LEICA Q (Typ116) ローンチイベント・レポート

2015年6月16日(火)代官山蔦屋にて、LEICA Qローンチイベントが実施されました。このイベントに、ドイツ・ライカカメラ社からCEOのオリバー・カルトナー氏、COOのマルクス・リンバーガー氏、グローバルリテールダイレクターのフランコ・オファマン氏、プロダクトマネージメントダイレクター・フォト分野のステファン・ダニエル氏の4名が来日。ライカカメラ社が日本のマーケットをいかに重視しているかをうかがい知ることのできる布陣でした。また、2015年4月に新CEOに就任したオリバー・カルトナー氏は、今回のイベントが日本における公の場に初めて登場する機会となりました。イベント・プログラムは、ライカカメラジャパン・代表取締役社長 福家一哲氏と、ドイツ・ライカカメラ社CEO オリバー・カルトナー氏からの挨拶にはじまり、ステファン・ダニエル氏によるLEICA Qのプレゼンテーション、アナウンサー・渡辺真理さんを司会進行として、ハービー山口氏のトークショー、そしてLEICA Qのタッチアンドトライといった内容でした。会場に入りきらないほどのゲストとプレス、そしてライカカメラ社の本製品に対する意気込みを感じさせるイベントでした。ざっとその模様をお伝えしたいと思います。なお、LEICA Qの実写レビューを早速ご用意。ぜひ、あわせてご覧ください。

ライカらしい "プレゼンテーション"

photokinaのようなカメラショーにおいても感じることですが、製品のみならず、そもそもなぜ世に送り出す製品が成り立っているのか、その根底となる哲学および世界観を来場者に届けようとイベントを作り込んできています。そして会場に訪れた多くのゲストの胸にはライカが。いかにライカのカメラとブランドが愛され、ライカカメラ社も何をなすべきかをよくよく理解している、そんな相思相愛の雰囲気にいつも感心させられます。

タッチアンドトライの際には、ゲストがひっきりなしにLEICA Qを手にして確かめます。ともかくみなさん嬉々として手にする姿が印象的でした。フルサイズセンサーを搭載するレンズ固定式のカメラについては、見渡せばもう1機種ありますが、LEICA Qは実にライカらしいカメラだと思います。使い勝手やその印象などについては、実写レビューにてまとめていますので、ぜひあわせてご覧ください。

 

「100年の歴史、次の100年に向けて」

ドイツ・ライカカメラ社 CEO オリバー・カルトナー氏
ライカカメラジャパン 代表取締役社長 福家一哲氏

ライカカメラジャパン 福家社長、ドイツ・ライカカメラ社 CEO オリバー・カルトナー氏のふたりは、「これまでの100年と、次の100年に向けて」その所信をプレゼンテーション。話を伺って再確認したのは、「ライカ判」の登場から今日に至るまで積み重ねた歴史とその認識、市場における自らが果たすべき役割について常に自問自答している姿でした。Made in Germanyであること、そして永続性の感じられるブランドにたいして誇りを持ち、そのことに突き動かされてきた歴史が今日のライカカメラ社を作り上げ、それを変わらず続けていくことの重要性を強調。あらゆる市場で二極化が進み、カメラの世界においてもそれは例外でなく、もともとカメラの世界にいたオリバー・カルトナー氏は、久しぶりにドイツ・ライカカメラ社のCEOとして、この世界に戻ってきて、市場の変化に大変驚いたそうです。カメラの世界が培ってきた技術・その歴史、光学機器メーカーとして培い・歩んできた歴史をそれぞれ踏まえ、すべてユーザの豊かな写真ライフを追求することを根幹として、スマートフォンをはじめとするカメラの世界に流れ込んできている潮流に柔軟に対応したいとのこと。またこれまでの100年は、製品をそもそも生み出していく、どちらかといえば製造にウエイトが置かれてきたが、これからの100年はよりマクロ的な視野と展開で時を積み重ねたいと強調。ハード面・ソフト面・サービス面とあらゆるベクトルに惜しみない力を注ぎ、その一例として、新製品の積極的な企画・開発、品質のさらなる向上、サービスの磨き込み、スタッフの質的向上、積極的な拠点・ストア展開、そして(写真)文化的視点についても今後よりフォーカスしていきたいとのこと。またデジタル化の波に押されるのではなく、積極的に先導していきたい、そんなメッセージ・プレゼンテーションでした。かつて、ライカM3があまりにも「できすぎ」で、結果として一眼レフへ他メーカーがシフトし、自社が作り上げた製品に苦しめられた感のあるライカカメラ社。自社を取り巻くあらゆるフラグメンツ(顧客、文化、技術、市場、文化など)と全方位に真摯に向き合い、鳥瞰し、進むべき道を常に見定めんとする姿勢が印象的でした。

 

お馴染み、ステファン・ダニエル氏による、LEICA Q・プレゼンテーション

新製品発表といえば、ステファン・ダニエル氏。フルサイズセンサー・28mm大口径単焦点レンズ搭載のLEICA Qについて、プレゼンテーションが行われました。既にお聞きおよびの方も多いと思いますが、プレゼンテーションで使われたスライドとともに、ざっとご紹介。実写レビューにてその模様をお伝えしていますが、M型における類似スペックの交換レンズを考えれば、実力の素晴らしさ、そして価格についても、なかなか面白いモデルだと感じます。もし、これからM型のライカを手に入れようとするのであれば、一考の価値あるモデルだと感じます。

トラディショナルでありながら、写真の本質と画質を追い求めるその姿勢、コンパクトなカメラというライカが生み出すカメラのアイデンティティ、いまこのタイミングでリリースされることによって盛り込める要素を盛り込み、M型にはない魅力を含め、全てを詰め込んだモデル、それがLEICA Qといった印象です。ダニエル氏のプレゼンテーションも、まさに同様のコメントではじまりました。

ダニエル氏のコメントをそのまま掲載しましょう。
・ライカが得意とする、コンパクトなボディに大きなセンサーを搭載している
・Summilux 28mm F1.7 ASPH.はこのクラスで最も明るいレンズである
・十分なバッテリーサイズでストリートフォト・建築・風景写真などに対応している
・光学式手ブレ補正機能を搭載している

・(ライカらしい)マニュアルセッティングに対応している
・AF/MFロックのついたフォーカスノブがついている
・最短17cmのマクロモードへ容易に切り替えられる
・かぶせ式のレンズカバーはフード装着時でも取り付けられる

・24MPのCMOSセンサーは高い画質とISO50000までの高感度撮影が可能である
・新開発のMaestroIIプロセッサー採用でこのクラス最速の処理が行える
・このエンジンによりフル解像度で10fpsの撮影が可能
・JPEG/DNG or JPEGでの撮影が加工 ・プロの使用にも耐えるフルHD動画の撮影が可能(MP4・60 or 30fps)、オーディオも拘っている

・フルサイズコンパクトデジタルカメラでは最速のAF
・タッチスクリーンで任意の場所にフォーカス可能
・MFではフォーカスピーキング、3倍・6倍の拡大表示をサポート

・368万ドットのEVFは世界最高の精細さ
・35mm・50mm相当のデジタルブライトフレームを備えている
・35mmクロップは15MP、50mmクロップで8MPとなる
・クロップ画像はJPEGのみ、DNGは28mmフルフレームで記録される
・EVFにはアイセンサーを搭載し、背面液晶と素速く自動切り替えが行える

・デザインは無駄を省いた"本質的なデザイン"
・耐久性のあるボディ(マグネシウムのフレーム、トップカバーはアルミ削り出し)、文字はレーザー彫刻に色入れを行っている
・滑りにくいダイヤモンドパターンのレザーを採用、裏面にはサムレストも用意されている
・100%のドイツデザイン、ヴェッツラーの社内でデザインを行っていることが誇りである
・Wi-Fi・NFCを内蔵し、iOS/Andorid用のスマートフォン向けアプリを用意している
・スマートフォンとのWi-Fi接続では、データ転送の他、リモート操作も可能。SNSへも容易に投稿が行える

・ホルスターやケース、デイバッグ等のアクセサリーについても無駄を省いた"本質的なもの"を用意している
・ハンドグリップ等のテクニカルなアクセサリーも用意した
・Photoshop Lightroomのライセンスが付属する

フルサイズセンサー搭載コンパクトを作っても、やはり「ライカ流」

M型ライカの哲学とエッセンスを盛り込みつつ、M型ライカとはちがう世界。いまのトレンドを持ち込みつつ、それをライカカメラ社自身が考える「写真」にのっとり、撮影者になにを提供すべきかこれまでのアプローチに沿って、なおかつ利便性も同時に追求する。ライカカメラ社を突き動かすのは、脈々と受け継がれてきた哲学であり、そして、無骨で頑固だったライカカメラ社も、よい意味で本当に器用なメーカーになったんだなあという印象でした。このあたり、LEICA Qに実装された一見ギミックのように感じるユニークな操作性で、しかしよく考え抜かれたユーザビリティを実写レビューでお伝えしています。あわせてお読みいただくと、ご理解いただけるのではないかと思います。

イベントの最後に、オリバー・カルトナー ライカカメラ社CEO(左)、福家一哲 ライカカメラジャパン社長(中央)、ステファン・ダニエル氏(右)に声をかけて、記念撮影。今後もいろいろな世界を見せてください。

( 2015.06.17 )