LEICA M Monochrom (Typ246) | SHOOTING REPORT
ライカM-P準拠の嬉しいフルモデルチェンジ
カラーフィルタを搭載せずに、1画素が1ピクセルに直結することで(しかもローパス無し)どこまで尖鋭度の高い画像が撮れるのかと、先代LEICA M Monochromの登場には胸が躍りました。今回遂にLEICA M / M-Pと同じアーキテクチャとなるフルモデルチェンジを受けました(※1)。CCDからCMOSとなることで、ライブビューとEVF使用を可能としました。筆者はどんなにAFが進化したとしても「撮影者の意志に基づいたフォーカシング」という意味で、レンジファインダーに勝るものは無いと思っています。もちろん厳密なピント精度は望めませんが、ボケを伴わずに二重像を合致させる行為は、厳密にピントを合わせる行為からある種開放されます。これが一眼レフのファインダーの様にボケが見えると、どうしても厳密にピントを送ってしまうのです。撮影者の主たるフィールドが何なのかにもよりますが、ことスナップ撮影においてはピント精度はそこそこに、フレーミングとシャッタータイミングに集中できます。またマニュアルフォーカスですから、ピントを置く場所はAFのように任せきりではなく、撮影者の意志そのものなのです。しかし時代は流れ、感材がフィルムからセンサーに置き換わり、出来ることが飛躍的に増えてきました。高精度なレンジファインダーが搭載されていますが、構造自体はいわゆる「ミラーレスカメラ」とよく似ています。ならばセンサーからのスルー画実現、EVF搭載可能となるのは必然でしょう。結果としてレンジファインダーという機構が苦手とする、ピント精度やパースペクティブの確認などを可能としたわけです。画素数の積み増し、各種の利便性の向上。撮影者に歩み寄ってきた「M型ライカ」。撮影におけるスキームやメンタリティに及ぼす影響、画の変化などを確かめつつテストしてきました。結論を先に申し上げると「モノクロームがさらに身近になった」といったところでしょうか。
※1 センサーはライカM/M-Pと同様有効2400万画素のCMOSに(先代は有効1800万画素のCCDセンサー)。2GBのバッファを搭載し、サファイアガラスを採用した液晶など、装備面ではライカM-Pに準拠しています。ムービー撮影を見越したバッテリー容量から撮影枚数の増加、高速化した画像処理エンジンなどが、新しいM Monochromの大きな特長でもあります。
さらなる凄みを積み増しした圧倒的な写真画質
先代モデルで十二分。1800万画素といえども、カラーフィルターを搭載していないのです。1画素がストレートに画に直結するわけですから、3000万画素クラス以上の解像力といって過言ではないでしょう。しかし画素が積み増されて画に違いを感じないはずはありません。解像力はもとより、階調表現力も一段上のものを感じました。ライカというカメラの性格上、手持ち撮影が大半となります。手ブレに対するシビアさは間違いなく増しました。また、このセンサーが持つポテンシャルを活かすためには、できる限り現行型のレンズを使用することが望ましいと言えます。ただし画素数が増したことが原因なのか定かではありませんが、先代モデルよりもオールドレンズとのマッチングもよくなった印象はあります。上に掲載したカットで、スーパーアンギュロンを使用したカットがあるのですが(上から3番目)、先代モデルだと甘さが誇張される感が否めませんでした。新型では「意外と悪くないなあ」と感じた次第です。少々脱線しますが、カラーのM型で後玉が飛び出たオールドレンズを使うと、周辺の色転びが甚だしく使い物になりませんが、M Monochromはモノクロームだけにそのあたりの心配は無用です。それは先代モデルでも同様ですが、周辺光量落ちも自然な雰囲気になりました。センサーの構造によるものだと推察しています。
モノクロームの可能性を切り開く一台
デジタル画像のため「モノクローム」という表現を使うことが適当なのかと考えてしまいます。日頃プライベートの撮影でモノクロフィルムを本当によく使います。しかし「こんなネガを自分が作ることができるだろうか」と、今回のテスト撮影で強く感じました。使用したレンズの中でもAPO-SUMMICRON-M 50mm F2などは、正直なところカラーのデジタルMでもその実力を存分に解き放つことはできません。フィルムならなおさらです。先代モデルを使って感じていたのは、フィルムにはフィルムのよさがあるということ。新型をテストしても同じ事は感じますが、それ以上にデジタルモノクローム機が叩き出す画に感じるものがあったのです。その尖鋭度、フィルムチェンジや現像、スキャニングから解放され、EVFを含めたライブビューによってもたらされる作画自由度の高さ。(※2)そしてモノクロームということをさておけば、フィルムカメラを含めて135ライクなカメラの中では圧倒的な高画質。モノクロームを愛する人にとって、このカメラはその可能性を大きく切り開いてくれる1台だと感じます。うんざりするほど豊富でレジェンダリな交換レンズ群の存在、M3の時代で既に到達していたスナップカメラとしての完成度そして様式美。目が飛び出る様なボディ本体価格と、現行レンズで得られる究極の画質、オールドでもたらされる味わいある画。自制心のある方に手にしていただきたいのですが、気になる方は覚悟だけはしておいたほうがよさそうです。魔力あるカメラですよね。
※ EVFを搭載した状態で撮影を進めました。ロケ中、最終的に行き着いた撮影方法は、レンジファインダーでピントを一度合わせ、明るいレンズの開放ではEVFでその具合をもう一度確認する、といった具合です。TRI-ELMAR-M 16-18-21mm F4などでは、最初からEVFでパースペクティブと写り込む範囲を確認しつつシャッターを切りました。ライカM型が、時代の流れの中で行き着いた回答だと思われます。それ以前の不便さを大きく解消してくれたと感じました。
( 写真 / 文:K )
( 2015.05.29 )