LEICA CL | SHOOTING REPORT
ライカCL?! リリースを目にした瞬間、1970年代に発売された同名のボディを連想しましたが、どうやらもっと昔のいわゆる“バルナックライカ”が着想の起点のようです。有効画素数2,420万画素のAPS-Cサイズのセンサーを搭載し、大変見えのよいEVFを搭載しているのが特長。軍艦部に2つのダイヤルを搭載し、ボタンがそれぞれダイヤル上部に併設されています。ボタンとダイヤルを組み合わせて操作することでファインダーを覗きながら大半のコントロールを行えます。同じくAPS-Cサイズのセンサーを搭載するレンズ交換式ボディにライカTL2というモデルが存在しますが、あちらは操作系を含めてどことなく前衛的。ライカCLは撮影に必要なものは兼ね備えつつ、よりクラシカルな雰囲気のボディに仕上がってます。時を同じくして発表されたライカ エルマリートTL f2.8/18mm ASPH.を組み合わせた姿は、コンパクトで実に愛らしく日々傍らに置きたい、そんな気持ちにさせます。確かにバルナック的な雰囲気は感じさせます。ならば、いつもカバンに入れて持ち歩いてるような撮影をやってみようと晩秋の東京をてくてくと歩いてみました。目を引いたシーン、気になったシーン、肩の力を抜いて街角で写真遊びに興じる。そんな雰囲気です。
( Photography & Text : K )
1人1人が作る街
存在を忘れることができるカメラ
テストの際はカメラの基本的な枠組みのようなものしか頭に入れず、ともかく機材を握って撮影にでかけるようにしています。その枠組みとやらは、要はAPS-Cサイズで何万画素のセンサーが載っているだとか、交換レンズ群にどんなものがあり‥といったシステム的な大まかなアウトラインと、そのカメラが持つ最も大きな特長です。メーカーが現代の枠組みで、もしオスカーバルナックがカメラを作るとしたらと思いを巡らせて開発したというカメラですから、そこにフォーカスしてテストを行ってみました。ともかくよく写ることはライカTL2の撮影で、よくわかっていたということもあるのですが。
予備知識なくカメラを触っても、殆どの操作に困ることはありませんでした。ライカの他のモデルを触った経験があるというところは差し引いても、ほとんどの人は迷うことなく撮影ができるのではないかと思います。マニュアルを少し読んだ方がよさそうなのは、軍艦部に備えられた2つのダイヤルとボタン操作についてです。撮影モードの切り替えや、シャッター速度、絞り値、ISO感度などがダイヤルで変更できるのだろうとは想像がつきます。ボタンを押したり、押しながらダイヤルを回したりと、いろいろなコントロールができるようで、最初の段階で“そんなことができる”と知っておく程度にという意味でマニュアルを参照したいところですね。ちなみに一度操作してみれば、なんとなく指先が覚えてしまいます。これはライカの他のモデルに共通している特長の1つです。操作系のものに割り当てられた機能を示す印字すらないわけで、UIを練り込んでいる自信があるのでしょう。さて、その他の使い心地について。コントラスト式AFですが、キビキビと的確かつ速い動作で何の不安も感じませんでした。ライカTL2では外付けになるのですが、ライカCLはEVF内蔵。大変見えのよいもので、エレキ部分はもとより接眼レンズ等もコストがかかっている印象です。街でのスナップは像の消失時間が長かったりするとかなり困るのですが、そこに不満を感じることは一切ありませんでした。表示の緻密さ、そして滑らかさについても満足できるものでした。途中、暗がりの中での撮影で、AF補助光を消したくて液晶画面からメニューを辿りました。メニューの階層が浅く、その構成がよく練られているのも他のモデルと共通しています。変更もすぐ行えました。撮影者が何をしたがるのか、そこを第一にカメラがデザインされているのはライカの伝統であり、ライカCLもそれに倣ったものに仕上がっている印象です。テストで使ったこの新レンズもともかくよく写ります。フルサイズセンサーよりも物理的な面積が狭いAPS-C用のレンズですから、設計難易度もそれだけあがることと思われます。どのレンズもよく写るのですが、このレンズも例に漏れず、欠点らしき欠点が見当たりません。画面の均質さ、解像力と言うこと無し。焦点距離からボケ量はあまりありませんが、寄って撮ってみるとなかなかのボケ味でした。
最近寒くなってきました。光は斜めにそして影は長く、写真を撮っていて楽しい季節です。このサイトで何度も書いてきましたが28mm相当の画角は苦手で毎度気が重いのですが、別におべんちゃらでも何でもなく今回の撮影は楽しかったですね。ともかく小さなボディに小さなレンズ。それだけで気が軽くなりますし、構えることなく街を歩くことができます。そうなると不思議なもので、よい意味で頑張ろうとしない。まず景色を眺めることにウェイトを割くことができるし、取り回しが楽で操作系がシンプルならば、ファインダーの向こうにのめり込みやすくなります。ある意味カメラの存在を忘れることができました。レンズ固定式ならともかく、レンズ交換式のカメラでそんなことを味合わせてくれるカメラはあまりないかもしれません。歩き回って、陽が落ちる頃には苦手な画角についても忘れることができました。年中いろいろな機材を握って撮り歩くことが多い東京。まあ人の多さに毎度感心しますが、街の光景を見つめつつゆっくり歩いていると、月並みながら人の数だけストーリーがあり、想いというものがあるのだなとあらためて感じさせられます。それが集まって街という輪郭が描かれるわけですが、その輪郭は人々の想いのライン。そんなクッサイことを考えてしまうほど「撮り歩く」ということに浸れた撮影でした。
( 2017.12.08 )