LEICA Q-P, Photo by Serow

LEICA Q-P (19 045) / SHOOTING REPORT

フルサイズセンサーを搭載するライカのレンズ一体型コンパクトカメラ「Leica Q-P」が登場しました。ライカ好きにはお馴染み、製品名にPのつくモデルで、基本的な性能はLeica Qそのままに外装がスッキリとブラッシュアップされています。ルックスの違いが重要なモデルですから外観紹介を中心にしようと思いつつ、改めてその操作性・写りを確認するべく冬の町に連れ出してみました。はじめに言ってしまいますが、つくづく良いカメラですね。何も考えずにオートで使えて、マニュアル操作にもスムースにシフトできて、生粋のライカ使いからビギナーまで幅広く楽しめる懐の深さがある。何より驚かされたのは「特に古さを感じなかった」こと。というのもLeica Qの発売は2015年6月ですから、その中身たるや既に3年を経過しているモデルなのです。3年も経てば周囲に生まれてくる新製品の数々に比較されて、多少なりとも不足を感じさせられるものなのですが、このカメラはそんなところが一切ない。ライカのカメラは良いお値段ですが、長く使えると思えば決して高い買い物ではないのかもしれません。さて、まずは外観からご覧いただきましょう。

( Photography : Z II & Serow / Text : Serow )


PHOTO YODOBASHI

マットブラック、エンブレムなし、刻印入り。

ボディ前面の赤いライカエンブレムが取り除かれ、軍艦部にLeicaの刻印が乗りました。塗装はマットブラックとなり、艶を押さえた上品な仕上がりになっています。ペイントの違いは使い込んだときの風合いにも出てきますが、マットブラックは渋く鈍色の輝きが出てくる具合が想像されて楽しみですね。さて赤いエンブレムは、言わずと知れたライカの象徴的なデザイン。エレガントなボディにワンポイントとして利いていて「ライカを手に入れたぞ」という気分にさせてくれるものなのですが、ライカを持つことが特別でなくなってくると却って「もうちょっと控えめにしたい」と感じるから不思議なものです。思うにライカに対する憧れの時代を超えて、写真を撮る道具としての価値ゆえに選ぶようになったとき、「ライカを持っている私」という自意識から離れることができるのでしょう。遠目に見れば、ただ真っ黒なカメラ。それがいいのです。

PHOTO YODOBASHI

唯一ライカを主張するのがこの刻印。赤いエンブレムについては好みが別れても、昔ながらの刻印を嫌うライカオーナーは少ないように感じます。この刻印がアクセントとなって、シンプルな軍艦部を引き締めてくれます。

PHOTO YODOBASHI

上から見るとこんな具合。レンズの根本にあるリングをMACROに合わせると、接写モードとなって距離指標も変わります。レンズ先端に向かってヘリコイドと絞り環が続きますが、どちらもAに合わせておけばオートで使用でき、自分で選べばマニュアルです。個人的に使いやすかったのは、フォーカスをAFにしておいて、絞りはリングを回して決める、というもの。この場合親指位置にあるダイヤルは露出補正となり、右手だけで撮影操作が完了します。

PHOTO YODOBASHI

ライカのデジタルカメラは背面もスッキリ。左手、縦に並ぶボタンにだけ機能が印字され、その他のボタンやダイヤルには特別な指標はありません。これらはユーザー側で機能割当可能ということもありますし、それぞれ独立しているので「身体が覚える」ということもあるでしょう。実際、少し使っていれば悩まず操作できるようになります。


LEICA Q-P, Photo by Z II

日常に、旅に、絶妙。

描写や使い勝手についてはLeica Qのレポートを併せてご覧いただきたいと思いますが、今あらためてこのカメラを手にしてみると、フルサイズセンサー&明るいレンズという条件を満たしたカメラが未だに稀有な存在であることに気づきます。レンズ交換式であれば多々あれど、レンズ一体型カメラには数えるほどしかありません。もちろん「用途に合わせてレンズを替えてね」と言えないカメラですから、メーカーがおいそれと生み出せる製品ではないでしょう。だからこその価値があるわけで、人によってはレンズ交換式では得られないフィット感を得られるはずです。レンズ一体型にするメリットは一つにまず携帯性。レンズこそ大きく見えるかもしれませんが、一日ぶら下げていても負担にならないコンパクトさで、気軽にパチパチとシャッターを切ることができます。そしてその画たるや上質なのですから楽しくないわけがない。28mmという画角は、日常や旅のシーンにちょうど良いサイズ。デジタルクロップで35mmや50mmの感覚でも使えます。

LEICA Q-P, Photo by Z II

LEICA Q-P, Photo by Serow


LEICA Q-P, Photo by Z II

オートで楽しむ。マニュアルで究める。

操作性もまたLeica Q-Pの魅力です。そもそも「操作性」というのはライカのライカたる所以と言うべきもので、ある種M型ライカで70年前に完成してしまったものなのですが、それゆえにM型デジタルライカはマニュアルフォーカスのまま。これからカメラをはじめる人にとっては、さすがにMFのみというのは辛いでしょう。Leica Q-Pはこのあたり上手に仕上がった製品で、オートで使う分には世の中の一般的なコンパクトカメラと同じように使うことができますし、少しカメラのことがわかってきて自分なりに撮ってみたいときに、必要な部分だけマニュアルで使うことができます。絞りの違いを確かめてみるとか、シャッタースピードだけ意識するとか、マクロで寄ることを試してもいいし、連射で瞬間を狙うのもいい。いずれも現代のカメラならできることですが、ライカのインターフェイスは直感的であることと、その感触がポイントです。重要な設定はすべて「手触りのある」ダイヤルやボタンが担っています。どうしてこれが大事なのかといえば、身体が覚えてくれるからですね。ライカのカメラに慣れると身体は勝手に動き出すのです。

LEICA Q-P, Photo by Z II

LEICA Q-P, Photo by Z II


LEICA Q-P, Photo by Serow

LEICA Q-P, Photo by Serow

LEICA Q-P, Photo by Serow

普遍的だから、長く使える道具になる。

冒頭に書いた通りそもそもは3年前に発売されたカメラなのですが、装いを新たにした今これを手にしても、カメラとしての魅力が一切失われていないことに驚きを感じました。センサーもチップもソフトウェアも瞬く間に進歩していってしまうデジタルの世界で、魅力を保ち続けるというのは一体どういうことなのでしょうか。

デジタル製品が陳腐化しやすいのは、ひとえに進化が速いからと言えます。しかしカメラというプロダクトは、センサーやチップだけでできているモノではありません。シャッターがあり、ファインダーがあり、ボディがあり、メカニカルな動きがあって、操作する私たちに伝わる感触や音がある。そうしたボディの設計や製造、あるいは光を集めるレンズそのものについては、デジタルのように一朝一夕に進化できない世界があります。ここに確かな技術を持つメーカーであれば、そして一貫した哲学から生み出されたプロダクトであれば、デジタルの波のなかでも悠々と生き延びられるということでしょう。そんなメーカーのひとつがライカ。多少の月日ではまったく輝きを失わないこのカメラに触れて、改めてそう感じました。

忙しない世の中の動きに少し疲れたら、身の回りのものをひとつずつ長く使えるものに替えてみるのはどうでしょう。これでいいということが一つ見つかる度に迷いが一つ消えていきます。見栄や損得勘定ではなく自分が満足できるものがいいですね。
エンブレムのないLeica Q-P、長く楽しめると思います。

( 2018.12.14 )

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カメラを買うことでカメラへの迷いを抑えようというアンビバレント。レンズ沼からの解脱はあるのか、諸先輩方の実践報告をお待ちしております。

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Q (Typ116) も現行モデルですので、ご紹介しておきます。ルックスは好みですから、どちらが良いというものでもありません。

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限定カラーに弱いのは迷妄の為せる業か。ライカはやっぱり洒落てます。

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背面液晶を見ながらの撮影スタイルも増え、M型ライカよりバッテリーは消耗しがちです。交換用もお忘れなく。

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