LEICA SL (Typ601), APO-SUMMICRON-SL 75mm F2 ASPH., Photo by Naz

LEICA APO-SUMMICRON-SL 75mm F2 ASPH.

ミラーレスカメラ「ライカSL」用交換レンズ「LEICA APO-SUMMICRON-SL 75mm F2 ASPH.」のレビューをお届けします。まず、本レンズを装着可能なカメラについておさらいしておきましょう。ライカSLは、ライカ初のプロ用ミラーレスカメラとして2015年に登場。高解像度のEVFは440万ドット。スポーツなどの動体捕捉シーンも想定した高速AFにも自信を見せるライカの35mmフルサイズのミラーレスカメラシステムです。

ライカ アポ・ズミクロンSL F2 75mm ASPH.は、フォトキナ2016にて発売を予告していたレンズのうちの一本です。35mmフルサイズに対応した中望遠の単焦点レンズで、マウントはライカLバヨネットとなっています。レンズ名に冠されている通り、アポクロマート補正を施すことで色収差を低減しています。レンズ構成は非球面レンズ1枚を含む9群11枚となっており、レンズの大半部分に異常部分分散ガラスが採用されています。

装着するボディがAFの速さに自信を見せる通り、本レンズのAF機構にも、DSD(デュアル・シンクロ・ドライブ)を採用したステッピングモーターを搭載しており、従来のレンズのAFよりもさらに高速化。約0.25秒での合焦を実現しています。ズミクロンの開放値はF2。近年のデジタルカメラ向けレンズの大口径化を鑑みると、すでに控えめな数字に見えてしまうのですが、絞り開放からその描写はとても優秀。コーティングを施すことで不要な光の乱反射を抑え、光学系とメカニズムの設計をあらためて最適化し、高い解像力と描写力を両立させています。この画質面では「近付くほどディテールが見える」性能を目指しているとライカ社が公言しており、性能には絶対の自信があるのだと言います。

50mmから25mm長く、85mmから10mm短い。この「75mm」という焦点距離がどんな世界を見せてくれるのか。さっそく作例をご覧になっていただきましょう。


LEICA SL (Typ601), APO-SUMMICRON-SL 75mm F2 ASPH., Photo by Naz

Focus

LEICA SL (Typ601), APO-SUMMICRON-SL 75mm F2 ASPH., Photo by Naz

LEICA SL (Typ601), APO-SUMMICRON-SL 75mm F2 ASPH., Photo by Naz

LEICA SL (Typ601), APO-SUMMICRON-SL 75mm F2 ASPH., Photo by Naz

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LEICA SL (Typ601), APO-SUMMICRON-SL 75mm F2 ASPH., Photo by Naz

LEICA SL (Typ601), APO-SUMMICRON-SL 75mm F2 ASPH., Photo by Naz

猛烈、そして強烈。

アポ・ズミクロンという名前、そしてプライスからしても、そのパフォーマンスに期待を持ちつつロケに出ましたが、撮影画像を見てもう「驚いた」としか言えませんでした。それなりに長く写真を楽しんできたつもりでいますが、ここまで写るレンズを使ったのは初めてと言ってしまってもいいのではないかという印象です。近景でも遠景でも、絞り開放から無慈悲なまでに猛烈に写ります。このレンズに組み合わせるライカSLは、ISO 50の低感度や1/16000秒までの電子シャッターにより、昼間から積極的に開放を使っていけます。もう明るい昼間だからといって絞る必要はなく、またレンズの性能を引き出すために絞る必要もまったくありません。絞りは被写界深度のコントロールのためだけに存在します。

描写については、ピントピークの鋭いキレからアウトフォーカスに向かって一気にボケる印象で、浮き上がるような強烈な立体感を演出してくれます。ボケはやや硬めの印象ではありましたが、硬いものを撮らない限りはその硬さを感じることはなく、花のような柔らかな被写体では溶けるようなボケにうっとりできることでしょう。線は緻密でどこまでもシャープ。しかも輪郭を強調したシャープさではありませんから、原寸大まで拡大してもアラらしきものは見えません。画面全域にわたり情報量が多く、精緻な描写。いやはや脱帽です。

AFも静粛かつ高速。シンプルなデザインで使い心地も上等です。強いて気になるとすれば、ボディとレンズを組み合わせた大きさ・重さ。ミラーレスらしいコンパクトさは微塵もなく、中判デジタルを使っているかのようなサイズ感ではありますが、これだけ写るレンズに見合ったボディ、ファインダー等を考えれば、むしろよいバランスなんだと思います。(Naz)


(サムネイル画像のクリックで大きな画像をご覧いただけます)


PHOTO YODOBASHI

現代のライカレンズの写りに神は宿るのか

M型ライカのレンズにはさまざまな伝説がつきまといます。それはあるときにはポジティブに、あるときにはネガティブに作用し、すでにレンズを持っている撮り手だけでなく、これからライカレンズを手にしようとする人たちを惑わせるものでもあります。

現代のライカにはM型だけでなく、本レンズを装着できるライカSL、そしてライカCLというAPS-Cセンサー搭載のモデルなど新しいモデルがラインナップされており、それぞれのマウントに向け各種レンズが用意されていることはもちろん、その各レンズがライカブランドのプライドを背負い個性を持ってリリースされているのです。今回レビューをお届けしたアポ・ズミクロンSL F2 75mm ASPH.も例外ではありません。50mmでもなく85mmでもない。50mmから25mm長く、85mmから10mm短いというその存在意義をまず問わなければならないこの焦点距離は、実のところ歴史ある数字であり、バルナックライカ時代のヘクトール73mmの後、1980年にズミルックス75mmが登場。ズミルックス75mmの25年にわたる生産が終了すると、その後入れ替わるようにアポ・ズミクロン75mmが2005年に誕生しました。これらはM型ライカ用レンズの話しですが、「75mm」という焦点距離を持つレンズはライカにとってスタンダードともいえるラインナップですから、プロフェッショナル仕様のライカSL用にも同レンズがラインナップされるのは当然のことなのでしょう。

こうして実際に撮影した画を見てみると、まず被写体の質感の描写よりも光の描き方にこそライカレンズらしさがあるのだということがよく分かります。そこにある光を暖かさや冷たさを伴って写し出してくれる。それがライカのレンズであり、過去から現在に脈々と続くライカレンズの大きな個性です。描き出した光が温度を伴って被写体の質感を描き分け、そこにあって触れられるかのように描写してくれる。そして75mmという絶妙な焦点距離はF2という開放値ながらもボケにボリューム感を与えてくれます。50mmの感覚で開放での撮影をすると、何を写そうとしているのかわからなくなるような、不思議な感覚を覚えるレンズですね。ピントを置いたすぐ先から、デフォーカスしていくのが分かるのではないでしょうか。アポクロマート設計であることが功を奏し、キレ味のあるシャープな描写、そしてそのシャープさをより際立たせる立体感のあるボケを伴ってギュっと詰まった繊細で緻密な描写をします。特にほの暗いシーンでのその情報量に本レンズの真骨頂が描き出されているのではないでしょうか。等倍の画はご覧になっていただけましたか? 等倍での画を見ると、「近付くほどディテールが見える」とライカ社が公言する通りの凄みすら感じる写りをご堪能いただけると思います。

最短撮影距離0.5mと中望遠レンズとしては短く、最大撮影倍率は1:5ですからグっと近づいてマクロ的な使い方も楽しめます。フィルター径は67mm。外形寸法102×73mm。重量は720gとライカSL用のラインナップから見ると比較的コンパクトなレンズですから、常用レンズとして75mmという味わい深い焦点距離を堪能していただくのも一興ではないでしょうか。きっと誰もが得られるわけではない、特別な体験ができるはずです。

( 2018.03.22 )




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高い性能、精緻なメカニズムをこの一本に凝縮。ライカ初のプロフェッショナル仕様ミラーレスカメラ、ライカSL用の中望遠単焦点レンズです。

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2400万画素のフルサイズCMOSセンサー、高性能な電子ビューファインダーを搭載し、ライカSL用レンズの優秀な描写との相乗効果により、他の追随を許さぬ圧倒的な描写を発揮する孤高の一台です。

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これだけの描写力を誇るレンズですから、フィルターなしでその真価を味わいたいところですが、大切な前玉はレンズの価格の面からもやはり保護しておきましょう。

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