする必要性、新機種中判ミラーレスデジタルカメラシステムGFXのリリース話へとつながる。現行のXシステムと新しいGFXは、富士フイルムからの2つの解答。GFXは究極の画質のため。Xは写真を撮る喜びのため。


さらにGFXのムービーによる紹介が続きます。センサー、ボディ、光学デザイン、電気回路、ファームウェア、レンズ、絵作り。さらに各担当者の役割を、彼らの意気込みや誇りを感じさせるポートレートとともに紹介。実機デモンストレーションでは、垂直ティルト背面液晶やボディと一体感のあるデザインの脱着式EVF(この2点には会場から大きな拍手)、中判としては小型軽量ボディ、静かなシャッター音、撮影設定を瞬時に判別できるX-T2の操作系などを伝えていました。


さて、いよいよスペックを見てみましょう。今回発表されたボディの正式名称は「FUJIFILM GFX 50S」。まずセンサーは35mmフルサイズイメージセンサーの約1.7倍の中判サイズ(43.8mm×32.9mm) の大型で、有効画素数は5140万画素。「FUJIFILM G フォーマット」と名付けられています。大サイズCMOSセンサーならではの解像力で、質感や立体感、空気感を高いレベルで描写可能。新設計のフォーカルプレンシャッターは最速1/4000sec。ボディ重量は1kgを切ります。操作系は「Xシリーズ」で好評の操作ボタン・ダイヤル類を搭載。発売は平成29年春を予定。


一方、レンズは専用のGマウント「フジノンGFレンズ」6本を開発し、まずは標準単焦点、広角標準ズーム、中望遠ハーフマクロの3本をボディと同時に発売、残り3本も順次発売予定となっています。フランジバックの短いミラーレスシステムのメリットを活かし、バックフォーカスを可能な限り短縮。周辺光量の低下を防ぎ、画面のすみずみまで精細な描写を実現します。

  1. 標準単焦点レンズ「GF63mmF2.8 R WR」(35mm判換算 50mm相当)
  2. 広角標準ズームレンズ「GF32-64mmF4 R LM WR」(35mm判換算 25-51mm相当)
  3. 中望遠ハーフマクロレンズ「GF120mmF4 Macro R LM OIS WR」(35mm判換算 95mm相当)
  4. 大口径中望遠レンズ「GF110mmF2 R LM WR」(35mm判換算 87mm相当)
  5. 超広角レンズ「GF23mmF4 R LM WR」(35mm判換算 18mm相当)
  6. 広角レンズ「GF45mmF4 R WR」(35mm判換算 35mm相当)

一番気になる価格ですが、現時点では「標準レンズ、着脱式EVF込みで10,000ドル(約102万円)よりもはるかに安くする予定」とのこと。


今まで少しずつ盛り上がって来た「中判デジタル」の市場が、これで一気に加速していくことは、もう火を見るよりも明らか。「カメラは作品を撮るための道具である」というのが富士フイルムの理念。つまりこれは、床の間に飾って愛でるようなカメラではすでにないということ。「道具」というのは、使用者の意のままに、長い期間にわたって、最高の結果を提供するもののことを言います。これはかなり期待していいと思いますよ。

( 2016.09.20 )