Hasselblad X1D II 50c, XCD F4/45mm P, Photo by KIMURAX

Hasselblad XCD F4/45mm P

Hasselblad Xシステム用に設計されたHasselblad XCD F4/45mm Pは現在市販されている中判デジタル用オートフォーカスレンズとして最軽量の320g。レンズ構成は7群9枚、2枚の非球面レンズを組み込むことで高品質な光学性能とコンパクトさ(全長47mm)を両立させています。さらにはレンズシャッターが収められておりシャッタースピード1/2000〜68分に対応。進化したオートフォーカスモーターとレンズシャッターユニットによって静音性も向上しているとのことです。

本レンズの焦点距離45mmは35mmフルサイズ換算で36mmの画角に相当し、スナップで使いやすく人気のある焦点距離です。Xシステム用には同じ焦点距離で開放値が違うコンパクトなXCD F3.5/45mmが発売されていますが、そのレンズをさらに小さく軽く最短撮影距離を35cmと短くし、携帯性と使いやすさを向上させています。身近なシーンを高性能な中判デジタルで軽快にスナップする、そんな贅沢なことが本当に実現できてしまうのかを実際に撮り確かめてきました。

( Photography : KIMURAX / Text : A.Inden )

PHOTO YODOBASHI

3着とも素材は綿ですが織はそれぞれ異なります。それがしっかりと伝わってくる精細にして的確な描き込みです。高コントラストなシーンながら、開放からきっちり解像していることがわかります。中判フォーマットらしい被写界深度によりピント面は極薄ですが、情報量の多さからも質感描写にアドバンテージがありそうです。

Hasselblad X1D II 50c, XCD F4/45mm P, Photo by KIMURAX

型抜きで出た沢山の鉄屑。硬質な被写体ですからきちっと絞り込んで、カリッと仕上げるのがセオリーでしょうが、試写ですからあえて開放付近での撮影です。もちろん開放でも撮りましたが、F4ですからボケ量はさほど多くない割にピント面はやはり薄く、こういった被写体ではどこにピントが来ているのかが少々判然とせず(笑)。1/2段絞ったこちらのカットを掲載しました。鈍い光を放つ表面に付着する細かな鉄粉までつぶさに捉えており、ボディ側の情報量の多さに負うところもあるものの、それに見合うだけの解像感が得られていると思います。

Hasselblad X1D II 50c, XCD F4/45mm P, Photo by KIMURAX

控えめなボケ量とはいえ自然に馴染んでくれる前ボケはとても効果的で、仕上がりとしてはいい具合に見たままの光景をちゃんと再現してくれました。ガラス越しの撮影ながら、その場に漂う空気までをも感じさせる奥行きのある描写です。

Hasselblad X1D II 50c, XCD F4/45mm P, Photo by KIMURAX

最短撮影距離(35cm)での描写を確かめるべくMFにて撮影。ピントリングのトルク感は程よく、回転角も広すぎず狭すぎず微調整もバッチリ。最短にピントを送ってからピント拡大表示したファインダー像を確かめつつ、微妙に前後しながらパチリ。グラスの細工面を克明に捉えつつ、これといった収差も見当たりません。

Hasselblad X1D II 50c, XCD F4/45mm P, Photo by KIMURAX

雲一つない空の太陽を躊躇なく入れ込んでみましたがノープロブレムですね。単焦点レンズらしい安定感です。メーカーサイトではF8でのスッと整ったMTF曲線が掲載されていることから推察するに、データ上はF8での描写性能的にマックスなのかと。しかしこちらはF13にて撮影。光芒の長さを欲張って絞り込んだ結果ですが、回折現象の影響も肉眼では感じられませんね。しっかり整った立体感のある画だと思います。


Hasselblad X1D II 50c, XCD F4/45mm P, Photo by KIMURAX

ハイライトそしてシャドーのトーン再現もいいですね。どちらもバランスよくしっかりと粘っており、こういったところにもセンサーサイズの懐の深さを感じるわけです。

Hasselblad X1D II 50c, XCD F4/45mm P, Photo by KIMURAX

距離にして2〜3mの所から、地べたに寝そべってのフレーム。ボール前面を深度に収めることができ、これなら前後のボケの傾向もわかりやすいのではないでしょうか。

Hasselblad X1D II 50c, XCD F4/45mm P, Photo by KIMURAX

距離もあったので絞り込んで撮影すべきでしょうが、試写ですからあえて開放で。しかしそれにしても、ぜんぜん不安がありませんね。開放からここまで解像してくれれば、絞り込んだ時の画は想像がつきます。

Hasselblad X1D II 50c, XCD F4/45mm P, Photo by KIMURAX

発色もいいですね。F4ですから被写体にグッと近づいてはみるものの思ったよりも背景は溶けてはくれず、開放値なりの順当なボリュームかと。ボケ切ってしまい何が写っているのか判然としないよりは、周りの情報もそれとなくちゃんとわかる。大きなボケが添えられたらそりゃ便利に越したことはありませんが、中判で軽快なスナップ撮影を可能にしてくれるレンズですからね。必要にして十分。いい落としどころの開放値ですね。

Hasselblad X1D II 50c, XCD F4/45mm P, Photo by KIMURAX

きちんと絞った高周波な被写体での画もご覧いただきましょう。枯れ草から青々とした新緑までいろいろと混在していますが、眼前の光景を余すことなくリアルに描き切り、隅から隅までビシッと解像しています。絞り込んでもまったく平坦にならないこの奥行き感。これが中判システムの中毒性のひとつでもあると思うのです。

Hasselblad X1D II 50c, XCD F4/45mm P, Photo by KIMURAX

Hasselblad X1D II 50c, XCD F4/45mm P, Photo by KIMURAX


PHOTO YODOBASHI

中判デジタルをさらに身軽に、もっと身近にしてくれる愉快な一本。

中判でスイスイ街撮りスナップ。気合?そんなものは必要ありません(笑)。というか、変に身構えずに済むのですよね。人間不思議なもので、機材が軽くなると肩の力が抜けるのです。“中判”ですからそれなりに四隅のフレームに気を配りつつ、きちっと構えて・・・というお作法を頭のどこかでリフレインするわけですが。試写を始めてからシャッター回数が進むにつれて、フルサイズミラーレス機を操っているがごとく、ひょいっと構えてレリーズしてしまっているのです。撮り手にプレッシャーを与えずにそんな行動に駆り立ててしまう所に、本レンズの魅力が凝縮されていると言えるでしょう。丁寧にフォーカスしてくれるAFの動作のお陰もあって、軽快だからといってラフになりすぎずにしっかりとフレームするゆとりを与えてくれます。MFのリングフィーリングも適度で、シチュエーションに応じてAF/MFを使い分けるといいですね。絞り開放からしっかり整った像を結び、ボケ味的には何でも柔らかくという近ごろのトレンドとは一線を画す、柔らかさの中にもどことなく芯を感じさせてくれるもの。視線誘導するには十分でありながら、周辺の情報がかき消されてしまうわけでもない。これまたいい具合にフレームの中に存在していてくれるという印象です。ボケは背景との距離や明るさによって如何様にも表情を変えますが、誤解を恐れずに言えば本レンズのそれは洗練されすぎていないというか、どことなく素朴さみたいなものを感じさせることも。この予定調和ではないところが、かえって面白い。高画素で大きなセンサーはレンズの粗を容赦なくあぶり出してしまいますが、そういった粗相もなくしっかりと躾られたレンズのように思われます。ハッセルブラッドの現行品レンズにおいては、ウン十万円というプライスタグをぶら下げたレンズが目白押し。そんなラインナップへ、機動性に優れた軽量コンパクトな本レンズを用意してくれたことは諸手を挙げて大歓迎です。なにせプライスまでがコンパクトですから(笑)。そういったある種の制約の中で、中判の画力にふさわしいレンズに仕上げられているレンズだと感じます。ハッセルがX1Dシリーズを世に送り出したのが3年ほど前。そのボディのコンパクトさに驚き、感動したのは記憶にも新しいところ。PYのレビューにおいても手持ちで中判撮影ができてしまうと編集部員たちは嬉々として撮影に臨んできたわけです。そして遂にというか本当にというか、力むことなく中判デジタルカメラをスイスイと振り回せることに。今回の「XCD F4/45mm P」の登場で、フルサイズミラーレスカメラと何ら変わらぬ撮影スタイルを手に入れたのです。X1Dシリーズユーザにとっては、今までとは違うもっと遊べそうな存在として。そして奥行きのある中判デジタルが紡ぎ出す世界に憧れを抱いていた人にとっては、手始めの一本としても大活躍してくれることでしょう。いよいよ、中判ライフの愉しさが一気に拡がるはずです。

( 2020.05.27 )

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コンパクトで軽量な本レンズを付けて初めて、このシステムの良さが完結するような気がします。思わず安いと思ってしまった方、正常に思考回路が働いてますね。

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映画「最高の人生の見つけ方」で吉永小百合が使っているのはX1D。スタイリッシュで美しいです。もちろんカメラが。IIもデザイン、大きさは一緒。これを持つと最高の人生が見つけられるかもしれませんよ。

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