PHOTO YODOBASHI
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KIPON ELEGANT 90mm F2.4
[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ
EOS RFマウントのレンズラインナップも少しずつ拡張しています。もちろん純正レンズという選択も、EFレンズを使うという選択もアリですし、ミラーレス機ですからオールドレンズをマウントするのも趣味の世界では大いに楽しめる選択肢のひとつです。そんななか、今回ご紹介するのは「KIPON ELEGANT 90mm/f2.4」。中望遠のマニュアルフォーカス単焦点レンズです。KIPONが「IBERIT」から光学系を継承し、EOS RFマウント化したレンズです。90mmという中望遠域では、F2.4という開放値でも十分なボリュームのボケが得られますから、ポートレート撮影にも最適です。また、全長77mm、重量350gと小型軽量で携行しやすく、いつでもカメラバッグに入れておくことができるうえ、クラシカルかつモダンな佇まいは、最新のEOS Rシステムとも好相性。手に取るとひんやりと心地よい総金属製の鏡胴が所有欲も満たしてくれます。本レンズがどんな世界を見せてくれるのか、さっそく作例にてご確認ください。
( Photography : Z II / Text : Z II & Rica )
お祭りのシーンで揃いの半纏を着て記念撮影をしました。背景はぼかしつつ被写界深度も少し欲しいシーンでしたので、絞りはF4に。撮った画を見ると、もう少しピント位置を奥に置くべきだったのか、もっと絞るべきだったのか、いやこれでよかったのか……と悩むところですが、その悩みがMF単焦点レンズの醍醐味というものでしょう。
御輿を担ぐ前のピシッと整った鉢巻を狙いました。ピント位置は前側のエッジ。最短距離に近くなると絞り開放でのピント面はかなり薄くなりますが、EOS Rとの組み合わせではピントの山もつかみやすく、思い描いたところにピントを置くことができました。
最短撮影距離（70cm）での描写を見ようと、風に揺れる旗を狙いました。布地の細部を柔らかな線でしっかりと描写しています。ボケも癖がなく、落ち着いた発色と相まってとても優しい描写です。
浅草はお祭りがなくても毎日賑わっており、街撮りスナップには最適です。EOS Rのピントピーク表示機能を使うことで、ゆっくりと歩く人なら動く被写体にもピントを合わせることができます。行き交う観光客とスカイツリーが柔らかくボケて都会の観光地の喧騒が聞こえてくるようです。
絞り開放でデジタルでは難しいといわれる赤の発色はどうかと試してみたカットです。EOS Rのセンサーや映像エンジンによるところもありますが、赤がトーンジャンプすることもなく立体感があり、よい雰囲気に仕上がっています。若干見下ろすアングルで撮影したため背景の上部のあたりの質感が出てくれ、さらに中央部は大きくボケて、より花が引き立ちました。ほかにも花を撮りましたが、最短撮影距離での撮影よりも2～２.5mあたりの撮影距離がもっともピントにキレが見られました。
落ち着いた発色に加えて最短付近と遠景の描写がとても柔らかで、オールドレンズのような味わいを見せてくれるのが、このレンズの特長です。90mmという散歩用には狭いかな？という焦点距離ですが、とてもコンパクトでEOS Rのサイズにもマッチ。肩の力を抜いたお散歩用にもよいですし、この優しい雰囲気を生かしたいという方にもおすすめのレンズです。
柔らかな落ち着いた発色と書きましたが、鮮烈な赤はどうだろう？と試してみると、やはり実際より少し落ち着いた色味に仕上がりました。好みにもよりますが、このレンズの特長を生かし、それにあった被写体を選ぶという楽しみ方もあると思います。また、背景との分離も申し分ありません。
F8まで絞ると柔らかな描写が一変して細部までカチッと写ります。枝が雲にかかったあたりは若干の色収差が見られますが、気にならない程度ではないでしょうか。
西陽を真正面から受け止めているベンチにはさすがに誰も座ろうとはしませんでしたが、被写体としては面白く、何枚もシャッターを切りました。柔らかな描写のおかげか座面が光り輝いているようで、神々しいベンチに見えます。前ボケも透けるような独特なボケで、やっぱり単焦点って面白い！と思わせてくれます。
どこか懐かしい描写が写欲をかき立てる
「KIPON ELEGANT90mm/f2.4」は、ドイツのIB/Eオプティクスによって設計された「IBERIT」シリーズから光学系を継承していることは前述の通り。その名の通りエレガントな佇まいに、心地よいトルク感のフォーカスリングで、自身の撮影リズムを崩すことなく撮ることができます。このフォーカスリングには精密なベアリングが採用されており、その動きはとてもスムースです。90mmという中望遠域ゆえ開放値がF2.4とやや控えめでも十分なボケが得られ、前後ともにさほどクセも感じられない素直なボケ味となっています。被写体との距離が2m程度での撮影がいちばんキレのある描写をする印象です。そこから被写体に近づいても、離れても優しい描写に変化します。オールドレンズのように、このあたりの性格の違いを画作りに生かしていくと面白いかもしれません。現代レンズの高い解像感、キレのあるピントピークに慣れた撮り手にとって、この柔らかで優しい描写は新鮮に映るのではないでしょうか。逆光耐性も高く、収差もよく抑えられていますから、普段通りに被写体を狙えばそれだけでこの温かみのある個性的な写りを楽しむことができます。人物から風景まで、90mmの画角でさまざまなシーンを切り取ってみてください。
( 2019.06.27 )
EOS RFマウント用のマニュアルフォーカスレンズ「KIPON ELEGANT 90mm/f2.4」は、クラシカルかつモダンなデザインとそのスタイリングにマッチする味わい深い色味で、写真の新たな楽しみを発見できる一本です。
フローティングフレームシステムを採用し、特殊弾性緩衝材によって、フィルターガラスへの負担を限りなくゼロに近づけたレンズ本来の力を引き出す保護フィルターです。