PHOTO YODOBASHI

LEICA M10-D | SHOOTING REPORT

M10-Pに巻き上げレバー状のサムレストを搭載、液晶を思いきりよく無くし、15g軽い660gとなった「LEICA M10-D」が発売されました。ユーザーに応えてカメラをカスタマイズする。デビッド・ダグラス・ダンカンの要求に応えM3からMPが生まれ、広角レンズの使用頻度が高いユーザーのためにM2でファインダー倍率を0.91から0.72に。迅速な操作の応えとして、M4はラピッドローディング、そして巻き戻しがクランクに。M6で露出計が内蔵され、そして、AEを求めてM7を電子化。時代の要求に応えカメラの機能を変化させることは当然と思います。ただ、それがボディーのフォルムを変えないでおこなわれたことが、ライカらしいのではないでしょうか。実は、ボディーのフォルムは、露出計を内蔵するため大きく変化したことがあります。M5です。ただ、直ぐに元のフォルムに露出計を内蔵させたM6が生まれ、フィルムライカのフォルムは今もそのままです。そのおかげで、ユーザーは機能が変わっても手に持った感覚が変わらないカメラを、長く使い続けることができているのです。

デジタルになってフォルムが変化しました。まあデジタルだから仕方ないところがあったのかもしれません。と思っていたのはユーザーだけだったのですね。M10でサイズを同じに、M10-Pでシャッターの感触を近づけ、M10-Dで液晶を無くし巻き上げレバー状のサムレストを搭載。Mライカが最高に使いやすいと考える、60年以上受け継がれてきたフォルムに戻ってきました。原点に近づいたM10-Dで、使い慣れた感覚を楽しんでみます。今回は使ってみたいと手を挙げた編集部員が多数のため、3人での試写になっています。

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サムレストの形状はMP(右上)に近く、M3(左)と比べると若干薄く感じられました。

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マニュアルのM3(左下)、露出計内蔵のMP(右下)、AEのM7(左上)。M10-D(右上)は背面カバーがないためすっきりし、電源のON/OFF、露出補正のダイヤルは大きくなり使いやすくなっています。ダイヤルのテンションも十分にあり、撮影中動くようなことはありませんでした。

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新しくデザインされたモバイルアプリ「Leica FOTOS」でiOS/Androidのスマートフォン・タブレットデバイスにWi-Fi接続でき、電子ビューファインダー「Visoflex」を装着していなくても、画像の確認、カメラのセッティングができます。アプリからは集合写真で便利なリモート撮影も可能です。ただ思ったよりバッテリーを消耗するので、画像を頻繁に確認したい方はバッティリーの予備を持つことをお勧めします。

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フィルムライカ(左側)の巻き上げレバーはフィルムを巻き上げた状態でこの位置に止まるため、M10-D(右側)のサムレストの止まる位置と違いがあります。ここまでフォルムが似てくると、サムレストの止まる位置まで比べてしまうものですね。


撮り手、それぞれの想い。

LEICA M10-D, APO-SUMMICRON-M 50mm F2 ASPH., Photo by Naz

LEICA M10-D, APO-SUMMICRON-M 50mm F2 ASPH., Photo by Naz

LEICA M10-D, APO-SUMMICRON-M 50mm F2 ASPH., Photo by Naz

LEICA M10-D, APO-SUMMICRON-M 50mm F2 ASPH., Photo by Naz

ライカにしかできない、引き算の美学。

様々な機能を盛り込んだM Typ240から、シンプルな方向へと舵を切り生まれてきたM10、そこからさらに撮影に必要な最低限の機能だけを残して生まれた特別なカメラが「M10-D」となります。フィルムカメラの時代からデジタルカメラの時代になり、カメラにはより多彩な機能を盛り込むようになりましたが、そんな中で「レンズを通った光を受け止める箱」というシンプルなカメラを今の時代に実現できるのも、ライカだけなのかもしれません。M10-Dは電子ビューファインダー「Visoflex」によるライブビュー撮影に加え、新しく登場したスマートフォンアプリ「Leica FOTOS」により、M10/M10-Pと同様に様々な設定も行えるようになっていますが(その点は先代のM-D Typ262に比べ扱いやすさに配慮されています)、このカメラを楽しむ醍醐味はやはりレンジファインダーと背面液晶なしのスタイルで「撮影に徹する」というもの。

ピントと露出を合わせ、フレーミングを整えてシャッターを押す。そこまでのプロセスにM10もM10-Dも違いはありません。違うのはその後の行為ですから、撮れる画にも違いは生まれないことでしょう。しかし、実際にM10-Dを手にしてみると、最初こそ無意識にカメラの背面に視線を移動してしまい苦笑いをするものですが、次第にファインダー越しに見る被写体への意識の高まりや次のショットへ繫がるリズムがいつもと違うことに気づきはじめます。結果として、撮れた写真に違いはなくとも、次の1枚を生み出すプロセスにはこのカメラがよい影響を与えてくれるのです。ただし、背面液晶を省略するというのは、かなりの不便を受け入れることへの代償でもありますから、使いこなすには少々の覚悟が必要。あなたにとってM型ライカというカメラが特別な存在であるのなら、その中でもより特別なモデルを手にしてみるというのは悪くない選択だと思います。

ライカにしかできないであろう大胆なまでの引き算から生まれてきたM10-D、その中で唯一追加されたものは、フィルム時代のM型ライカにあった巻き上げレバーを模したサムレスト。その機能はともかく、なんともチャーミングな存在だと思いませんか。(Naz)


LEICA M10-D, NOCTILUX-M 50mm F1, Photo by T.T

LEICA M10-D, Elmar 5cm F3.5, Photo by T.T

LEICA M10-D, Elmar 5cm F3.5, Photo by T.T

LEICA M10-D, NOCTILUX-M 50mm F1, Photo by T.T

開くことのない玉手箱に収める。

瞬間、瞬間をスナップして歩くレンジファインダー使いにとって、撮影ショットをその都度プレビューで確認すると言うことは、思いの外ないものです。それより次の一瞬のためにシャッターに指をかけて、備えていればいい。LEICA M10-Dはそんなスナップシューターのために生まれたカメラだと感じました。

失敗の許されない撮影においてはプレビュー画像はアシストとなりますが、純粋に写真を趣味として撮り歩くこととなれば背面液晶はさほど重要なものでもなく、それなら無い方が潔いというのがM10-Dの在り方だと思います。旅先で写真撮影を楽しむ時。その撮影ショットを旅先で確認してしまうというのは、実は大変勿体ない行為です。家に帰るまで見ずに取っておけば、その旅の想い出はより一層深いものになっているはず。特に素通しのファインダーにブライトフレームを頼りにシャッターを落とし撮影するというレンジファインダーでは、撮影の仕上がりはそれなりの経験値とイマジネーションを持ち合わせていないと撮る事は出来ません。その自分のイメージする写真が撮れているかは、帰って大きな画面で開き確認したいですね。イメージ通り撮れていた写真や、ちょっと失敗した写真も味わい深いものに感じるかも知れません。その中で、撮影したときのイメージを越える写真が納められていたときには、大きな感動を与えてくれるでしょう。

M10-Dは撮影スタイルもフィルム時代を感じさせてくれます。巻き上げレバーをオマージュしたサムレストは、驚くほど高いホールド性があり、大きめのレンズを付けてもすばらしい安定感を与えてくれます。収納式でもありM型ライカのスマートなルックスを損なうことなく非常に好感の持てるものですね。カメラをバックに納めるときにはレバーを閉じる感覚は、フィルムライカで撮影している感じを思い起こさせてくれます。レンジファインダーを使い、ワンシーンワンシーンドラマを撮るようにシャッターを落とし続けている人にとって、それは二度と訪れない貴重な一瞬です。その一瞬のドラマたちを、開くことない玉手箱「LEICA M10-D」で持ち帰りたいですね。(T.T)


LEICA M10-D, SUMMILUX-M 35mm F1.4 (2nd), Photo by A.Inden

LEICA M10-D, SUMMILUX-M 35mm F1.4 (2nd), Photo by A.Inden

LEICA M10-D, SUMMILUX-M 35mm F1.4 (2nd), Photo by A.Inden

LEICA M10-D, SUMMILUX-M 35mm F1.4 (2nd), Photo by A.Inden

無意識

短い試写を終え、巻き上げレバーのようなサムレストを壊さなくってよかったとホッとしています。それは、慣れ親しんだフォルムの感覚が、撮影に乗れば乗るほど、シャッターを切るとすぐに巻き上げるという体に染み込んだ動作を呼び起こしてしまうからです。それに加え、所有しているM3は少し巻き上げを固く調整しているので、勢いよく巻き上げる癖もあり、何度もドキッとしてしまいました(実際はビクともしないですが…)。サムレストに加え液晶がないボディーフォルムがもたらす感覚は、撮影にも影響し、まるでモノクロフィルムが入っているような気分になり、無意識にモノクロに合う被写体を探していました。カメラを持つ感覚がいかに撮ることに影響をあたえるか、なぜライカがそこを大事にしているのか、わかったような気がしました。決して、早く、モノクローム版を出して欲しいという、深い意味はありませんので。(A.Inden)


PHOTO YODOBASHI

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液晶≠楽しさ 不思議な感覚

M10-Dとは24時間ほどの付き合いでした。なのに、「レンジファインダーのファインダーって綺麗に見えるな」と、不思議な感覚にとらわれました。デジタルMライカを使う時、ファインダーでピントを合わせていたわけですから、なぜそう感じたか…ライカのウェブサイトで調べて見てもM10-Dのファインダーが格段と良くなったとは、どこにも書かれていません。なぜ。液晶がないからファインダーに集中できたと、無理やり答を出そうと思っても、そんな理屈を超えた、美しい見え方だったのです。ライカのレンジファインダーは素通しのため、被写体がそのままクリアーに見えます。レンズの焦点距離、絞り、露出が反映されることなく、撮りたいものに全くエフェクトがかからない状態で見えるのです。だから、ファインダーを覗いても上がりのかけらすら、感じることはできないのです。

写真を撮る面白さは、被写体を見て、光を読み、自分のイメージ通りに仕上げるために料理方法を考え、うまく調理する。つまり、自分の思い描いた世界をいかに定着するか、自分しか見えていなかったものを目に見えるもの、そう、写真にすることではないでしょうか。もちろんいい写真が撮れた時は嬉しいに決まっています。でも、考えて考えてその通りに上がった写真には格別な嬉しさがあります。実は、サムレストが付いたことより、液晶がなくなったことの方がよかったと思っています。撮影後直ぐに上がりが確認できないことで、イメージを定着させるためには、いつも以上に光を考え、セティングを詰めることが必要となり、撮影する感覚がだんだんと研ぎ澄まされていく感じがしました。そして、液晶がなかったときには当たり前だった、シャッターを押す瞬間の緊張感が蘇ってきたのです。

ファインダーがどうして綺麗に見えたか。なんとか言葉にしようと考えていたのですが、うまく表現できません。本当に不思議な感覚だったのです。ただ、素通しの小さなファインダーを覗くと、頭の中で考え続けていたことがスッと消え、シャッターを押すことに集中できました。そして、撮影感覚が研ぎ澄まされれば研ぎ澄まされるほどON/OFFのスイッチ=ファインダーは意味を持ってきて、大事な存在になってきたのです。

原点に戻ったフォルムは、ライカの良さであるファインダーの素晴らしさに気付かせてくれました。サムレストが付いたことも特筆すべきことだと思います。ただ、不便を承知で液晶を無くしたことは、写真を純粋に楽しむことをもう一度原点に帰って考える、素晴らしいきっかけになりました。忘れてしまっていた感覚をM10-Dが呼び起こしてくれたように思えます。このまま使い続けていけば、きっと、きっと、写真が更にうまくなっていくなと感じます。そう使い続けていけば。

( 2018.11.19 )

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あえて無くした液晶モニタ、そして収納式サムレスト。この2つにより、最もフィルムライカのスタイルに近づいたデジタルライカです。特別な1台、手にしてみませんか。

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現行ライカの実力を100%活かすには、最新のレンズが必要です。ライカ史上最高の標準レンズ。ご用意しています。

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撮影時には何も着けないのが潔く美しい姿。でも、色々チェックするときは必要ですよね。念のためポケットに忍ばせておきましょう。

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それなりにバッテリーの保ちはいいM10-Dですが、Wi-Fi連携を使いこなすにはスペアのバッテリーも用意しておいた方がいいでしょう。

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