SIGMA fp, 45mm F2.8 DG DN | Contemporary, Photo by A.Inden

SIGMA fp | SHOOTING REPORT

シグマから新しいコンセプトのデジタルカメラが登場しました。その名は「fp」。フルサイズセンサーを搭載するカメラとしては世界最小(幅112.6 × 高さ69.9 × 奥行き45.3 mm)・最軽量(422g)となるコンパクトなボディ。スクエアで機能的なデザインは、これまでのシグマの製品に通じる洗練された印象を持っています。最近のデジタルカメラは、写真撮影に加えて動画撮影にも力を入れた製品が増えていますが、fpではそれをさらに一歩推し進め、静止画と動画どちらにも最適化させたカメラを最小限のカタチにまとめてきたという印象です。実際に軍艦部のメインスイッチ横にはSTILL(静止画)とCINE(動画)を切り替える大きなスイッチがあり、シャッターボタンの横に大きなREC(録画)ボタンも配置されていますから、写真撮影を行うのと同じ感覚で動画撮影を行うことが可能です。またfpでは、より本格的な動画撮影を目的とする方にも応えるべく、センサーにはヒートシンクを設けて撮影時の発熱を抑えて長時間撮影の安定性を高めたり、様々な周辺機器をマウントするリグを組みやすいボディ形状とするなど動画撮影にも配慮された設計が随所に見受けられます。今回の実写レビューでは、動画を交えつつもまずは写真機としての楽しみ方を中心に探っていきたいと思います。

簡単にスペックについても頭に入れておきましょう。センサーはシグマでは初となる、オーソドックスなベイヤー配列(Foveonではない)の24MPのフルサイズCMOSセンサーを搭載。裏面照射型で高感度にも強くなっています。シャッターはメカニカルなものを廃し、電子シャッターのみとすることでコンパクト化にも貢献しました。また電子ビューファインダー(EVF)は持たず固定式の背面液晶のみとなります。Lマウントアライアンスに加わるシグマとしては初のライカLマウントを採用したボディとなり、純正レンズのほかライカSL向けレンズやパナソニックのLマウントレンズも使用できるなど、いろいろ楽しめるボディに仕上がっているのではないかと思います。

( Photography : A.Inden / Text : Naz )

SIGMA fp, 35mm F1.2 DG DN | Art, Photo by A.Inden

SIGMA fp, 45mm F2.8 DG DN | Contemporary, Photo by A.Inden

CINE / STILL

軍艦部に配されたCINE/STILLのスイッチ。fpはこのスイッチだけで動画と静止画を自由に行き来することができます。CINE(動画)では動画RAWデータ記録に対応し、最大4K UHD/24fpsでの収録が可能。STILL(静止画)は35mmフルサイズ、2460万画素。さらに液晶表示も動画・静止画それぞれに最適化された表示が用意されており、本格的な動画撮影にも対応しています。1枚目の作例はカラーモード「シネマ」、画像縦横比16:9で動画を撮影中、映画の1シーンを残すよう、静止画に切り替えて撮影したものです。普段デジタルカメラではほとんど動画を撮らないのですが、fpのようにスイッチひとつで簡単に動画モードと静止画モードを切り替えることができると、まるでスマートフォンで撮影するときのように、直感的で自然に好みのスタイルで撮影していました。この自由さを手に入れるためにボディサイズをコンパクトにまとめる必要性があったのはないかと想像させます。


SIGMA fp, 45mm F2.8 DG DN | Contemporary, Photo by A.Inden

SIGMA fp, 35mm F1.2 DG DN | Art, Photo by A.Inden

SIGMA fp, 45mm F2.8 DG DN | Contemporary, Photo by A.Inden

SIGMA fp, 45mm F2.8 DG DN | Contemporary, Photo by A.Inden

高感度

高感度が不自由なく使えるということは、これまでのシグマのカメラを使ってきた方なら意外に感じるのではないでしょうか。ISO感度の設定から解放されるために、今回は普段はあまり使わないISOオートで撮影を行ってみました。夜のスナップでISO感度をまったく確認しないまま撮影してみましたが、使用したレンズの開放F値がF1.2やF2.8と明るかったこともあり、思っていたほど高感度で撮影されていませんでした。上の4枚の作例は感度が上がっていく順番に並べてみましたが、ISO 6400でシャドー部に若干ノイズが出るかなという程度で、感度が上がることによる描写の違いを感じさせない、期待以上に優秀なものでした。


SIGMA fp, 35mm F1.2 DG DN | Art, Photo by A.Inden

SIGMA fp, 45mm F2.8 DG DN | Contemporary, Photo by A.Inden

SIGMA fp, RUSSAR 20mm F5.6, Photo by A.Inden

スナップシューティング

コンパクトで取り回しのいいボディは、スナップシューティングの機動性を高めてくれる印象です。小さいながらもスクエアなボディは両手でのホールドもしやすく、シャッターボタンのダイヤルと背面のダイヤルを組み合わせて露出のコントロールも直感的に行えました。35mm F1.2のような大きなレンズを使う際には、オプションで用意されたグリップを組み合わせると、コンパクトさをさほど犠牲にしないでホールディング性を高められますから、手ブレ低減にも役立ちそうです。AFはコントラスト検出方式を採用し、白い壁のような被写体では少し迷うこともありましたが、合焦スピードは十分速く、街中のスナップシューティングでもストレスなく撮影を行えます。最後のウォータースライダーのカットでは18コマ/秒の連写とコンティニュアスAF(AF-C)を組み合わせて撮影。ピントを外すことなくしっかりと被写体を捉えてくれました。


SIGMA fp, 45mm F2.8 DG DN | Contemporary, Photo by A.Inden

マウントアダプター

ライカスクリューマウントからMマウントへ変換するマウントアダプターとライカMマウントからライカLマウントへ変換するマウントアダプターを重ねてLomography New Russar+ 20mm F5.6で撮影をしてみました。F16まで絞りましたが、周辺減光も周辺のマゼンタ被りもなく、すっきりとクリアーに描写されています。念のため書いておきますが、沈銅式のレンズや対称型の広角レンズなど後ろ玉が出ているレンズを取り付けるときは、センサーに当たらないよう十分に気をつけてください。ライカMマウントのSuper-Angulon 21mm F3.4や初期型のElmarit 28mm F2.8なども着けてみたかったのですが、センサーに当たってしまいそうなのでやめました。(みなさま、くれぐれも自己責任の上でよろしくお願いいたします)


SIGMA fp, 45mm F2.8 DG DN | Contemporary, Photo by A.Inden

発色とコントラストは、色の濁りもなく、黒が締まった感じに見受けられます。組み合わせた45mm F2.8のレンズの写りもたいへん素晴らしいものでしたが、スタンダードな設定で撮影しても期待以上の結果が得られたように思います。

SIGMA fp, 45mm F2.8 DG DN | Contemporary, Photo by A.Inden

トーンカーブを使いコントラストが低い描写にしてみました。他のカメラでも同様の設定は存在しますが、fpでは背面下部に専用に配置されたTONEボタンからトーンカーブをオート/マニュアルで設定できるところが新しいですね。加えてアスペクト比を16:9へ。普段は3:2や4:3の写真を撮ることが多いせいか、16:9のアスペクト比で撮る写真が新鮮に感じられます。

SIGMA fp, 35mm F1.2 DG DN | Art, Photo by A.Inden

背面下部のCOLORボタン。こちらも専用に配置され、設定可能なカラーモードは12種類。このカットでは「VIVID」を選択し色を鮮やかにしています。AFが迷いそうな被写体ではありましたが、タッチパネルで指定した赤い花にしっかりと合焦してくれました。ミラーレスカメラ専用設計の35mm F1.2の開放らしい神秘的な雰囲気を演出できました。


PHOTO YODOBASHI


コンパクトなボディに秘められた、広がる楽しさ

いかがでしょうか。メカシャッターやEVFを省略してはいますが、フルサイズセンサーを搭載した写真機としては非常にコンパクトに仕上がりました。もちろん初めてのフルサイズ機としてもおすすめなのですが、既にフルサイズ機で撮影を楽しんでいる方に特におすすめしたいカメラです。昨今のカメラは非常に多機能となり、使いこなすのも大変なほどですが、仕様を割り切ることでハンドリングのいいボディとなったfpは振り回す楽しさを持っています。ガッツリ撮影したい時にも期待に応えてくれるスペックや画質を持ちながら、もっと気軽に持ち出せる軽快さ、2台目の「遊ぶカメラ」としてもぴったりじゃないでしょうか。また、レビューの中でも触れた通り、静止画から動画への切り替えが明快で、スマートフォンで動画を撮影するのと変わらない気軽さでハイクオリティな動画の世界へ足を踏み入れることができます。もちろん、映画のような本格的な動画撮影を行いたくなっても、リグを組んだりジンバルに載せたりしやすいスクエアな形状とコンパクトなボディは「動画撮影は機材が大変」という印象をずいぶんと軽減してくれる気がします。

これまでのシグマのデジタルカメラは、Foveonセンサーならではの圧倒的な画質を得られるかわりに、動作が重いところや高感度撮影が難しいところなど扱いにくさもありました。fpではそのあたりがいい意味で「普通のカメラ」になり、直感的に扱える高い操作性も相まってフレンドリーなボディとなりました。その点では使う人を選ばない楽しいカメラに仕上がっています。TONEやCOLOR、そしてアスペクト比をあれこれ設定しながら写真撮影を楽しむもよし、そこから動画撮影へ踏み込んでみるもよし、手のひらに収まる小さなカメラから繫がった先にあるものは『撮影の楽しさと広がり』ではないでしょうか。ひとつ付け加えるとすれば、撮影が楽しくてバッテリーは消費しがちですので、ぜひスペアをポケットに忍ばせて、フィールドへ勢いよく飛び出してみてください。

( 2019.11.05 )

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Foveonではないベイヤー配列のフルサイズセンサーを搭載したシグマfp。静止画・動画にといろいろ遊べるカメラに仕上がっています。どうぞ思いっきり楽しんでみてください。

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キットレンズとしても販売される「45mm F2.8 DG DN | Contemporary」はとても素晴らしい写り。fpの背面液晶を通してもそのよさが伝わってきます。サイズもfpとぴったりとなりますので、ボディ購入の際はぜひレンズも一緒にお買い求めください。

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コンパクトなハンドグリップ。カメラのホールディング性が向上します。取り付けには側面の三脚穴を使用します。

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より大きなグリップもご用意しました。大口径レンズを使う方はこちらもお忘れなく。

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fpではdp Quattroと同じバッテリー「BP-51」を採用。バッテリーの消費はやや高めとなります。お値段も手頃ですからスペアバッテリーは複数個持っておきましょう。

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dp Quattroに用意されていたビューファインダーがfp用にも登場。液晶が寄り高精細になりましたら、見えもこれまで以上です。風景撮影などじっくりと被写体と向き合う方に。

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