PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

Nikon D4, Ai Nikkor 50mm f/1.4S, 1/1600, F4, ISO 100, Photo by Naz

Nikon Ai Nikkor 50mm f/1.4S

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ

1981年発売。当時をご存知の方も、ニコンF3が登場した直後なんて言われると目を細めてしまうのではないでしょうか。発売から30年を超えた、新品で買えるオールドレンズのような存在。ニコンのレンズラインナップがボディ内モーターを採用したAF-Sレンズに置き換わって久しいですが、そんなAF全盛の現在に於いても20mmから105mmまでのMF単焦点レンズをきちんとラインナップし続けているのはニコンの良心だと言えると思います。デジタル対応となった現代では、収差を徹底的に排除し開放からクリアな描写というのが高性能レンズの主流となっていますが、今回ご紹介する Ai Nikkor 50mm f/1.4S は現代のレンズとは異なる技術で作られたもの。球面レンズが持つ収差を感じつつ、それを作画に活かしていくような撮り方をしてみると、写真を撮る楽しみもまた広がっていくものです。メインとなるレンズとは別に2本目や3本目として買う「標準レンズ」としても、なかなかよいセレクトではないでしょうか。

( Photography & Text : Naz )

Nikon D4, Ai Nikkor 50mm f/1.4S, 1/3200, F2, ISO 100, Photo by Naz

シャッターボタンを指先で触れたと同時にピントが自動で合焦するのが当たり前の現代。MFレンズのヘリコイドを繰り出してピントを追い込んでいくという感覚は、ある意味新鮮に感じるものでした。ピント合わせは時間も手間もかかりますが、ピントをどこに置くのか、カメラを構える前に何ができるのか等々、1枚の写真をどう作り込んでいくのかをより深く考える時間が与えられたようにも感じる新鮮なものでした。

Nikon D4, Ai Nikkor 50mm f/1.4S, 1/1000, F2, ISO 100, Photo by Naz

絞り羽根は7枚。円形絞りではありませんので、開放以外では7角形のボケとなりますが、これはこれで写真らしくていいなぁと思ったりもするのです。ピントの芯はありますが、なだらかに崩れていくような甘さのある描写は、湿度を感じる上品なもの。撮影距離によりますが、ダブルガウス構成のシャープなレンズらしく、後ろボケでやや二線気味になる傾向があります。

Nikon D4, Ai Nikkor 50mm f/1.4S, 1/8000, F1.4, ISO 100, Photo by Naz

強い光源が映り込んだカット。ニッコールレンズのスタンダードとして、発売当時から高いコーティング技術が採用されたレンズだけあって、こういった意地悪な条件でも安心して使える印象です。縮小した画像ではわかりにくいですが、キラキラと反射する水面の描写はなかなかのリアリティ。注意するとすれば、真逆光よりも半逆光の条件でしょうか。言い方を変えれば、そこが本レンズを愉しむ上での「美味しいところ」のひとつとなります。

Nikon D4, Ai Nikkor 50mm f/1.4S, 1/3200, F2, ISO 100, Photo by Naz


Nikon D4, Ai Nikkor 50mm f/1.4S, 1/1000, F1.4, ISO 100, Photo by Naz

柔らかさを感じる開放の描写。ピントには芯を感じますが、儚さにも似た繊細さが同居しているような雰囲気があります。開放でのシャープさならF1.8クラスのレンズでも十分ですが、往年のF1.4クラスのレンズにしかないものがあるとすれば、それはこういった描写ではないかと思います。色乗りは現代のレンズに比べればややあっさりといったところでしょうか。派手さはありませんが、すっきりとしたものです。画面内の強い光源によりわずかながらフレアも出ていますが、それもまたひとつの味。否定してしまえばそれまででも、肯定してみることで見える世界もあるのです。

Nikon D4, Ai Nikkor 50mm f/1.4S, 1/3200, F1.4, ISO 100, Photo by Naz

中央の石段まで10mほどでしょうか。大口径の50mmレンズですから、この撮影距離でもピントの前後がしっかりと分離しています。輪郭を残す前ボケも活かすことで画に立体感を持たせやすい焦点距離ではないでしょうか。

Nikon D4, Ai Nikkor 50mm f/1.4S, 1/800, F5.6, ISO 100, Photo by Naz

オールドレンズともなると遠景の描写には期待しにくくなるものですが、こちらは今も新品でご入手いただけるレンズですから心配はご無用。F4〜5.6あたりがこのレンズの描写性能としては最高でしょうか。最新レンズともまったく遜色のないレベルで、コントラストも高く、キレのある描写が得られます…が、ちゃんと写ってしまっては面白くない、なんて言ってしまうのはいけませんよね(笑)。


Nikon D4, Ai Nikkor 50mm f/1.4S, 1/640, F2.8, ISO 400, Photo by Naz

濡れた葉の質感描写もたいへんよく、触ったときのコシの強ささえ感じ取れるようです。

Nikon D4, Ai Nikkor 50mm f/1.4S, 1/2000, F1.4, ISO 800, Photo by Naz

Nikon D4, Ai Nikkor 50mm f/1.4S, 1/640, F1.4, ISO 100, Photo by Naz

本レンズは、条件を問わず高いレベルで安定した性能を発揮する、デジタル時代の最新レンズとは違う次元の一本と言えるでしょう。現行レンズとして簡単には破綻しない粘り強さを感じさせながらも、往年のクラシックレンズのように撮影距離や絞りによる変化も楽しめます。もちろん絞って使えば現代レンズと変わらぬ高い性能を発揮しますが、開放付近の雰囲気ある描写を積極的に活用して画を作っていくと、このレンズの存在価値は思っていた以上に高いものであることに気づかされます。モーターもCPUもないコンパクトな仕上がりの本レンズ、今回はNikon D4という大きなボディにマウントしたせいか、見た目には大げさすぎる出で立ちではありましたが、ピントの山が判りやすい上質なファインダーを持ったカメラでの撮影は新鮮で楽しいものでした。ぜひMFが扱いやすいスクリーンを持ったボディでご活用いただければと思います。

往年の標準レンズですから中古市場でも見かけます。しかし、経年変化のない状態のレンズが入手できる今だからこそ、手を出してみるのも悪くないでしょう。カメラバッグに忍ばせておくと、写真の楽しさをさらに広げてくれる一本。たとえ最新の現行レンズが最良だとしても、それだけではないと感じさせてくれる存在感のある一本でもあります。

( 2015.04.27 )

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大口径レンズながらもリーズナブルなプライス。しかも手に入れて得られる楽しさはもちろんプライスレスです。

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保護フィルターもお忘れなく。

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レンズの性能をしっかりと発揮するのならば、フードは必須です。でも、外してみるのも悪くないです。

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最近はあまり見かけなくなりました。バンパーとしても頼もしいラバーフードもラインナップ。

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MFニッコールの50mmレンズは、さらなる深淵へ足を踏み込めるF1.2バージョンもご用意しております。

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