PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

PENTAX 645Z, D FA645 55mm F2.8 AL [IF] SDM AW, 1/ 160, F2.8, ISO 200, Photo by Z II

PENTAX 645Z / SHOOTING REPORT

中判デジタルといえばウン百万円が当たり前という世界だったわけですが、そこに百万円を切る645Dをペンタックスが世に送り出したのが2010年のこと。フィルムの時代からカメラをいじっていた側からすれば、35mmフルサイズの次は中判、そして大判へという夢の途中だったわけで。筆者にとっても中判という言葉には、夢への第一歩的な響きがあっただけに645Dの誕生はセンセーショナルでした。予算的に俄然現実味が出たことによりプロの方はもとより、ハイアマチュアの方々もこぞって手にされたことと想います。それから4年の歳月を経て、いよいよ645Zがリリースされました。センサーを刷新し有効画素数は約5140万画素。先代の4000万画素からドーンと積み増してきました。デジタルカメラにおける高画素化は、コンパクトから35mmフルサイズにおいても目を見張るものがあり、いよいよ中判デジタルにもその波が押し寄せてきたということでしょうか。まあ、画素数もやたらと欲張ればいいというものではなく、センサーサイズとのバランスが大切。こちらは大型センサーですから、いよいよここまで来たかというスペックです。もちろん解像度や階調表現などのベストバランスが図られていることは言わずもがなでしょう。ではその辺りも含め、作例カットを交えながら実際の使用感などもお伝えしていきます。

( Photography : A.Inden & Z II / Text : KIMURAX )

PENTAX 645Z, D FA645 55mm F2.8 AL [IF] SDM AW, 1/1000, F5.6, ISO 100, Photo by A.Inden

緻密さに磨きがかかった解像力。画のリアリティに思わず引き込まれる

フルサイズを撮り慣れている人間から見ても、645Zの吐き出す画にはゾクゾクさせられることでしょう。元画像を見ても圧倒的な解像力と豊かなダイナミックレンジ。こちらの作例カットでいえば、葉の輪郭を目に染みるほどにくっきりと描ききり、シャドーの連なりは空間の奥行きすら感じさせます。PCでデータ確認しつつ、溜息というより気がつけば口元は半開きで、声なき音すら出ていませんでした(笑)。もうとにかくすごい情報量ですから、RAW現像の時に色々いじっても、ちょっとやそっとじゃトーンジャンプが起きないわけです。そしてデフォーカスからすっと立ち上がる、ローパスフィルターレスの先鋭な描写。その立体感にすーっと吸い込まれそうになる不思議な感覚は、目に疲れを覚えるような3D画像とは異なる心地よさを覚えます。目の前の光景をごっそりと持ち帰る大型センサーの力技に加え、ディテールをも丁寧に捉えきる解像力に呆れるばかりです。

PENTAX 645Z, D FA645 55mm F2.8 AL [IF] SDM AW, 1/160, F11, ISO 100, Photo by A.Inden

いまなお火山活動が続いている箱根大涌谷での1コマです。色、形状など実に殺伐とした地表。ベールのように立ち上る白煙。硫黄臭がプンプンしてきそうですよね。画像をクリックすると等倍表示されますので、どうぞ…。いや~5140万画素ですからね、等倍で見ることで、改めてその描き込みの恐ろしさをまざまざと思い知らされるわけです。細かい石からすすけて変色してしまった岩まで、どれもこれも表情豊かにあるがままの姿を繊細に描き込んでいるではありませんか。ここまで見えすぎてしまうと、キレイなシチュエーションではまったくありませんが、白い"ベール感"よく出ていますよね。
※等倍画像はこちらからご覧いただけます(約42MB)

PENTAX 645Z, D FA645 55mm F2.8 AL [IF] SDM AW, 1/5, F22, ISO 100, Photo by A.Inden

砂利と波。ちょうど静と動の関係になっていますね。その境界に存在し、出来ては一瞬で消え行く細かな泡までしっかりと捉えています。ついつい手前の砂利のリアリティに目が行ってしまうのですが、海面の隆起もよく出ているのには驚かされます。


PENTAX 645Z, D FA645 55mm F2.8 AL [IF] SDM AW, 1/1600, F2.8, ISO 100, Photo by A.Inden

ただの草原も、645Zでフレームされるとただならぬ雰囲気を醸し出します。草の発するムッとした湿気までもが伝わってくる描写。なんだか奥へ奥へと誘い込まれているかのように感じるのは私だけでしょうか。

PENTAX 645Z, D FA645 55mm F2.8 AL [IF] SDM AW, 1/125, F2.8, ISO 400, Photo by Naz

大型センサーならではのボケ量ですね。35mmフルサイズでもボケを狙おうと思えば、F値の明るいレンズが豊富にあるわけで引けをとることはないでしょう。ただ、F1.4とか1.2のレンズで開放して撮ったら、このように隅々まで乱れなくクリアな画になるのかと考えると、ちょっと厳しいかなと思うわけです。フルサイズ機も高画素化とともに大変素晴らしい描写を見せてくれるようになりましたが、どうやらセンサーサイズの壁はこんな所にもあるようで。より次元の高い描写を求めるのなら中判へという流れに、揺るぎは微塵も感じられません。

PENTAX 645Z, D FA645 55mm F2.8 AL [IF] SDM AW, 1/125, F2.8, ISO 100, Photo by A.Inden

露出を目いっぱいマイナスに振りましたが、シャドーが簡単に潰れるようなことはありませんでした。盛り上がる葉脈、そして葉自体の輪郭が浮き彫りとなっています。このような天候での屋外でも使用できる防塵・防滴構造しかも耐寒仕様とは抜かりがありません。

PENTAX 645Z, D FA645 55mm F2.8 AL [IF] SDM AW, 1/250, F2.8, ISO 200, Photo by A.Inden

それなりの距離はありますが道着の質感までしっかりと捉えています。もっと判りやすいのが、頭上に位置する天井の木目の精細さでしょう。そして日本家屋には似つかわしい、しっとりとした陰影が見事なまでに表現されており、肉眼で見たとき以上にクリアな像として刻まれています。視野率約98%の光学ファインダーは視界良好。こちらのカットはMFにて撮影していますが、ピントの山もつかみやすく「ファインダーの隅までピント合わせが出来る機材に、久々に会った気がする」と古参のPY編集部員が鼻息荒く申しておりました(笑)。

PENTAX 645Z, D FA645 55mm F2.8 AL [IF] SDM AW, 1/500, F2.8, ISO 3200, Photo by 4beats

満を持してのセカンドモデル。使い勝手にも小気味よさをプラス

先代の最高ISO感度1600に対し、こちらは204800。ん?ケタが違うんじゃないというくらいに超々高感度撮影に対応するようになりました。CCDセンサーからCMOSセンサーに置き換わったことで、高感度に振れることは大いなるアドバンテージです。上のカットはISO感度3200。光がまだ貧弱になりきる前の夕暮れ時ですが、ノイズ感はほとんどないといえる仕上がりです。うんと拡大すればそれなりに確認できますが、通常サイズであればほとんど気にならないようなレベル。肌の質感やスーパーボールのツヤ感もバッチリ出ていますから恐れ入ります。いろいろ試してみましたが6400から12800にかけてノイズは増えてくるものの、こちらもやはり等倍で見なければあまり分からないという印象でした。画素数がアップしたことでより手ブレにも敏感になったので、シャッタースピードが稼げるのはありがたいことです。AFに関しては、中判ですからそれなりに大きいレンズを駆動させるわけです。俊敏なAFを求めるのは少々酷なことでもありますが、多少の動きがある被写体にもすんなりとフォーカスしてくれました。また、連写速度は1.1コマ/秒だったものが3コマ/秒に。驚くようなスペックではありませんが、中判の用途を考えれば十分かと思います。ここら辺は新しい画像処理エンジン「PRIME III」が特に効いているのでしょう。連写の際に気づいたのはミラーショックが意外と少ないことでした。フルサイズよりミラーサイズが大きいのですから、それなりのものを覚悟していたので少々肩透かしでしたが、こういった細部に至るまで対策が講じられているのだろうと窺い知れます。

PENTAX 645Z, D FA645 55mm F2.8 AL [IF] SDM AW, 1/500, F2.8, ISO 100, Photo by Z II

前後ともに品のあるボケ味は、大型センサーならではのボリューム感がたっぷり。そこからくっきりと浮かび上がるみずみずしい花々の鮮明さに、思わず手を伸ばしてしまいそうになりました。

PENTAX 645Z, D FA645 55mm F2.8 AL [IF] SDM AW, 1/200, F2.8, ISO 400, Photo by A.Inden

ちょっと低い場所でしたので、上下にチルトできる3.2型液晶モニターのライブビューにて確認しながの撮影。約103.7万ドットですから視認性はバッチリ。少しかがめば構えられなくも無かったのですが、もたもたしているうちに起こしちゃ悪いですしね。かがまずにチルト機構を活用し、両腕を下げた状態で構えました。今どきのミラーレス一眼みたいな使い方、案外便利です。わざわざ変わったアングルで狙うという時に限らず、中途半端な姿勢で不安定になりそうな時にもぜひ活用したいところです。ライブビューではピントの拡大も可能。小さな被写体になればなるほど、ピントの置き場所が重要になってきますのでこれは重宝します。お陰で気持ちよさそうな寝顔を、すっきりとクリアにしたためることができました。

PENTAX 645Z, D FA645 55mm F2.8 AL [IF] SDM AW, 1/500, F8, ISO 100, Photo by A.Inden

変化に富んだ表情の空ではありませんが、青い空にも実に様々な青があるわけです。その変化を忠実に再現するために、流麗な諧調で表現していることがよくわかります。そんなブルーバックがあるだけで、なにげない光景を捉えた1枚なのに、なんだか特別な雰囲気がしてくるからホント不思議です。

PENTAX 645Z, D FA645 55mm F2.8 AL [IF] SDM AW, 1/320, F8, ISO 100, Photo by A.Inden

もうここまで作例カットを見てくると、ディテールがちゃんと見えているのが当たり前。誤魔化すことなく隅々まで写り込んでいるのが当たり前という感覚になってきちゃいました。人間の慣れはスゴイというか、満足を知らない生き物なんだなぁとつくづく感じるわけです。砂の一粒一粒まで解像していそうな緻密さですよね。実際に拡大してみても限りなくそんな状態にまで再現していますし。リアリティとはそういった細部の積み重ねによってもたらされるのですから、当然といえば当然なのですが。見てはいけないものを見てしまったと自分の気持ちにフタをするのか、このクオリティを目指し手に入れようと試みるのか。考える時間はまだまだたっぷりありますよ。


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カメラ好きなら一度は体験してみたい、中判デジタルの表現力

フォトヨドバシの編集部員たちも様々な機種を手にさせていただいてはおりますが、中判デジタルを使いこなす機会は少ないものです。というわけで今回のレビューに際して志願者が殺到しました(笑)。作例の仕上がりをここまでご覧になれば、大型センサーがもたらす魅惑的な撮像が彼らをかきたてたことはご推察いただけたと思います。現物を目の前にした時の圧倒的な存在感のあるボディも、いざ撮影に持ち出してみると街中でも違和感無く使えたそうで。取り回しなど、サイズ的なことも結局は慣れてしまえばいいだけのこと。細かい操作性については同社のAPS-C機とさほど変わらないため、違和感なくスムーズに使うことができました。ずば抜けた画質がメインで使い勝手は後回し、が当たり前のようになっていたフィルム時代の中判カメラのイメージからすれば、圧倒的な進化を遂げているのは確か。機動性も含め狙えるものはオールマイティとはいきませんが、フルサイズやAPS-Cと変わらぬ操作感で扱えることは大変素晴らしいことです。そういう点では、いつかはフルサイズをと考えていた人が、中判デジタルを目指すというのも現実味があるわけです。その一方、フィルム時代に中判を使っていた方や、645Dから足を踏み入れたという方は、お手持ちのレンズ資産を引き続き活かせるという利点があります。年代ものですとMFオンリーだったりするわけですが、レンズとしての役割を存分に果たしてくれます。フィルム時代にリリースされ、いまだ現行発売されているレンズのレビューも随分とさせていただきましたが、いずれも描写はしっかり。光学的に完成度が極めて高かったことが伺えます。そりゃ、メインはプロユースですから最高の技術が投入されていたわけですよね。大事に眠らせておくなんてもったいないです、645Zで是非ともご活用ください。さあ、いよいよ中判デジタルデビューを果たすぞ!という気分が盛り上がってきた方は、まず手始めに使い勝手のいいズームレンズとの組み合わせでスタートしてみてはいかがでしょうか。後は適宜、買い足せばいいだけのことです。本稿執筆時点で発売されているPENTAXブランドのレンズは15本程度。いわゆるレンズ沼という心配は無そうですからね、どうぞ安心して飛び込んでくだい。目が覚めるような世界が待っていますよ。

( 2014.07.15 )

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