SIGMA 10mm F2.8 EX DC FISHEYE HSM

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率  
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ

ズームであれ短焦点であれ、このようなレビューを書かせていただく際には、歪曲収差が大きい小さい、出る出ないなどと、画面の四辺の端っこをつつくようなチェックをするのが常なのですが、こちらは歪んでなんぼの魚眼レンズ。定規をモニタにあてる手間（超アナログですよね）が省けて助かりますという話しはさておき、強烈なデフォルメ効果であっと驚かせてくれるレンズですが、絞り開放から十分なシャープさが得られ、さらに絞ればよりシャープさに磨きがかかるという印象。色乗りやコントラストも良好で、ボケ味にも硬さはなく、フォーカス部をすんなりと引き立ててくれます。最短撮影距離13.5cmギリギリまで近づくもよし、引いて風景を丸呑みするもよし。実際にレンズを向けながら動いてみると、頭の中でイメージしていたのとは異なる魚眼ワールドの出現に、思わずハッとさせられることもしばしば。ファインダーを覗いているそばから刺激的なレンズですので、ぜひそのワクカク感を味わってみてください。

( Photography : M.Ito / Text : KIMURAX )

左右奥にとずらりと並んだ提燈を1発で写し込む。魚眼レンズの本領発揮。強烈なディストーションで見る者を圧倒するレンズですが、画面央部を通るラインは、その影響をほとんど受けません。歪んだ世界に直線をすっと通したことで、緊張感のあるアクセントになっています。

目が合ってしまったので、そっと抱きかかえるような気持ちでパシャリ。HSM（Hyper Sonic Motor）によるAFはとても静かなので、驚かせずにフォーカスできるのはいいですよね。

ギミックフルなレンズですが、色乗りやコントラストはしっかりしています。硬いボケ味だったらかなり騒々しくなりそうな背景ですが、ピントピークをしっかりと際立たせる素直な傾向です。

本当は、すり鉢状の雛壇になっている場所です。その底辺となる中心部を画面上部に配置すると凹んでいるはずの所が、歪曲効果でこの様に盛り上がって描写されます。「エッシャーのだまし絵」の実写版さながらの不思議な世界のできあがりです。想像力をたくましく被写体探しをしていくと、ハッとするような画をものにできるかも知れませんよ。