PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

FUJIFILM GFX50S, FUJINON GF110mmF2 R LM WR

FUJIFILM GF110mmF2 R LM WR

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ

わたくし、古い、埃をかぶったようなカメラを、長年愛でて参りました。その割には乏しい経験の中で言わせていただくならば、コダックやアグファ、国内ではコニカや富士フイルムといったフィルムメーカーが作ったレンズに、正直、ハズレを感じたことはありません。圧倒的に多いのは操作の簡便な、大衆向けレンズシャッター機なのですが、どれもまったく侮れないレンズたちでありました。フィルムの販促としての側面もあったでしょうから、価格のわりに贅沢な作りをしていたのかもしれません。数値的なスペック、あるいはシャープネスやボケ味といったディテールもさることながら、写真に「絵ごころ」を感じたのは、彼らがフィルムや印画紙といった、プロセスの最後を担う感材メーカーであったが故だと思います。

その中でも、こと富士フイルムに関して言えば、中判のフィルムカメラに多くの名機がありました。6x4.5、6x6、6x7あたりはもちろんのこと、6x8、6x9、6x12、6x17といった、他にはあまりないフォーマットのカメラを作っていたのが富士フイルムです。そしてなんと言っても驚きなのは、2011年に至ってもなお(ついこの間ですよ)中判フィルムカメラをリリースしていること。「中判」というものに富士フイルムがかける意気込みはもう、筋金入りであります。

今回ご紹介するFUJINON GF110mm F2は、35mm版換算でいうと87mm相当。中判カメラが、その真価をもっとも分かりやすく発揮する焦点距離だと思います。ぜひ、それを作例でお確かめください。


FUJIFILM GFX50S, FUJINON GF110mmF2 R LM WR

FUJIFILM GFX50S, FUJINON GF110mmF2 R LM WR

FUJIFILM GFX50S, FUJINON GF110mmF2 R LM WR

FUJIFILM GFX50S, FUJINON GF110mmF2 R LM WR

FUJIFILM GFX50S, FUJINON GF110mmF2 R LM WR

中判を買う意味を感じさせるレンズ

FUJIFILMがXシリーズで培った技術やノウハウを存分に注ぎ込んで、より大きなセンサーを必要とするユーザ向けにリリースしたのがGFX50S。Xシリーズと比較して画がどれだけ違うかについて皆さんも興味があると思います。違うといえば全然違います。しかしある種違わない、とも言えるかもしれませんね。Xシリーズの画は本当によく作り込まれていると感じます。大半の場合は、RAWファイルからあれこれパラメータを操作するよりも、カメラが作り出すJPGがベストのように感じます。なんというか”見切り”のよい画だと感じます。しかも本当に見栄えのする画です。GFX50Sと比べても遜色ないぐらいのデキですよね。このあたりは、長年フィルム作りを行ってきているメーカー故なのでしょうね。ただしセンサーサイズが大きく違うわけで、懐の深さといえばやはりGFX50Sに軍配が上がります。特にRAWファイルのパラメータを触ると、それを余計に感じます。いわば、エンジンで言うところの排気量の違いのようなものでしょう。業務で使うならば迷わずGFX、パーソナルユースとなると、Xシリーズで間に合うどころか満足できそう。

さて、GF110mmF2 R LM WRのようなレンズが登場すると、大枚叩いてでもGFXという中判プラットホームで自前のシステムを構築したくなりますね。大きなセンサーが作る、全てにおいて懐の深さを感じさせる画に、この焦点距離、開放F値。組み合わせると、なんとも艶っぽい画を結びます。こうなると魔力が増すわけです。困ったもんだ。開放においてのピントピークに淀みはなく、クリア。諸収差よくコントロールできています。しかしレンズの性格上、硬さを感じさせるようなものではありません。きっちり解像しつつ、曖昧さは皆無。そしてどことなく柔らかさがある。もう狙い通りなのでしょう。ボケ量はやはりセンサーサイズなりであり、F2という大口径も手伝って大きなものです。ボケ味自体はいやなクセもなく、スムースでありつつ量感も伴います。かといってさらっとしたボケ味ではなく、若干クラシカルな雰囲気も漂うあたりが、なんとも好みです。すでにボディをお持ちの方には、待ってました!というレンズでしょう。しかし中判に大口径中望遠というのは、魔力あります。(K)


FUJIFILM GFX50S, FUJINON GF110mmF2 R LM WR

トーンに浸る

FUJIFILM GFX50S, FUJINON GF110mmF2 R LM WR

FUJIFILM GFX50S, FUJINON GF110mmF2 R LM WR

FUJIFILM GFX50S, FUJINON GF110mmF2 R LM WR

FUJIFILM GFX50S, FUJINON GF110mmF2 R LM WR

立体感で見せる

画像を見た瞬間「中判デジタル用に仕上げてきたな」と。 シャープに見せるにはいくつかの方法があります。まず線を細くして精密に描写をする。分かりやすく言うと1mmの中に何本線が引けるか。次にコントラストを高くして被写体をクリアーに見せる。この2つは最近のレンズ、画像エンジンで見られる傾向ではないでしょうか。

初めて海外ブランドのレンズを使ったのはCONTAXのPlanar 50mmF1.4、正確に言うとヤシカがライセンス生産したレンズでした。ファーストショットのポジをルーペで見たとき、その色ノリの良さと立体感の描写に驚いたものです。ただ、ルーペで覗いたときのシャープさは、それほど感じませんでした。大学のサークルでの写真展のため、ダイレクトプリントで大伸ばしをした時、今までのレンズでは感じなかったことに気付きました。それは、大きく伸ばしても描写が甘くならず、ルーペで覗いた時の印象と全く変わらないことです。
GF110mmF2.0 R LM WRは中判用に新しく開発されたレンズです。その最大限の特徴は中判の豊かな階調を最大限に生かすように設計されていることでしょう。言い換えると、光をありのままに捉えるということです。確かにカリカリとしたシャープさはありません。ただ光の微妙な変化まできっちりと捉える描写は、正確な立体感の表現につながっていきます。

「立体感はシャープさにつながっていくんだよ」と大学時代に言われた言葉が懐かしくなりました。(A.Inden)


  • PHOTO YODOBASHI階調のなだらかな雰囲気や、ドアノブの描写のキレ。。実はボディを所有しておりまして、欲しい、、このレンズ。(K)
  • PHOTO YODOBASHI中判フィルムで撮ると、まさにこんな雰囲気ですね。開放で撮れば画面整理完了。ものぐさな私にピッタリ。(K)
  • PHOTO YODOBASHI最短付近。窓越しであることもわかれば、外との気温差や、中の温もりまで写り込んでます。(K)
  • PHOTO YODOBASHI猛烈に意地悪な条件で撮ってみました。フードを外し、あげくキラキラ光る落ち葉が前玉のすぐ目の前に。この程度しかフレアもでなくて、ちょっと物足りない。写り過ぎ。しかし開放にも関わらず、これだけ硬い物をきちっと緻密に写せるのです。素晴らしい。(K)
  • PHOTO YODOBASHI冬の光は固く影は長い。普段は平凡に見える景色を雰囲気のあるシーンに変えてくれます。低い段差と女性の影のバランスが美しく、完全逆光を気にせずに狙ってみました。ピント位置はAFが迷いそうなシャドーの女性ですが、スムーズに合焦。トーンも、ハイライトからシャドーまで綺麗に残っています。(A.Inden)
  • PHOTO YODOBASHI110mmで最短付近までまで寄ってF2で撮影すると、ピント面が本当に薄い紙のようになります。それを利用して、ボケ味が、ピンクの絵の具で描いたように見えるように撮影。逆光で色が濁ってしまいそうな条件ですが、薄いピンクの色がクリアーに再現されています。逆光で作られたハイライトも柔らかく好感が持てます。(A.Inden)
  • PHOTO YODOBASHI水の流れの1点にピントを送って撮影。ピントピークの描写は、水の質量まで感じさせゾクッときます。等倍まで拡大すると微妙にブレているのですが、立体感のある描写がシャープさを支えています。(A.Inden)

(サムネイル画像のクリックで大きな画像をご覧いただけます)


PHOTO YODOBASHI

写真表現に真面目に取り組む人へ

私ごときにそんなことを言われるまでもなく、このレンズに興味を持つぐらいの人なら、すでに極めて真面目に写真に取り組んでおられることでしょう。

もしあなたが、すでにボディを持っているなら。悪いことは言いません。今すぐにこのレンズを買いましょう。「え?持ってないの?」と周りに怪訝な顔をされる前に買っておくべきです。その理由は、たった今ご覧いただいた通り。

もしあなたが、まだボディを持っていないなら。ボディと合わせて大台を軽く超えるお値段になります。よく考えましょう。しかし、これだけは言えると思います。「写真表現に真面目に取り組む」という崇高な姿勢を貫き通すなら、このぐらいの機材が当然のように必要になるのです!値段なんて関係ないのです!…すいません。言い過ぎました。関係あります。大いにあります。いったんマウスからその手を離しましょう。

しかし真面目な話、かつてフィルム時代がそうだったように、「中判デジタル=35mm判デジタルの行き着く先」ではないのだと思います。そもそも棲み分けがされているんじゃないかと。中判デジタルというカテゴリーが次第にラインナップを拡充していく中で、自然とそちらに触手を伸ばす人が、写真に対する経験値や技量に関わらず、これからどんどん出てくるはず。その魅力は何なのか。「写り」という答えは、正解ですがつまらない。かつて、あの「ブローニー」という大きなフィルムに訳もなく憧れたように、最後にぺろっと舐めてフィルムを留めるのをやってみたいだけだったように、「でっかいセンサーかっこええ!」という、無邪気な理由で中判を選んだって一向に構わないんですよ。入り口がどこであろうと、その価値や威力をいずれ思い知ることになるんですから。で、その時の1本目としてこのレンズを選ぶのは、かなり理に適った話のように思うわけです。

( 2017.12.08 )

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この写りを見たら、もう欲しくて欲しくてたまらないでしょう?はい、どうぞ。

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レンズだけ持ってても写真は撮れないですよねえ。はい、どうぞ。

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ついでにこれも買っておきましょうね。

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