PHOTO YODOBASHI

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PENTAX K-1 / SHOOTING REPORT

待たされた。もう出ないのだろうと思っていた。

多くのペンタックスユーザの祈りと願いが、ようやく通じた2016年4月。ここまで待たされると製品化されたこと自体が奇跡のように思えてしまい、ボディを手にしているのに「これって本物?」などという妙な不安が胸に生まれてしまう。でもそう、これは現実のできごと。PENTAX Kマウント待望のフルサイズ対応ボディがいよいよ生まれたのである。ああこれでFAリミテッドレンズのほんとうの描写が見られる。★レンズが甦る。名機LXを、ようやく防湿庫にしまえる。

フルサイズセンサーを搭載してくれるだけでもよかったのに、K-1には機能とアイデアがてんこもりだ。細かいことを紹介しているとキリがないほどなので、大事なことから見ていこう。やはり高解像度センサーの画、そしてリアル・レゾリューション・システムである。

( Photography : Z II & Serow / Text : Serow )

PENTAX K-1, HD PENTAX-D 24-70mm F2.8ED SDM WR, 1/250, F8, ISO 100, Photo by Serow

高解像度のフルサイズセンサーがもたらすもの

まず3640万画素という高解像度のCMOSセンサーは、後発ということもあってよくチューニングされている。レンズが受け止めた光をシャープに描いてくれるし、JPEGの色合いも実に気持ちがいい。ひとつひとつのピクセルが積み重なって生まれるトーンは濃密。手にするまでは「こんなにセンサー細かくなくていいのに」なんて思いながらも、手にしてみれば恩恵を享受するのだから人は現金なものだ。それに高画素のボディになると少々神経を使って撮らないといけないものなのに、優秀な手ぶれ補正機構の助けもあってか、ふつうに使えてしまえる。実にすごいことだと思う。

そんな高画素を極限まで活かしてしまおうというのがリアル・レゾリューション・システム。K-3 IIで搭載されたしくみで、要するに4回露光したデータから1枚の写真をつくることで、解像力を飛躍的に高めた画を生み出すことができる。これをフルサイズ3640万画素センサーでやったらどうなるのだろう。縮小してはその実際が伝わらないので、100%の切り抜きで比較してみよう。

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いやはや凄まじい。これはもう、中判を思わせる解像力である。パソコンのモニタで等倍で眺める感覚は、それこそ中判や大判のフイルムで撮った写真を引き伸ばしたプリントのよう。家に帰ってからじっくりと眺めて、肉眼では認識していなかったものを発見するという楽しみを、にわかに思い出してしまった。ここまで写ると、あらゆる風景をこのカメラで、リアル・レゾリューションを使って撮っておきたくなる。

※違いがよくわからないかもしれないので、実際のデータもどうぞ。何も手を加えていない、K-1が出力したナマのJPEGデータです。(動体補正モード利用)

PENTAX K-1, HD PENTAX-D 24-70mm F2.8ED SDM WR, 1/160, F5.6, ISO 100, Photo by Serow

とはいえその撮影も、中判や大判のようなテンポ。基本的には三脚を据え、シャッターはタイマーかリモートレリーズを使って、極力ブレを起こさないように撮る必要がある。そしていかにカメラを固定しようとも被写体が動く。風に揺れる草木は特に難しく、コンディションによっては素直に通常撮影をしたほうがよかったりする。

いっそ4x5のフィールドカメラで撮影するものだと思って、じっくりと1枚1枚の写真に取り組むのがいい。大判の撮影でふらふらとスナップすることはあまりなく、何を被写体にするかを決めることがスタートだ。旅先のランドマークでもいいし、きちんと写真に残しておきたい近所の風景でもいい。その場所に行って三脚を据え、画面の隅々まで神経を使いながら構図を決める。こういうシーンでK-1のフレキシブルチルト式液晶モニターとライブビューは便利だ。実際に撮影して露出を追い込むこともできるのだから、思う存分試写をしてみればいい。構図や露出を決めたなら、いよいよリアル・レゾリューションをオンにする。奇をてらわず絵葉書のような1枚を撮りたいが、やってみようと思うとこれがなかなか難しいものだ。

PENTAX K-1, HD PENTAX-D 24-70mm F2.8ED SDM WR, 1/650, F5.6, ISO 100, Photo by Serow


PENTAX K-1, HD PENTAX-D 24-70mm F2.8ED SDM WR, 1/80, F2.8, ISO 100, Photo by Z II

アクティブに使って感じる、考えぬかれたボディ

さて素直なインプレッションにもどろう。ボディの質感は高く、過酷なフィールドに対応するスパルタンな雰囲気はペンタックスKの頂点に相応しい。各種可動部、ダイヤル類などもカッチリとしていて好感触だ。これまでペンタックスデジタルボディを使ってきた方なら少し大きく感じるかもしれないが、フルサイズデジタル機としては決して大きいものではなく、よく機能を凝縮したと感心してしまう。角ばったペンタ部はペンタプリズム、すなわち光学ファインダーが搭載された証。そう、これは一眼レフなのだ。APS-Cの視野に慣れたペンタックスユーザーは、きっとK-1のファインダーの広さに幸福を感じるだろう。やっぱり光学ファインダーは見ていて気持ちがいい。

PENTAX K-1, HD PENTAX-D 24-70mm F2.8ED SDM WR, 1/2000, F2.8, ISO 100, Photo by Z II

風の強い砂浜はカメラには厄介なシチュエーションだけれど、K-1なら臆する必要はない。稼働する背面液晶は三脚撮影ばかりでなく、ローアングルやハイアングルで便利。そしてまた、身体から離れてカメラを構えるときにはモニター内の水準器表示が役に立つ。砂の一粒一粒が感じられる緻密な描写は見事だ。

PENTAX K-1, HD PENTAX-D 24-70mm F2.8ED SDM WR, 1/1000, F4.5, ISO 100, Photo by Z II

リアル・レゾリューションでなくとも、解像力はトップレベルである。この画を素直に楽しみたい。本レビューはすべてK-1のJPEGを利用しているが、ほとんどの場面で「そのまま使える画」を生み出してくれるように思う。新開発の画像処理エンジン、PRIME IVの力だろう。

PENTAX K-1, HD PENTAX-D 24-70mm F2.8ED SDM WR, 1/320, F2.8, ISO 400, Photo by Z II

光の捉えかた、背景のグリーン、シャドー部のトーンなど、なんともいい具合ではないか。撮影時のセッティング調節には、軍艦部に搭載されたスマートファンクションダイヤルが優秀で、ISO感度や露出補正はもちろん、ブラケットやHDR、Wi-Fiのオンオフまで手軽に変更できる。沢山の機能を搭載するデジタルボディであればこそ、このようなUIの進化はありがたい。

PENTAX K-1, HD PENTAX-D 24-70mm F2.8ED SDM WR, 1/125, F3.5, ISO 200, Photo by Serow

使っていて特に足りないところを感じないのは、積み重ねてきたボディ開発の結果だろう。素直に被写体に対峙して、フルサイズの写りを味わう。まずはそれでいいと思う。豊富な機能やカスタムに手を出すのは、ゆっくり時間をかけていけばいい。

PENTAX K-1, HD PENTAX-D 24-70mm F2.8ED SDM WR, 1/200, F4, ISO 1600, Photo by Z II

ISO 204800という高感度に対応するだけあって、少々の感度なら画質の低下は気にならない。感度を上げてシャッタースピードを稼ぎ、手持ちでリアル・レゾリューション撮影をするなんていうのも一つの方法だろう。いまひとつ調子の上がらないスワローズの応援席に立ちながら、ペンタックスはプロ野球チームに例えるとどこだろうなんて考えた。なんとなく、巨人や阪神ではないと思う。


PENTAX K-1, HD PENTAX-D 24-70mm F2.8ED SDM WR, 1/640, F2.8, ISO 100, Photo by Z II

夢のつづきは、写真撮影のフィールドで

生粋のペンタキシアンの方なら、レビューを見ずとも既にK-1を手にされていることだろう。きっと予想の上を行く仕上がりに驚き、あらためて写真を楽しんでいるに違いない。D FAレンズを使い込んでいるかもしれないし、防湿庫に転がっているオールドレンズが息を吹き返しているかもしれない。フルサイズで撮れるということ、それだけで心はときめくのに、待たせただけの製品をメーカーは用意してくれた。本レビューでは到底紹介しきれない機能の数々や細かな使い勝手など、随所に開発者の想いやアイデアが詰まっている。

純粋にフルサイズ機としての魅力も大きい。堅牢なボディは風景撮影などフィールドに出て撮影する方に好まれるだろうし、この解像力・画質を得られるフラッグシップモデルとしては極めてコストパフォーマンスが高い。リアル・レゾリューション・システムはもちろんのこと、天体追尾撮影を可能にしたアストロトレーサーなど、ペンタックスシステムに踏み込んでみたくなる理由は色々とあるはずだ。ペンタキシアンだけが享受できる喜びとするには、あまりに勿体ないカメラではないだろうか。

粘り強く開発を続けた人々と、粘り強く待ち続けた人々の、夢の結晶。
この熱のこもったカメラを、しっかりと受け止めよう。K-1の登場は、誰もが祝福すべき出来事なのである。

( 2016.06.02 )

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ついに登場。思う存分この幸福を味わってください。次なる夢はバケペンDでしょうか。木製グリップ付きでお願いします。

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本レビューで使用した大口径ズームレンズ。これ1本あれば、ひとまず安心と言えましょう。

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ぐっとフラッグシップらしくなって素敵です。縦位置撮影が安定し、バッテリーも安心。

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バッテリーの持ちはかなり良いのですが、本気で使うには替えも用意しておきましょう。

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リモート操作でレリーズできます。リアル・レゾリューションに便利ですし、天体を狙ったバルブ撮影にも必携ですね。

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比較的コンパクトに持ち運べるアルミ三脚。K-1を活かすための三脚選びも重要です。

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